[考察03] ジーザスとエルヴィスのメンフィスな関係

1996年12月のロンドン観劇旅行で『Jesus Christ Superstar』を観て思いついた妄想気味の考察。
以下、旧サイトからの転載です。

<『Jesus Christ Superstar』初演の成功の陰にエルヴィス・プレスリーのメンフィス・セッションあり、というのが、今回ロンドンでひらめいた仮説。その話を少し。

1969年1月と2月にメンフィスのアメリカン・スタジオで行なわれたエルヴィスのレコーディング・セッションは、「In The Ghetto」(同年4月発売HOT100最高位3位)、彼にとって最後のNo.1ヒットとなった「Suspicious Minds」(同年8月発売)、「Don’t Cry Daddy」(同年11月発売HOT100最高位6位)という3曲のトップ10ヒットを生んだ充実したもので、録音されたあらゆる曲が、R&B、カントリー、ゴスペルなどがない交ぜになった、アメリカ南部ならではの素晴らしいサウンドで満ちている。
このセッションを足がかりに同年7月、エルヴィスは初めてラスヴェガスに進出し、翌1970年の映画『Elvis: That’s The Way It Is』(邦題:エルビス・オン・ステージ)で全世界に知られるようになるライヴの快進撃を始めることになる 。

一方の『Jesus Christ Superstar』は、まずレコードがヒットし、その後で舞台化される、という経緯をたどっている。資料を見ると、まずシングルの「Superstar」が1969年後半に、次いで2枚組のアルバムが1970年に発売され、それらの世界的ヒットを受けてコンサート形式のライヴ公演が全米を回り、1971年10月にブロードウェイの劇場に“ロック・オペラ”として登場している。
期的に見ると、『Jesus Christ Superstar』がエルヴィスのメンフィス→ラスヴェガスを後追いしているのだが……。

両者の関係性を類推する鍵は2つ。南部サウンドとライヴのスタイルだ。

『Jesus Christ Superstar』の楽曲のほとんどがゴスペルやR&Bを模して作られているのは一聴すればわかることで、例えば「Superstar」などは、はっきりと“ソウル・ガールズ”と謳った女性コーラス3人を従えてユダがシャウトする作りになっている。
が、直接的にエルヴィスを連想したのは、カントリー調バラード「Everything’s Alright」。これって「Suspicious Minds」じゃないか? そう思った。「Suspicious Minds」の中間部のスローになるところ。まんまじゃないけど、その雰囲気が。
そう考えると「Superstar」のスタイルも、ブラック・ミュージックからの直取りというよりも、同じエルヴィスのメンフィス・セッションの「Rubberneckin’」あたり、あるいは、その後のラスヴェガスでのライヴ・スタイルが元ネタ、という風にも思えてくる。とにかく、キーになる楽曲のサウンド作りが、あの頃のエルヴィス風なのだ。

ライヴのスタイルということで言えば、そもそもライヴ・コンサートの形式で舞台に上がった『Jesus Christ Superstar』は、純粋な舞台ミュージカルになっても歌手がハンドマイクを使っていた。そんな中、例えば、退廃の人ヘロデ王の役などの歌唱スタイルは、多分にエルヴィスのライヴの雰囲気をなぞっているように見える(『Joseph And The Amazing Technicolor Dreamcoat』のファラオにも影響が及んでいる)。
いずれにしても、1971年に、こうした南部ミュージック・レヴュー的ライヴというスタイルでブロードウェイに登場する背景に、エルヴィスのラスヴェガス公演の全国的認知があった、と考えるのは、さほど不自然ではないだろう。ロイド・ウェバー作品で、ここまでアメリカ南部の感じがするのは、後にも先にもこの作品だけなのだ。それだけに、これは、はっきりと“戦略”だっただろうと思うのだ。

『Jesus Christ Superstar』については、とかく題材のことが“テーマ”として意味あり気に語られがちだが(新約聖書の斬新な解釈だとか、キリストを人間として捉えた革新的ドラマだとか)、むしろ、こうした音楽状況にうまく乗るという戦略の方こそ語られるべきである気がする。そこに、案外ロイド・ウェバーの本質が潜んでいたりして面白いとも思うのだが。>

