The Chronicle of Broadway and me #046

19935月~6月(その2

トニー賞授賞式体験記の前に、その前哨戦の無料イヴェントStars In The Alley(6月2日12:00@Shubert Alley)の話から。
トニー賞授賞式はアメリカではCBSのネットワークで中継される。映画と違って、ブロードウェイという極めて限られた地域でしか観られないショウを全米に向けてアピールできる年に一度の貴重な機会。ところが、この年は、プロ・バスケットボールNBAの東地区プレイオフで、ニューヨーク・ニックスがシカゴ・ブルズと激しく争っていて、もつれた場合、トニー賞授賞式の6月6日に試合がある可能性があった。そうなると地元ですらTVのチャンネルはバスケット中継に集中する。そんなこともあってか、盛り上げイベント『Stars In The Alley』は熱の籠もったものになっていた。……ということが当時の感想に書いてある。以下、その続き。

<ブロードウェイと八番街、45丁目と44丁目の間にあるミンスコフ劇場と、その西側に背中合わせに建っているブース劇場(45丁目側)+シューバート劇場(44丁目側)との間に、45丁目と44丁目をつなぐ、やや幅の広い小道、シューバート・アリィがある。
そこに作られた仮設ステージに、水曜昼公演の前、正午からの約1時間、次々にブロードウェイ・ミュージカルの出演者たちが登場して、歌を披露した。
司会は『Jelly’s Last Jam』出演中のベン・ヴェリーン。
まず、男3、女2という編成のコーラス隊が出てきてブロードウェイ・ナンバーをメドレーで歌い、次が『Jerome Robbins’ Broadway』のオリジナル・キャストで、日本公演にも来たデビー・シャピロ、続いて『Bura Africa: An African Journey In Music』というオフ・オフ・ブロードウェイ・ミュージカルのスターで、アフリカ人のスリ・ドゥマクデ (と読むのだろうか)が登場した後、上演中のブロードウェイ作品に移る。
まずは『She Loves Me』からヒロインのジュディ・キューンが登場。ユーモラスなラヴ・ソング「Ice Cream」を歌う。
スタンダップ・コミックのジュリー・バドによる作詞家ドロシー・フィールズのブロードウェイ作品メドレーを挟んで、三代目のウィル・ロジャース(『The Will Rogers Follies』)役者ラリー・ギャトリンが登場。名曲「Never Met A Man I Didn’t  Like」を披露。
ここからトニー賞最優秀作品賞候補作が続く。
『The Goodbye Girl』からはキャロル・ウッズ。マイク不要の声量で歌ったのが「Too Good To Be Bad」。
次は『Kiss Of The Spider Woman』。まずチタ・リヴェラが舞台に上がり喝采を浴びる。ただしチタは歌わず、ブレント・カーヴァー(主演男優賞候補)とアンソニィ・クリヴェロ(助演男優賞候補)に、マール・ルイーズとカースティ・カーナハンの女優陣が加わって、「Dear One」を歌う。
『The Who’s Tommy』からはシェリル・フリーマン。「Acid Queen」をバンドをバックに熱唱。
最後の『Blood Brothers』はキャスト全員が舞台に登場。主演女優賞ノミネートのステファニー・ローレンスを中心にして、本番の舞台でも最後に歌われる「Tell Me It’s Not True」を感動的に歌い上げた。
途中、プレイの出演者も舞台に上がって挨拶がてら出演作を宣伝。司会のベン・ヴェリーンも繰り返し『Jelly’s Last Jam』の劇場の場所を紹介するなど、和やかな中にも必死の営業努力というやつがあって、ショウ・ビジネスの厳しさを観た気もした。>

このイヴェント、やらない時期もあった気がするが、続いているようだ。

さて、本編。The American Theatre Wing’s Tony Awards(6月6日20:00@Gershwin Theatre)を観ることができたのは、#36で書いたチケット・エージェントのM夫妻のお誘いがあったから。当時のトニー賞授賞式は関係者絡みでないと観られなかった。関係者にそれなりの枚数のチケットが割り当てられていて、それを適当な友人知人に振り分ける、というシステムなのだろう。なにしろ、当時はラジオ・シティのような巨大な劇場じゃなかったから。ラジオ・シティになってからは、そのクローズドなチケットと別に、余裕のできた席の分がオープンなチケットとして売られているのだと思う。
で、M夫妻のチケットは、劇評家としても知られる故大平和登氏からのものだった。そんな経緯なので、お代はそれなりに高かったが、トニー賞授賞式を観られると同時に大平さんにお目にかかることもできるという、おカネでは買えない貴重な出来事となった。
以下、その時のレポート(要点のみ)。

