The Chronicle of Broadway and me #014

★1990年5月(その3)

『Gypsy』(@St.James Theatre 1990年5月22日 20:00)。ジューリー・スタイン作曲、スティーヴン・ソンドハイム作詞、アーサー・ローレンツ脚本。
初演は、ジェローム・ロビンズ演出・振付、エセル・マーマン主演で、1959年5月にブロードウェイ劇場で開幕。その後、劇場をインペリアルに移して1961年3月まで上演。スタンリー・グリーン著「ブロードウェイ・ミュージカルfrom 1866 to 1985」(青井陽治訳)には、「ジプシー・ローズ・リーの冷酷な母親を演じたエセル・マーマンの生涯の当たり芸、そして傑出した出来栄えとなった音楽と脚本によって、『ジプシー』はミュージカル史上に残る傑作の一つとされる。」とある。
ジプシー・ローズ・リーは実在のバーレスクのスターで、この作品は彼女の自伝を元にしているが、その“冷酷な母親”を主人公にしたところがミソ。主人公ローズは、ヴォードヴィルのスターになれなかった自身の夢を娘たちに押しつける、今なら完全に児童虐待で訴えられるだろう、ひどい母親。それを愛すべき人物として描ききっているところが作者たちの功績。

観たのはブロードウェイでは2度目のリヴァイヴァルで、前年(1989年)10月にプレヴューを開始している。演出は脚本を書いたアーサー・ローレンツ。主演のタイン・デイリーは1976年の映画『ダーティハリー3』(原題:The Enforcer)で注目された人だが、その時には気づかない。10年以上の時を経て、すっかり貫禄がついていたからだ。
デイリーのブロードウェイ出演は、これ以前には60年代後半に短命に終わったストレート・プレイの記録があるだけだが、この、いきなりのミュージカルの大役、見事にこなしていた。トニー賞主演女優賞受賞。
彼女の姿は、翌年、劇場を変えて再度観るが、その後、2015年の『It Should Been You』までご無沙汰することになる。

観劇当時の感想に、演出についての驚きが三つ書いてある。
<一つは、子供たちの成長をステージ上で一気に見せたシーン。小さい子供たちが舞台の幕前に横いっぱいに広がり、軽快な曲をバックに、実際には同じ位置で、上手から下手に向かって走っていくかのように手足を前後に大きく動かす。ライティングがストロボに変わる。気がつくと、子供たちがみんな、成長した役者と入れ替わっている!!
二つ目は、ジプシー・ローズ・リーがステージに立つシーン。初めは奥を向いて立っている。舞台はバーレスクのステージという設定で、彼女の向こうには閉じた幕、その向こうに劇中の想像上の観客がいる。劇中の幕が上がる。と同時にジプシー・ローズ・リーが振り返って実際の観客に向き直る。その瞬間、劇中の観客と実際の観客とがシンクロする。
三つ目も、観客をうまく使った演出。母親ローズが、自分の幻想の中でステージに立ち、歌う。その歌に対して実際の観客が拍手をする。その拍手を、ローズは幻想の中の拍手として聞き、お辞儀をする。>
その後、こうした手法は舞台演出のルーティンであるとわかってくるのだが、初めて観た時には実に新鮮だった。そして未だに、わかっていても興奮するのが、こうしたノウハウの積み重ね。舞台ならではのマジックだ。

『Gypsy』は、2000年代になってからバーナデット・ピータース版とパティ・ルポン版を観ることになるが、演出によって感触が変わっても、いずれも面白い。ミュージカル十八番というものがあるなら、ぜひとも加えたい一作だ。

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