★from WEBsite Misoppa’s Band Wagon (Apr./1997)

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『Jesus Christ Superstar』は、ロイド・ウェバーの母国イギリスではなく、まずアメリカで始まっている。その事実も、エルヴィスを含む、あの頃のスワンプ・ロックの流れに呼応しての戦略だったことの証左のように思われる。
ロイド・ウェバー、機を見るに敏。『The Phantom Of The Opera』の隠し味はユーロ・ビートだし。

The Chronicle of Broadway and me #123(Noise/Funk[2]/How To Succeed In Business Without Really Trying[3])

再見の2本について簡単な追加感想を当時書いているので、最小限で掲載。

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Bring In ‘Da Noise, Bring In ‘Da Funk(Noise/Funk)』(6月25日20:00@Ambassador Theatre)

<5月に観た中で限定公演の『Chicago』を除けば最高だった、と言うか、これまで観た中でも最も創造的なミュージカルの1つだったのが、『Noise/Funk』こと『Bring In ‘Da Noise, Bring In ‘Da Funk』。トニー賞でも見事4部門(演出、振付、助演女優、照明)で受賞した。そのせいかボックス・オフィスでチケットが買えず、当日に限り午後2時半から売り出される2階後方席の$20チケットを並んで買ったのだが、1時半に行ったらすでに20人近く並んでいたという人気振り。

前回書かなかったことで言えば、トニーの助演女優賞を獲得したアン・デュケネイの多彩な唱法も楽しみの1つ。本来のブルーズ/ゴスペル的歌唱からビリー・ホリデイの物真似まで、聴き込むともっと面白いことが出てきそうな趣向が凝らされている。>

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How To Succeed In Business Without Really Trying』(6月26日14:00@Richard Rodgers Theatre)

『H2$』こと『How To Succeed In Business Without Really Trying』が7月14日で幕を閉じた。主演のマシュー・ブロデリックが一旦役を降りた時に客足が落ちたらしい。今回は、そのブロデリックが復帰していた。
観るのは3度目。前回(昨年6月19日)の印象が1回目(昨年3月22日)に比べて必ずしも芳しくなかったので、閉まる前にもう一度確かめたかったのだが、実によく出来ているのが改めてわかって、大いに楽しんだ。

ことに楽曲(フランク・レッサー)の繰り返しのうまさ。1度目に歌われる時と2度目とで、歌う人間や状況が変わっていて、歌の意味がまるで違ってくる。
典型的なのが「Been A Long Day」。
「(It’s)been a long day.」というのは「お疲れさま」っていうニュアンスじゃないでしょうか。つまり、時は退社時。場所はエレベーター前。同じ会社に勤める人物が3人、エレベーターが来るのを待っている。両端の2人(男女)はお互い相手に対して思ってることがあるが口に出せない。ところが真ん中の人物は全てお見通し。その人物が、「Now she’s thinkin’」と歌うと女性の方の心の中が歌になって聴こえ、「And he’s thinkin’」と歌うと男性の心の中が聴こえてくる。これがこの楽曲の構造。
3人とは、互いに相手に好意を持っている主人公とヒロインのローズマリー、間に立つのは2人を応援しているスミッティ女史。夕食に誘って欲しいローズマリーと、誘おうかなと考える主人公の仲を、女史がなんとか取り持とうとする場面。歌はじれったくも微笑ましい。
ところが、その3人がエレベーターで立ち去った後に出会う別の3人は、恐妻家の社長と秘書として入社した愛人、間にいてニヤニヤするのは出世を狙う社長の甥(妻の妹の息子)。弱みを握られた者と握った者によって歌われ、勢い楽曲は皮肉なムードに変わる。
あるいは「I Believe In You」の場合。
トントン拍子に出世する主人公を妬む人間は多い。そんな連中と一緒になった役員専用の洗面所で、鏡に向かってややナルシスティックに自分を励ます主人公の歌。つまり、ここでの“you”は自分のこと。
そうやって副社長にまで登り詰めた主人公だが、失敗して会社を大混乱に陥れ、姿をくらます。そんな主人公を思いやってローズマリーが同じ楽曲を歌う。ここでの“you”は、あなた(主人公)だ。
こうした、ミュージカルならではのひねりの効いた繰り返しが他の何曲かでもあり、そのアイディアにシビレる。