<ドレス・コードに従い、生まれて初めてのタキシード (レンタル)を着てガーシュウィン劇場へ。

受賞者については、触れられることの少ない特別賞について書いておく。
一つは、リチャード・ロジャーズとオスカー・ハマースタイン二世が初めて組んだ1943年のミュージカル『Oklahoma!』に贈られた。ロジャーズ&ハマースタイン、コンビ結成50周年記念というわけだ。受賞のために登場したのが振付のアグネス・デ・ミル。伝説の領域に足を踏み入れている人で、このミュージカルにおける彼女の振付は、『On Your Toes』におけるバランシンの仕事と並んで、その後のミュージカルに大きな影響を残したと言われる。グレゴリー・ハインズの押す車椅子に乗って現れたが、受賞の挨拶もかくしゃくたるものだった。
もう一つの受賞は、ラ・ホーヤ・プレイハウス。サンディエゴの郊外にある劇場で、『The Who’s Tommy』の試演は、演出家デス・マカナフがこの劇場の芸術監督であることもあって、ここで行なわれた。こうした地方劇場への特別賞はこれで11回目らしいが、この賞には、アメリカン・エキスプレスからの$25,000の副賞が付属している。言ってみれば、ブロードウェイで実を結ばせるために根を広げる作業をしているわけで、業界が一体になってのこうした努力なしには劇場街の未来もないのだ。
もう一つ、名誉賞という賞もあって、それが、劇場関係者のためのエイズ基金、Broadway Cares/Equity Fights Aidsに贈られた。1987年10月以来$8,000,000 を集めているというこの基金、各劇場でも出演者が募金を促している姿が見られるし、『On A Clear Day You Can See Forever』のオープニング・ドアーズ・プロダクションズなどは、この基金集めを公演目的の重要な要素にしている。トニー賞授賞式の入場料にも基金への募金が含まれていて、入場者には全員、募金をした印の赤いリボンが渡された。単なる思いつきではない確かな運動であることが素晴らしい。

TVでは放映されなかった事実も書き記しておく。
授賞式を前に、式のプロデューサーがノミネートされた人々に向けて注意事項を並べたのだが、その要旨は次のようなことだった。
受賞した場合、舞台上での挨拶は1分以内に終わらせてほしい。時間が迫ってきたら合図としてオーケストラが演奏を始め、その演奏の音量がだんだん大きくなる。時間内に終わらない場合、オーケストラの音であなたの声は聴こえなくなるでしょう。
実に味気ないが、Blue Man Group『Tubes』(#036のプロデューサー出口最一氏によれば、その裏事情は次のようなことらしい。
トニー賞授賞式のTV中継は毎年行なわれているが、昨年までのプロデューサーは舞台畑の人だった。そのため、式の現場を優先し、受賞者の挨拶が長引いても容認していた。結果、予定時間をオーバーし、TV放映も延長せざるを得なかった。その問題で、TV局側はプロデューサーと話し合ったが折り合えず、結局、TV畑のプロデューサーに替わることになった。
この辺は劇場街とTVとの力関係の問題だろうが、舞台を愛する人たちの年に一度のお祭、できれば時間を忘れて楽しみたいものだと思った。

授賞式後はマリオット・マーキーズ・ホテルに場所を移してパーティ。
パーティ用に授賞式出席者の名簿が予め用意されていて、自分の名前の後ろに書いてある番号のテーブルに着くのだが、この名簿には出席者全員の名前が載っている。つまり、スターの名前と共に自分の名前も載っているのだ。ちなみに、Mで始まる僕の名前の8つ上には司会者だったライザ・ミネリの名前があった。最高の記念品だ。>

『Oklahoma!』初演スタッフを代表して特別賞受賞のために登壇したアグネス・デ・ミルは、この年の10月に亡くなっている。

名誉賞受賞のBroadway Caresは、もちろん今も続いている。カーテンコールの際にキャストから勧誘があった時はだいたい寄付してきたが($1)、いったいいくらになったやら。……たいしたことないか(笑)。

出口最一氏とは、この渡米以前に東京でお目にかかっている。ブルーマンで注目されていた出口氏を囲んで、何人かで昼食をとりつつお話をうかがう機会があったのだ。その後も何度かニューヨークでご一緒させていただいた。そう言えば、1996年、日本にはまだ評判が伝わっていなかった『Rent』の情報をいち早く教えてくださったのも彼だった。2015年にオフ・ブロードウェイでオープンした『Trip Of Love』の構想も20年ぐらい前に聞かされたいた。その粘り強さ、実行力には感服する。

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