ナイツ・テイル~騎士物語~@帝国劇場 2018/08/09 13:00

IMG_0795国産(と呼んでいいなら)ミュージカルとしては出色の出来。

まず誉められるべきはジョン・ケアードの脚本。
ボッカッチョ→チョーサー→フレッチャー/シェイクスピアと流れて来た中世の“二人の騎士”の物語『二人の貴公子』(The Two Noble Kinsmen)を、『夏の夜の夢』(A Midsummer Night’s Dream)と混ぜ合わせて原作とは異なるハッピーエンドに落とし込むにあたり、そこに“戦争と平和”と“ジェンダー”についての今日的議論/解釈を投げ込んでかき回すという荒技を仕掛け、見事に決めてみせている。ことに“ジェンダー”問題は、アマゾネス(女性社会)の長が戦いに敗れて捕虜になり、彼女が物語を観察し続けるという設定にすることで男性中心社会に対するカウンター的視点を導入、作品の裏テーマとして鮮やかに筋を通した。そのため、単に恋が実ってメデタシメデタシな空気で終わらないのが素晴らしい。
加えて、役者たちが“二人の騎士”の物語を演じますよ、という構成も効果的。劇中劇という構成は、よくあるスタイルではあるが、今回に関しては大成功。と言うのも、今井麻緒子の手がけた日本語のセリフが旧来のシェイクスピア劇の翻訳調にのっとったものになっているのだが、劇中劇なら当然そうなるよね、とハナから納得して観ていられるから。ともすればセリフが不自然になりがちな“赤毛物”であることを逆手にとったケアードの作戦と見るが、どうだろう。おかげで役者たちは、日常的には口にしない言葉遣いで躊躇なくいきいきと語り、舞台が活気に満ちたものになった。

ケアードと長く一緒に仕事をしているポール・ゴードン(『Jane Eyre』『Daddy Long Legs』)の楽曲(作曲・作詞)は、ツボを心得た緩急自在の派手すぎない作風が快い。訳詞(今井麻緒子)も翻訳物にありがちな違和感が少ない。前述の“シェイクスピア劇の翻訳調”OKな設定がプラスに働いているということもあるだろう。「牢屋で」と歌われる曲などは、かなり快調な仕上がり。
通常のオーケストラとは別に、4人の邦楽奏者(和太鼓×2、篠笛・能管、津軽三味線)が加わっているが、和の色合いを出すというよりは中世の空気感を生むのに貢献していて効果的。色物感はゼロだ。

堂本光一×井上芳雄という組み合わせを想定して脚本を書いた、とケアードが言うだけあって、2人のキャラクター設定、コンビネーションが見事にハマっていて楽しいのが、役者に関しての最大の成功要因。
物語の要になっているのが、前述したように裏テーマを支えるアマゾネスの長の役。ここに島田歌穂を据えたのも大きい。ケアードの信頼の厚さがうかがえる。
大澄賢也は活きのいい若手ダンサー陣と共に熱演。ダンサーの中では西岡憲吾のスッとした姿が印象的。王役の岸祐二は安定の演技。
娘役2人の歌が若干弱いが、国産ミュージカルのレヴェルで言えば上出来の部類だろう。
個人的には、藤咲みどりのダンスが超久しぶりに観られてうれしかった。

おそらく国内ミュージカルとしては今年一番の収穫だろう。

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