ブロデリック復帰後の『H2$』の話題の1つが、実生活でもガールフレンドだというサラ・ジェシカ・パーカーがローズマリーを演じていることだが、このローズマリーが実にいい。ちょっと怖いくらいイノセントで、でもチャーミングなローズマリーを、パーカーはかなり戯画的に演じて、役柄の輪郭クッキリ。オリジナルの配役では他の強烈なキャラクターの陰に隠れ気味だったのが、すっくと立ち上がって見えた。>

サラ・ジェシカ・パーカーとは、後に『Once Upon A Mattress』のリヴァイヴァルで再会する。

The Chronicle of Broadway and me #120(Cowgirls)

19966月@ニューヨーク(その2)

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『Cowgirls』(6月23日19:00@Minetta Lane Theatre)は、当時の感想によれば、<カントリー・ミュージックの酒場を舞台に、芸達者の女優たちが自分たちで楽器を演奏し、歌いまくる、楽しいミュージカル。>ってことで、以下続き。

<カンザス州にあるカントリー・ミュージックのライヴ・ハウス、ハイラム・ホールの舞台にいるのは3人の女性、リタ(ピアノ)、リー(チェロ)、メアリー・ルー(ヴァイオリン)。彼女たちがおもむろに演奏を始めたのは格調高いベートーヴェンのソナタ。驚いたのは経営者のジョーと、舞台に立つのを夢見ながら働いている従業員のミッキーとモー。“カウガールズ”という名前のカントリー・バンドを雇うつもりだったジョーが、よく似た名前のクラシック・トリオを呼んでしまったのだ。
ということになれば、後はご想像の通り。ぎくしゃくドタバタしながらもトリオは“カウガールズ”として舞台に立ち、カントリー・バンドとして成功する。

女性ばかりが歌って演じて楽器を演奏するというのは、昨年6月15日に観た『Swingtime Canteen』と似ている。と思っていたら、その舞台でバンジョーとサキソフォンを演奏していたジャッキー・サンダーズがミッキー役で登場して、ここでもバンジョーを弾いてみせた。
楽器演奏のうまさで言えば、まずはピアノ弾きリタ役のメアリー・アリンガー。クラシックからブルーズまで見事に弾きこなすが、中でも、第2幕2曲目のブギウギ・ナンバーでの超絶テクにはシビレた。全編を通して演奏もキャラクターもノリがよく、コメディ・リリーフとして舞台を支える。妊娠8か月という設定なのだが、このミュージカルを最初に地方劇場で演じた時には本当に妊娠8か月だったという。
ヴァイオリニスト、メアリー・ルーに扮するメアリー・マーフィットはマンドリンやギターやハーモニカもこなすマルチ・ミュージシャン。このミュージカルの作曲・作詞者にして発案者でもある。クラシック・アーティストの誇りにこだわって、なかなかカントリー・ミュージックに馴染まないというお堅い役柄だが(すぐに緊張して硬直したり、ラヴェルの曲だかを聴くと身悶えたりするのがおかしい)、もちろん結局はカントリー的演奏も見事にこなす。しかも第2幕中盤では、ギターを抱え、エルヴィスやジーン・ピットニーの物真似を交えた派手なアクションでホットなロカビリー・ナンバーを歌ってみせて大受け。ショウストッパーになった。
トリオの残る1人、リー役のロリ・フィッシャーもチェロの他にギターを弾く。歌もうまい。彼女の役柄は陽気なレズビアン。
この3人のコーラス・ワークが、練れていて素晴らしい。
モー役ベッツィ・ハウィーはミッキーのバックでジャグ・バンド系のパーカッションやハープなどを演奏し、コーラスを付ける。この人が脚本も書いている。脚本については、マーフィットがシアター・ウィーク誌のインタヴューで、最初は友人の男性に頼んだのだが女性の描き方があまりにステロタイプだったので断わった、と語っている。そのことと無関係ではないと思うのだが、この舞台全体に、男性中心社会に対する愛憎半ばのややメランコリックな感情が流れているように思えた。
もう1人、スター格のジョー役ロンダ・クーレットは凄みのあるハスキー・ヴォイスで渋い歌を聴かせる。

