The Chronicle of Broadway and me #028

★1992年5月~6月(その2)

この年のトニー賞授賞式は5月31日。その日のニューヨーク・タイムズのアート&レジャー版第一面に同紙演劇担当主筆フランク・リッチの書いた、「On Broadway, the Lights Get Brighter」というタイトルのコラムが載っていた。ざっと、こんな内容。

<死んでいると言われるほど元気のなかった近年のブロードウェイだが、今シーズンは経済的にも内容的にも非常に盛り上がった。それも、イギリス産のショウに頼ることなく、多くの優れたアメリカのショウによって活況を呈した。若い世代の有能な作家や演出家も続々現れている。もちろん依然解決されるべき問題はあり、必ずしも手放しで喜んでいられるわけではないが、まだまだブロードウェイには未来がある。>

このコラムには個々のショウについての評価も細かく書かれているのだが、そこで、「取るに足らないショウであり、実際の内容以上に見せかけるユーロ・ディズニーランドのハッタリのごときウエスト・エンドの美学にニューヨークの観客が惑わされるのも、これで終わりを告げるだろう。」と手厳しく批判されているのが、ロンドンからやって来た『Five Guys Named Moe』(@Eugene O’Neal Theatre 1992年5月25日20:00)。それに(気弱に)反論している当時の感想は次の通り。

<タイトルからわかる(人はわかる)通り、偉大なるアフリカン・アメリカン、ルイ・ジョーダンの音楽によるミュージカルで、演じているのも6人のアフリカン・アメリカン俳優。
落ち込んでラジオに合わせてブルーズを歌っている青年の前に、ラジオの中からモーという名の5人の男が現れ、青年を励ます。……というのが筋と言えば筋だが、基本的にはルイ・ジョーダンのイカしたナンバーが次から次に出てくる歌と踊りのショウだ。
フランク・リッチは「モー」に対して厳しいが、そこには“ロンドン産”に対する必要以上の嫌悪がある気がする。
確かにミュージカルとしてはスケールが小さいし、現代的な切り口を持っているわけでもない。しかし、愉快で楽しい踊りと共にルイ・ジョーダンのナンバーがいきいきと演奏され歌われると、それだけで劇場全体がハッピーになる。ルイ・ジョーダンの音楽が持っている“今も生きる”力を十二分に引き出した素敵なショウであり、そのリズムは現代的だ。
驚いたのが、第1幕の最後のナンバー「Push Ka Pi Shi Pie」。突然、客席にサビの部分のナンセンスな歌詞が書かれたカードが降ってくる。それで客にコーラスを促し、さらに、舞台から通路に下りた役者が客を引き連れて踊りながら舞台へと行進する。この行進に参加した客が50人くらいいたんじゃないか。劇場は盛り上がり、幕が下りても興奮状態。その余韻もあって、第2幕の「Caldonia」のコール&レスポンスでも客席はノリノリ。こうした“客いじり”は、確かにオフ・ブロードウェイ的。リッチとしては、その辺も気に入らないのかもしれないが、観客としては単純に楽しめる。>

翌1993年、当のロンドンを訪れるに及んで、なるほどリッチの言う通りだな、とロンドン産ミュージカルについての認識を新たにするのだが、この時点ではまだわかっていない。まあ、この作品については、感想で書いている通りルイ・ジョーダンの楽曲のよさにノセられて弁護した面もあるが、この種のショウとしての出来は悪くなかったと今でも思う。
結果的に、トニー賞では作品賞と脚本賞のノミネーション枠には入った。プロデュースはキャメロン・マッキントッシュ。脚本は役者としても知られるクラーク・ピータース。

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