文楽平成30年5月公演 第二部/彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)~須磨浦の段~瓢簞棚の段~杉坂墓所の段~毛谷村六助住家の段@国立劇場小劇場 2018/05/28

プログラムに<豊臣秀吉の九州平定を描く実録(実録体小説)『豊臣鎮西軍記』に収録されている吉岡一味斎の妻娘三人による敵討、助太刀の毛谷村六助の出世物語>とある。その通し狂言の六段目から九段目。歌舞伎にも移植されて「毛谷村」として知られる九段目と、その導入部にして伏線の張られた八段目は観たことがあるが、六段目、七段目は初めて。

六段目「須磨浦の段」は、六助が師と仰ぐ吉岡一味斎の次女・お菊が、一味斎を逆恨みして殺した敵(かたき)=京極内匠の首をとろうとして無残に返り討ちに遭う場面。
横恋慕しているお菊にいやらしく迫ったあげく、なぶり殺しにする内匠の残忍なこと。内匠、お菊、お菊の供をする友平、お菊の子を、4人の太夫が別々に務める。

七段目「瓢簞棚の段」が面白かった。
いろいろあって、京極内匠とお菊の姉・お園が出会うのだが、その「いろいろ」の中に名剣にまつわるオカルティックな話がある。明智光秀の亡魂が実は自分の子である内匠を呼び寄せ、実子であることを告げた上で池に沈めた小田(織田)家の名剣蛙丸を授ける。すると、お園が持っている千鳥の香炉が反応する。この香炉が真柴久吉(豊臣秀吉)ゆかりのもので、実はお園の出自も……という暗示らしい。実は実は、という展開は文楽、歌舞伎の得意技で、これが出てくると楽しい。
この後、内匠とお園は刀をめぐって瓢簞棚の上で対決することになる。つまり人形遣いたちも棚の上に上がる。でもって、内匠の人形遣い(吉田玉志)が人形もろとも飛び降りる、という見せ場が用意されている。これには驚いた。
後半の盛り上がり部分は、太夫が竹本津駒太夫、三味線が鶴澤藤蔵(一部、鶴澤清公がツレ弾き)。知り合いの文楽好きが“文楽のジミヘン”と呼ぶ藤蔵が、津駒太夫の熱演を煽って弾き倒す。

八段目、九段目は、歌舞伎がまんま受け継いでいることがわかる。九段目「毛谷村六助住家の段」の後半は竹本千歳太夫+豊澤富助。六助、お園、お園の母、お菊の子、コメディリリーフ斧右衛門他を演じ分けるのが聴きどころ。

時代物のお主大事の価値観には一生馴染めないと思うが、その背景には、武士の価値観を肚で哀れむ庶民感情がある気がする。てか、そう解釈して文楽や歌舞伎を観ている。悪人の有り様は、それに対するバランス感覚から生まれているような気もする。いずれにしても、その辺りが、伝統芸能と呼ばれる演劇に触れる際の好悪の境界線かも。

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