楽曲では、第1幕最後にみんなで歌い上げる、モーツァルトのメロディを織り交ぜたバラード「Looking For A Miracle」が、見え見えの“泣き”が入っているのがわかってもグッと来て印象に残る。同じ傾向でメアリー・ルーを励まそうとリーとリタが歌う「Don’t Look Down」も、わかっちゃいるけど、のうまい作り。>

役者が演技同様、様々な楽器を達者にこなすというのが彼の国では“普通”のこと、という典型例。

 

The Chronicle of Broadway and me #119★(1996/Jun.)

19966月@ニューヨーク(その1)

19度目のブロードウェイ(40歳)。

1996年の社会的事件は、国内では、オウム真理教の解体へ向けての動き、薬害エイズ事件の責任追及問題、銀行の破綻や再編、といった事項が目立つ。
政局は、自民社会さきがけ連立内閣の変動(村山内閣退陣→橋本内閣発足)から民主党結成へと流れている。日本社会党は党名を社会民主党に変更。
そんな中、まだ橋本内閣の厚生大臣だった菅直人が薬害エイズ事件で血友病患者に直接謝罪したのは、民主党結成に向けてのパフォーマンスだった可能性もあるが、そうだとしても、現安倍政権の閣僚たちの酷さと比較すると信じられないぐらい誠実に見える。
携帯電話・PHSの契約者数が急増した年でもあるらしい。2月に発売されたゲームボーイ用「ポケットモンスター赤・緑」によりポケモンが世に出たのも、この年。11月には「たまごっち」が発売されている。
パフィがデビュー。ってことは、個人的には、この年辺りを境に数年遠ざかっていた新しい音楽を再び聴き始める感じか。
ミュージカルでは、宝塚歌劇版『エリザベート~愛と死の輪舞~』の雪組による初演がこの年。

アメリカでは11月にクリントンが大統領選で再選。
7月のアトランタ・オリンピック開催直前に、ニューヨーク沖でトランスワールド航空機が爆発、墜落する事故が起こっている。原因は、直後に疑われたようなテロではなく、電気配線のショートによる燃料への引火とされている。

その事故の少し前に訪れたニューヨーク。観劇タイトルは次の通り。

6月23日 19:00 Cowgirls@Minetta Lane Theatre 18 Minetta Lane
6月24日 20:00 Curtains@John Houseman Theatre 450 W. 42nd St.
6月25日 20:00 Bring In ‘Da Noise, Bring In ‘Da Funk(Noise/Funk)@Ambassador Theatre 215 W. 49th St.
6月26日 14:00 How To Succeed In Business Without Really Trying@Richard Rodgers Theatre 226 W. 46th St.
6月26日 20:00 Moon Over Buffalo@Martin Beck Theatre 302 W. 45th St.
6月27日 20:00 Pilobolus Dance Theatre@Joyce Theatre 175 8th Ave.

前回からひと月半ほどの間隔で飛んだのは、1つには『Crazy For You』の脚本家ケン・ラドウィグの新作『Moon Over Buffalo』を観るためだが、仕事上の仲間たちのニューヨーク熱が高まって、その案内役を買って出た感なきにしもあらず。なので、オンのミュージカル2本を彼らと一緒に再見。
残り3本の内、ミュージカルはオフの『Cowgirls』のみ。『Curtains』はイギリス産のブラック・コメディ、『Pilobolus Dance Theatre』はその名のダンス・カンパニーの公演。
結果、地味めのラインナップとなったが……。以下、個別の感想に続く。

 

 

