The Chronicle of Broadway and me #013

★1990年5月(その2)

『Grand Hotel:The Musical』(@Martin Beck Theatre 1990年5月21日 20:00)を観て、ようやく本格的なブロードウェイ・ミュージカルの新作に出会った気がした。と言うのも、それまで観た舞台が、ロンドンものだったり(『Starlight Express』『Les Miserables』『Me And My Girl』)、アフリカものだったり(『Sarafina!』)、リヴァイヴァルだったり(『Anything Goes』)、リヴァイヴァル的な集大成だったり(『Jerome Robbins’ Broadway』)、新曲のないノスタルジックなショウだったり(『Black And Blue』)したからで、新作の『Into The Woods』にしても開幕から1年以上経って、オリジナル・キャストの大半が去っていた。その点、『Grand Hotel』はまっさらの新作……とはいえ、小説を元にした同名映画(1932年)の舞台ミュージカル化ではあるのだが、それでも何かが起こる現場に立ち会ってる感が強かった。
演出はトミー・テューン。この頃が演出家としての名声のピークかも。周囲の期待感が高かったのを覚えている。

当時書いた感想は次の通り。

<舞台は1928年、第一次大戦前夜のベルリン、グランドホテル。ある者は訪れ、ある者は去り、そして、ある者は留まる。そんな人間たちの人生が、このホテルで一瞬交錯する。絡まり合ったオムニバス・ストーリー。これ即ち“グランドホテル形式”。
ザ・バンドの「The Last Waltz」のテーマを思わせる「The Grand Waltz」に乗って悲喜劇の合間を踊り抜ける1組の男女。その女性は盲目で……。と、厭世的な雰囲気の中で展開されていくドラマは、なかなか見応えがあった。
『The Phantom Of The Opera』と違ってセットはほとんど動かない。その代わり、椅子や真鍮のバーを使った巧妙な場面転換が行なわれる。
印象に残ったのは、大金を持って (おそらくは亡命しようとしているユダヤ人の)会計士が、酔っぱらいながらも真鍮のバーに絡まってアクロバット的に踊るシーン。まるで酔拳のようだった。>

群像劇をこの映画にちなんで“グランドホテル形式”(または“グランドホテル方式”)と呼ぶのは、どうやら日本独自のやり方のようで。
……てなことはともかく、何をおいても会計士オットー役。亡命しようとしているんじゃんくて、ホテルで死のうとしているのだが(苦笑)。宝塚歌劇ファンには、1993年の涼風真世、2017年の美弥るりかでおなじみの“あの役”。
演じたのはマイケル・ジーター。彼が男爵と酒を酌み交わしながら文字通りのバーを前にして歌い踊る「We’ll Take A Glass Together」がなければ、この作品が当たったかどうか怪しいとさえ思う。今もネット上でトニー賞授賞式でのパフォーマンス映像を観ることができるが、素晴らしいのひと言だ。ジーターは、翌年公開された映画『The Fisher King』での怪演も忘れがたい。
ところで、その授賞式に男爵役で出ているのは、その後『Chicago』で何度もビリー・フリンを演じることになるブレント・バレット。が、実はオリジナルの男爵役はデイヴィッド・キャロルだった。当時のプレイビルがすぐに出てこないので確認できないのだが、観た回はキャロルだった気がする。で、なぜキャロルはトニー賞に出ていないのか。これは推測だが、すでに容態が芳しくなかったのではないだろうか。彼、2年後の3月にエイズが元で発症した肺塞栓症のために亡くなっている。それも、権利問題で録音が遅れていた『Grand Hotel』オリジナル・キャスト盤のレコーディング・スタジオで。結局、男爵の歌声はバレット版で残ることになったが、アルバムには、キャロルがこの作品のナンバーをクラブで歌った時の音源がボーナス・トラックとして収められた。

役者としてもう一人書いておきたいのは、ジェイン・クラコウスキー。
彼女のブロードウェイ・デビューは『Starlight Express』。なので観てはいるのだが覚えていない。まあ扮装のせいもあると思うが。でも、この作品での彼女はよく覚えている。ハリウッドでの成功を夢見るタイピスト役。かわいいが少し軽薄で幸薄い感じ。すでにキャラクターが確立していた。
その後、今日に到るまで、出演したブロードウェイ・ミュージカルは全て観てきた、後半生の伴侶と言ってもいい女優さんです(笑)。

ちなみに、涼風真世版『Grand Hotel』@宝塚大劇場が私の宝塚歌劇初観劇。

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