The Chronicle of Broadway and me #043

199212月~19931月(その7

『Ruthless!』(1月7日20:00@Players Theater)はミステリー仕立ての、ひねりにひねったミュージカル・コメディ。このオフ初演は1992年の3月からロングランを続けていて、1993年1月24日に幕を下ろしている。以下、少々長いが、当時の感想からストーリー部分を抜き出す。

<第1幕=アメリカの小さな町。
ティナ・デンマークはスターへの野心に燃える、いささか達者過ぎるほど芸達者な、こまっちゃくれたローティーンの少女。ティナの母ジュディは、電話に出ると「こちら、ティナの母です」と答えるほどティナに献身的な、病的に引っ込み思案な女性。
そこにシルヴィアという、元女優で今はエージェントをしている、初老の押しの強い女性が現れ、ティナをスターにしてやると言う。ジュディは、ティナが学業を終えてから、と断わるが、ティナはやる気満々。母親の前では良い子ぶり、シルヴィアの前では野心をむき出しにするという、ティナの天性の演技者としての二面性が早くも表われる。
ティナの当面の目標は学芸会の劇の主役。ところが、子供らしくないティナの正体を見抜いて彼女を嫌っている担任は、ルイーズという子を主役に選ぶ。
学芸会を前に、ジュディの母で劇評家のリタがやって来る。リタの批評は辛辣で、過去に苦い思いをした経験のあるシルヴィアはリタに食ってかかる。が、リタはシルヴィアという名前すら覚えていない。それなら、とシルヴィアが話し始めたのは、ルースという昔の名ミュージカル女優の事件。リタに酷評されて謎の自殺を遂げたというのだ(作品のタイトル『ルースレス』は「容赦なし」と「ルースがいない」のダブル・ミーニング)。ルースという名前を聞いた途端、ジュディが発作的な混乱に見舞われる。一方、リタは笑ってシルヴィアの非難を受け流す。だって私はミュージカルが大嫌いなんだから、と。
学芸会直前、主役のルイーズが事故で死ぬ。学校から嬉しそうに帰ってきたティナ。ティナの手提げ袋の中に、主役が被るカツラを見つけて驚くジュディ。笑ってごまかそうとするティナだが、罪状は明白。開き直って、スターになるためだったら何でもするわ、とうそぶくティナ。嘆くジュディをよそに、それでこそ女優だと褒め讃えるシルヴィア。それを責めるリタに対して、シルヴィアは恐るべき事実を突きつける。ジュディはリタの娘ではなく、亡きルースの娘で、ルースを死なせる原因を作ったリタが責任を感じて養女にしたのだ、と。再び発作に襲われたジュディは、失っていた記憶を取り戻す。彼女は、母ルースを凌ぐ女優になるはずだったのだ。

第2幕=4年後、ニューヨーク。
ジンジャー・デルマルコという名のミュージカル女優として成功を収め華やかに暮らしているのは、意外にもジュディ。彼女のホテルの部屋に、芸能レポーターが取材に来ている。そこに、少年院(の如き場所)から出てきたティナが訪ねてくる。俄然興味を覚えるレポーター。長かったブロンドの髪もオカッパにして、すっかり改心した様子のティナ。が、実は、自分を少年院(の如き場所)に追いやることでジュディが今の成功を得たと考えて、ティナはジュディを恨んでいたのだ。それが証拠に、ティナのオカッパ頭はカツラで、その下には長いブロンド。改心は、またしても演技だった。そこに、シルヴィア、リタもやって来て、ジュディの付き人で女優志願のイーヴまでも交えたやりとりの中で明らかにされていく、さらなる事実とは? そして、続けて起こる世にも恐ろしい事件とは?>

結末については、「公演が終わったとはいえ再演の可能性がないではないのでエチケットとして伏せる」と当時書いているが、実際、近年になってリヴァイヴァルされている。先見の明(笑)。実は!実は!という歌舞伎並みに面白い結末のどんでん返しについて気になる方は、英語版ウィキペディアには上がっているのでチェックしてみてください。
以下、当時の感想の続き。

<このB級ミステリー的ストーリーは、ショック場面での忌まわしい効果音楽に代表されるBGMと相俟って、パロディ的な面白さを生んでいる(作詞・脚本・演出のジョエル・ペイリーはストーリーやセリフに過去のミュージカルや映画のパロディ部分があることを認めている)。それが、このミュージカルの魅力のひとつ。
そして、女優という人種の嫌になるくらいに強烈な性(さが)を誇張して描きながら、最終的には彼女たちを愛すべき人物として捉え、逆説的なブロードウェイ讃歌になっている。これが魅力のふたつ目。
それが、最もはっきり表われるのが、劇評家リタが「I Hate Musicals」という曲を歌う場面。ミュージカルは数々あれど、ミュージカルなんて大嫌い!と歌うミュージカルはあまりないはず。それだけに、この逆説的ミュージカル讃歌は大受けで、リタ役のロレイン・セラビアンはショウストッパーとなった。
三つ目の魅力は、そのセラビアンを含め、演じる女優たちの個性。
ティナ役のローラ・バンディは、役柄に相応しい華やかな容姿の持ち主(モデルでもあり、ミュージカル・バレエ・映画・TVでのキャリアも豊富)。裏表のある人格を表情豊かに演じ切り、なおかつチャーミングな魅力を振りまいて観客の心をつかんでいた。
ジュディ役ドナ・イングリッシュは最も難しい役どころ。第1幕の秘密めいた影のあるカマトトから第2幕の驕慢でセクシーな大女優へと、髪型や衣装だけでなく、表情や物腰までもガラリと変えてみせたのは見事。
物語の鍵となるシルヴィア役のシルヴィア・マイルズは怪しげだが他人を惹きつけずにはおかない海千山千の人物を、リタ役のロレイン・セラビアンは傲慢な劇評家を、それぞれ貫祿たっぷりに演じた。
この舞台には一人二役が2人いて、その内の1人、ティナの担任とレポーターの二役のアディナ・アレグザンダーは、アクの強い人物をコミカルに演じて印象に残った。もう1人、ルイーズとイーヴの二役をこなすジョアンヌ・バウムは、残念ながらこの日は休演で、それぞれの役に年齢設定に相応しい代役が立っていたが、小学生と女優志願の大人とをバウムが1人でどう演じ分けるのか観たかった。
これらの女優たちがミュージカルの内容さながらに華を競い合って、舞台はアグレッシヴな熱気に満ちる。
なお、シアターガイド誌に出ていた記事を見ると、開幕時は、リタ役セラビアン、担任・レポーター役アレグザンダーは別の役者だったらしい。>

作曲家に全く触れていないが、マーヴィン・レイヤード。編曲や指揮でブロードウェイ・ミュージカルにも1960年代から関わり続けている人。そういう意味でも、このパロディ的作品にぴったりの作曲家だったのかも。バーナデット・ピータースの音楽監督的役割を長く務めている、との情報もある。なるほど、それでか、2014年のアップタウン(Triad Theater)でのリヴァイヴァルにバーナデット・ピータースが来ていたのは(間に付き人らしき人を挟んで並びの席だった)。
ちなみに、ティナ役のローラ・バンディは、『Hairspray』の憎まれ役アンバーを、そして『Legally Blonde』のエル・ウッドをオリジナルで務めるローラ・ベル・バンディ。栴檀は双葉より芳し。この時11歳。ティナ登場時の年齢設定は8歳のようだが「ローティーン」と書いたのは慧眼(笑)。

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