Last Stop On Market Street@Linda Gross Theater(336 W. 20th St.) 2019/03/30 10:30

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『Roald Dahl’s James And The Giant Peach』と同じ、アトランティック・シアター・カンパニーによる子供のための演劇シリーズ「Atlantic For Kids」の1つ。

『Last Stop On Market Street』の原作は、『おばあちゃんとバスにのって』のタイトルで邦訳も出ている、マット・デ・ラ・ペーニャ(著)、クリスチャン・ロビンソン(画)による絵本。こちらで話題になった、ダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(包括)について子供の視点で考える、というのがテーマで、自分の周りだけの小さな世界に閉じ籠もりがちだった少年が、おばあちゃんに連れられて様々なところに出向き、様々な人々と出会い、少しずつ世界のことを理解していく話になっている。

実は、そのことは知らずに観た。「Atlantic For Kids」のシリーズは土日の午前中という、他の公演がない時間に上演されるので、タイミングが合えば観るのだが、それとは別にこの演目を選んだ理由は、「A Hip Hop Musical」というサブタイトルと、楽曲作者のラモント・ドジャーという名前にある。
ラモント・ドジャー。ブロードウェイで上演中の『Ain’t Too Proud』にも登場するザ・スプリームスを筆頭に、黄金期のモータウンに数多くの楽曲を提供した3人組、ホーランド=ドジャー=ホーランドの1人だ。今回は息子のパリス・ドジャーとの共作。
今回、驚くような楽曲はなかったが、子供たちを飽きさせない楽しい仕上がり。その辺りは、ディズニー系でも仕事をしているパリスの功績かも。

振付のニチ・ダグラス(綴りが変わっていて、nicHi douglas)がこれから面白そう。『Be More Chill』のステファニー・シューも参加している「Political Subversities」というグループの一員のようだ。

[Tony2019] トニー賞受賞予想

旧サイトで毎年やっていたトニー賞受賞予想です。授賞式1か月前になったので公開します。
その旧サイトに倣って言えば……トニー賞は興行成績に直接影響が出るのでプロダクション側にとっては重要だけれども、選考には政治的判断による偏りもあるので、観客である我々にとっては“話のタネ”に過ぎません。必ずしも作品選びの基準にはならないことも、心に留めておいてください。
……という訳で、授賞式(現地時間6月9日夜)までの“話のタネ”としてお楽しみください。

現地時間4月30日朝に発表された2018/2019年シーズンのミュージカル関係トニー賞候補と受賞予想は次の通り(マークのニュアンスは、本命=審査員が投票しそう、対抗=案外これが獲るかも/獲ってくれないかな、といった感じ)。

