The Chronicle of Broadway and me #025

★1991年6月~7月(その8)

And The World Goes ‘Round(@Westside Theatre 1991年7月23日20:00)観劇当時の感想。

<「Dancer!」……感嘆と呆れとの入り交じった表情でこうつぶやくボブ・クチオリの足下には、アステア&ロジャーズが乗り移ったかのごとき爆発的エネルギーで踊りまくった男女のペア、ジョエル・ブラム&カレン・ジエンバが、疲れ果てて仰向けにぶっ倒れている。その2人をクチオリ同様の驚き呆れた表情で見下ろしている女性2人、テリー・バレル、カレン・メイソン。
まったくダンサーってやつは! 同じ役者仲間にあっても、ダンサーという人種は特別な存在だ。なぜそこまで、どうすればそんなに、踊れるのか。体力的にも技術的にも人間の常識を超えている。ダンス好きの観客がいつも感じているそんな思いを、見事に凝縮して見せてくれた瞬間だった。そして、そんな瞬間が見たいが故に、ミュージカルを見ようと思うのだ。
『And The World Goes ‘Round』は男性2人女性3人の計5人によって演じられる、オフ・ブロードウェイならではの小規模なミュージカル。サブ・タイトルに“The Songs Of Kander & Ebb”とあるように、ジョン・カンダー(作曲)とフレッド・エブ(作詞)のコンビの作品を歌と踊りで見せるスケッチ集で、一貫したストーリーはない。だから、ダイナミックさには欠けるが、オーソドックスなミュージカルの見せ場だけを取り出して並べたような楽しさがある。カンダー&エブの作品はコミカルなものからドラマティックなものまで多彩で、佳曲が揃っている。この舞台で歌われる中で有名なのは、ミュージカル『Chicago』からのナンバー「All That Jazz」と、最後に5人のア・カペラで印象的に歌われる『Cabaret』のテーマだろう。
出演している5人はいずれも充分な経験と実績を持っていて、それぞれに好感が持てるが、どうしても、目は、ぶっ倒れるまで踊る2人に行ってしまう。特にカレン・ジエンバは、この作品で1991年のドラマ・デスク賞を受賞しただけあって、大活躍。ローラースケートを履いて楽しそうに踊る姿が忘れられない。一方のジョエル・ブラムも飄々としたキャラクターと揺るぎないステップ(特にタップ!)が印象的。2人とも、タップ復活の推進力になったミュージカル『42nd Street』に出演していたというのも頷ける。>

And The World Goes ‘Round』の上演は、この年の3月から翌1992年の3月までの1年間。劇場はオフ・ブロードウェイのウェストサイド劇場。オフ初体験。9番街より西に初めて行った。なぜ選んだのかは覚えていないが、おそらく評判を耳にしていたのだろう。しかし、この舞台に出会えたのはラッキーだった。
『Chicago』も舞台版『Cabaret』も観たことのないミュージカル初心者が、上質な形でカンダー&エブ世界のエッセンスに触れることができたわけで、そこには『Kiss Of The Spider Woman』の予告編まで付いていた。当時のプレイビルでは「ボブ」名義だったロバート・クチオリが、2年後にブロードウェイに登場することになる『Kiss Of The Spider Woman』のテーマを、この中で歌っていたのだ。
1996年5月のシティ・センター版『Chicago』を観に飛んだのは、間違いなく、この舞台を観たからで、とにかくカンダー&エブ世界に魅了された。
加えて、スーザン・ストロマン(振付)及びカレン・ジエンバとの出会い。ストロマンは、ご承知の通り、この後すぐに『Crazy For You』で大ブレイクする。ジエンバは、その『Crazy For You』への途中参加を含め、その後、できる限りの出演舞台を観てきたが、いつも独特の存在感を示す。トニー賞を獲っている人に対して失礼な言い方かもしれないが、名女優然としない名女優だと思う。
楽曲/カンダー&エブ、脚本/デイヴィッド・トンプソン、演出/スコット・エリス、振付/スーザン・ストロマンという今作のチームは、1997年に再び集結し、カレン・ジエンバ主演、ジョエル・ブラム共演の『Steel Pier』でブロードウェイに挑むことになる。

『Cats』(The Chronicle of Broadway and me #20のところで少し触れたが、7月の旅行は当時8歳の息子との二人旅だった。
それを前提の『Cats』であり『Once On This Island』だったわけだが、『Cats』は楽しんでくれたものの、『Once On This Island』ですでに居眠り。まあ当然と言えば当然。話がわからなくても観ていられる『Cats』と違い、たとえ寓話風の話であっても言葉がわからなくては付いていくのはつらいだろう。
で、この『And The World Goes ‘Round』。ショウ場面の連続なので、どうかな? と思ったが、それ以前に、滞在最終日の夜公演だったこともあり、疲れもピークだったようで、最初からぐっすりと寝ていた。それが終盤、突然ガバッと起きた。前述の『Kiss Of The Spider Woman』のところ。クチオリが見事に歌い上げてフッと静寂が訪れた瞬間、アアッと叫んで目を覚ましたのだ。おそらく蜘蛛女の悪夢を見たのだと思う。後に『Jekyll & Hyde』でスターになるクチオリ。彼の苦笑いが忘れられない。ご容赦ください。

なお、上記出演者の内、ジョエル・ブラムとテリー・バレルはオリジナル・キャストではない。ブラムはジム・ウォルトンの後任。バレルは、ブレンダ・プレスリーの演じていた役を、後に『Avenue Q』でゲイリー・コールマンを演じるナタリー・ヴェネティア・ベルコンの次に継いだようだ。

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