The Chronicle of Broadway and me #040

★1992年12月~1993年1月(その4)

Gypsy Passion』(1月2日20:00@Plymouth Theatre)は本物のジプシーたち15人によるフラメンコ主体のショウ。最近の日本では「ジプシー」という呼称は差別的として「ロマ」と言い換える傾向もあるが、ここでは本人たちによる自称なので、そのまま使わせてもらう。プレイビルには、「『Gypsy Passion』は、アンダルシアのジプシーたちの物語である。彼らの喜びと絶望、命と愛、伝統と芸術表現、ジプシーに独特のもの全てを捉えている。それらは全て、彼らを結びつけ、彼らに希望をもたらすただ一つのものに集約される。即ちフラメンコ!」という記述があった。以下、当時の感想(若干編集)。

<第1幕は、族長のギター弾き語りによる一族の物語の歌→工芸品を売るために町に出る前夜のキャンプで子供が生まれ人々の喜びが高まる→町で取引きを終えた後の酒場で歌い踊る大人たち→自発的なやり方で感情を表わす子供たち。第2幕の舞台はジプシーの村。恋に落ちた2人の若者が歌い踊る→恋人たちが家族の承認を受け、伝統に則った結婚式が行なわれる→花婿は花嫁のために父の鍛冶屋で働く→フィナーレ。
一応こういう設定があるが、ドラマ的な演出は最小限に抑えられていて、それで観客を引きつけようとする意図は感じられない。それぞれの設定の中で、持ち回りのように誰かが歌い始め、誰かが踊り始める。むしろ、ストーリーは演じる側の感情の流れとして意味があるのだと思う。観る側にとっては、ギター3本と手拍子の伴奏による歌と踊りが繰り返されるフラメンコのコンサートに来たのとほとんど変わらない。
最初は、これは退屈するぞ、と思った。凝ったセットもなければ、ドラマらしいドラマもない。が、第1幕の後半から、単調に思えた歌と踊りが盛り上がり始める。特に終盤の子供たち (10代の女の子4人)の踊りには、成熟する前の明るい色気と茶目っ気があって楽しくなった。第2幕は、第1幕に比べれば感情移入もしやすい。ことに、若い恋人2人の踊りが素人目にも変化があって飽きない。
総じて、歌も踊りもエキゾティシズムといった興味を超えて素晴らしい。最終公演ということもあってか、客席からは惜しみない拍手が送られていた。が、前述したように、結果的にはフラメンコのコンサートという印象で、ブロードウェイの舞台に乗せるショウとしては娯楽性に欠ける結果になっていたのも否めなかった。
過去にブロードウェイに登場した同趣向のショウに、『Tango Argentino』(1985年)や『Black And Blue』(1989年)を成功させたクラウディオ・セゴヴィアとエクトル・オレゾリのプロデュースによる『Flamenco Puro』(1986年)があるが、これも必ずしも成功しなかったようだ。その舞台を観たニューヨーク在住の評論家、大平和登氏は「舞台の上の芸術的精度が磨かれ、一級の公演に近づけば近づくほど、皮肉にも観客からの距離が大きくなる」として、その理由を、「フラメンコの精髄は、自在に興奮状態を創り上げる出演者たちが、自然に客席をまき込む舞台と客席との一体感にあ」り、「ジプシー舞踊とはまるでうらはらな、スノービッシュな空間や観客の前では、ジプシーたちの魂の叫びも情熱的な汗も、ひいてはそのあり様まで歪められてしまう」からだと書いている(「ニューヨークのパフォーミング・アーツ」)。
Gypsy Passion』は、ジプシーたちの生活の場での歌と踊り、というムードを演出することで、舞台と客席の溝を埋めようとしたのかもしれない。が、結局は『Flamenco Puro』とほぼ同じ結果が表われたわけで、この大平氏の評をプロデューサーが読んでいれば、さらに斬新な演出を試みたか、あるいは公演そのものをあきらめていたか。が、11月17日から1月2日という約7週間の公演は、それでも長く続いたと言えるのかも。>

当時はまだ、大平和登氏にはお目にかかっていない。その著作を穴の開くほど読んで、過去の舞台を一生懸命想像していた時期だ。「想像」と「実地検証」の比較検討の時期だったとも言える。自然、感想にも熱がこもり、長くなりがちな時期でもあった(笑)。

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