The Beast In The Jungle@Vineyard Theatre(108 E. 15th St.) 2018/06/02 20:00

IMG_0649ジョン・カンダー作曲、デイヴィッド・トンプソン脚本、スーザン・ストロマン演出・振付。作詞のフレッド・エブを欠いてしまったが、『The Scottsboro Boys』のスタッフ再集結。このクレジットだけで個人的には必見。

プログラムに「A Dance Play」と書かれたこの作品、スタイルとしては、やはりスーザン・ストロマンが演出と振付で関わった『Contact』(2000年)に近い。出演者が歌わない、ダンス主体のミュージカル。休憩なしの1時間45分。お腹いっぱいとはいかないが、それでも充足感の残るパフォーマンスだった。

1903年発表のヘンリー・ジェイムズの同名小説を、時代を現代に移し替えて脚色。トラウマを抱えているらしい老年の男が悲嘆に暮れて葬儀から帰ってくるところから物語は始まる。
マンハッタンのアパートメントに暮らす彼は、訪ねてきた甥に問われて、悲しみの理由である過去の出来事を語る。老年の男を演じるのがピーター・フリードマン。甥がトニー・ヤズベク。過去の話に出てくる老年の男の若き日を演じるのもトニー・ヤズベク。
まずは50年前、1968年のナポリ。そこで出会った魅力的な女性。演じるのはアメリカン・バレエ・シアターのプリンシパルだったイリーナ・ドゥヴォロヴェンコ。2人は恋に落ちるが、男は突然パニック(自分の中に潜む密林の野獣)に襲われて逃げ去る。
その20年後、今度は1988年のイングランド、コッツウォルズ。男は20年前の女性と偶然再会する。彼女は既婚だったが、再び激しい恋心を燃やす2人。駆け落ちを決意するが、男はまたもパニックに陥って、その場を去る。
男を襲う密林の野獣の背景には、彼の家族の悲劇が横たわっているらしいことがわかる。そのせいで彼は、誰かを深く愛することや誰かから深く愛されることを恐れているという。話を聞いた甥は男に、あなたは自分の人生を無駄にしたんだ、と言い放って、別れの危機を迎えていた恋人のもとへと走り去る。

原作の密林の野獣については、同性愛者の異性に対する拒否反応を描いているのではないかという解釈をはじめ、いろいろな説があるらしいが、この舞台は幼い頃のトラウマ説を採っていることからしても、ミュージカル作品としてのポイントはそこではない、ということかと思う。
実際、観ていて、主人公がパニックに襲われるところはどうでもいい、というか、その時に人の顔の形をした恐ろし気な幻影が出てくるのだが、繰り返されるとちょっと笑いそうになる。もしかしたら、そこに皮肉が込められているのかもしれないが。
見どころは、やはり、運命の女性との愛を表現する濃密なダンスにある。ヤズベクとドゥヴォロヴェンコによる情熱的なデュオももちろんだが、Woman 1~6として出てくる6人の女性ダンサーも、2人を翻弄する運命のように彼らに絡んで舞台に広がりと奥行きをもたらす。主役の2人をつなぐ要素として、話の中にマティスの「ダンス」の絵が出てくるのだが、これが女性ダンサーたちのダンスのモチーフとしても使われて、強い印象を残す。
そして、ジョン・カンダーの音楽。表情豊かで美しく、不思議な物語を見事に運ぶ。思えば、カンダー&エブとして頭角を現してきた頃から柔軟で挑戦的だったが、ここに来て、題材も含め、さらなる冒険に挑んでいるのが素晴らしい。

観劇後、劇場から作品の評価を5段階で問うメールが来た。少し考えて、段階4で返信した。

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