[作品賞]
Ain’t Too Proud
Beetlejuice
Hadestown 
The Prom 
Tootsie
[リヴァイヴァル作品賞]
Kiss Me, Kate 
Oklahoma!
[主演女優賞]
Stephanie J. Block The Cher Show
Caitlin Kinnunen The Prom
Beth Leavel The Prom 
Eva Noblezada Hadestown
Kelli O’Hara Kiss Me, Kate
[主演男優賞]
Brooks Ashmanskas The Prom 
Derrick Baskin Ain’t Too Proud
Alex Brightman Beetlejuice
Damon Daunno Oklahoma!
Santino Fontana Tootsie 
[助演女優賞]
Lilli Cooper Tootsie
Amber Gray Hadestown 
Sarah Stiles Tootsie
Ali Stroker Oklahoma!
Mary Testa Oklahoma! 
[助演男優賞]
André De Shields Hadestown
Andy Grotelueschen Tootsie
Patrick Page Hadestown
Jeremy Pope Ain’t Too Proud
Ephraim Sykes Ain’t Too Proud
[楽曲賞]
Joe Iconis Be More Chill
Eddie Perfect Beetlejuice
Anaïs Mitchell Hadestown 
Music/Matthew Sklar Lyrics/Chad Beguelin The Prom 
Music/Adam Guettel To Kill A Mocking Bird(play)
David Yazbek Tootsie
[編曲賞]
Michael Chorney and Todd Sickafoose Hadestown 
Simon Hale Tootsie
Larry Hochman Kiss Me, Kate
Daniel Kluger Oklahoma! 
Harold Wheeler Ain’t Too Proud
[脚本賞]
Dominique Morisseau Ain’t Too Proud
Scott Brown & Anthony King Beetlejuice
Anaïs Mitchell Hadestown
Bob Martin & Chad Beguelin The Prom
Robert Horn Tootsie 
[演出賞]
Rachel Chavkin Hadestown
Scott Ellis Tootsie
Daniel Fish Oklahoma!
Des McAnuff Ain’t Too Proud
Casey Nicholaw The Prom
[振付賞]
Camille A. Brown Choir Boy(play)
Warren Carlyle Kiss Me, Kate 
Denis Jones Tootsie
David Neumann Hadestown
Sergio Trujillo Ain’t Too Proud 
[装置デザイン賞]
Robert Brill and Peter Nigrini Ain’t Too Proud
Peter England King Kong
Rachel Hauck Hadestown 
Laura Jellinek Oklahoma!
David Korins Beetlejuice 
[照明デザイン賞]
Kevin Adams The Cher Show
Howell Binkley Ain’t Too Proud
Bradley King Hadestown
Peter Mumford King Kong
Kenneth Posner and Peter Nigrini Beetlejuice
[衣装デザイン賞]
Michael Krass Hadestown 
William Ivey Long Beetlejuice
William Ivey Long Tootsie
Bob Mackie The Cher Show
Paul Tazewell Ain’t Too Proud
[音響デザイン賞]
Peter Hylenski Beetlejuice
Peter Hylenski King Kong
Steve Canyon Kennedy Ain’t Too Proud
Drew Levy Oklahoma! 
Nevin Steinberg and Jessica Paz Hadestown

今シーズンはナショナル・シアター経由で箔を付けて戻ってきた『Hadestown』が勢いで大量受賞するのでは、という推測を元にした予想。なので大半のカテゴリーで同作を本命にした。
考えどころは対抗をどうするか、なのだが、むずかしいのが『Ain’t Too Proud』『Oklahoma!』に対する投票者の評価。
『Ain’t Too Proud』はとてもよくできているし、面白いのだが、『Jersey Boys』の二番煎じと見られる可能性も高く、どこまで評価されるかが気になるところ。『Oklahoma!』は、こちらにも書いたが、初演の価値観をひっくり返す解釈を投票者が称賛するのかしないのか。
個人的には、娯楽性、時代性、志の高さ、完成度で今シーズンの最高作は『The Prom』だと考えているのだが……。
といった辺りを判断の軸に、各カテゴリーの予想の根拠を並べてみる。

[作品賞]のポイントは、『Ain’t Too Proud』には行かないんじゃないか、という読み。理由は、前述したように『Jersey Boys』の二番煎じのように見えるから。その『Jersey Boys』の2005/2006年シーズンのミュージカル作品賞受賞自体が、既成楽曲で作られたジュークボックス・ミュージカルだっただけに異例。オリジナル楽曲を持たない作品賞受賞作ということでは1977/1978年シーズンの『Ain’t Misbehavin’』や1999/2000年シーズンの『Contact』等、前例がないわけではないが、同じタイプの(演出家も同じ)特定ミュージシャンの伝記的ミュージカルを選ぶ2度目の“異例”はない気がする。
で、本命が春に登場して印象も新鮮な『Hadestown』。対抗が高い志と娯楽性を併せ持つ『The Prom』『Beetlejuice』『Tootsie』は元が映画な分、割り引かれる可能性大。

[リヴァイヴァル作品賞]は、前述の通り『Oklahoma!』に対する評価しだいだが、評価されると判断して本命に。もちろん『Kiss Me, Kate』でも問題ない。

[主演女優賞]で意外だったのは、『Beetlejuice』のソフィア・アン・カルーソがノミネーションから外れたこと。トニー賞好みな気がしたんだが。
ともあれ、ここに限っては『Hadestown』をハズして『The Prom』の2人を推す。自然体のケイトリン・キヌナン、思い切り芝居がかったベス・リーヴェル、どちらかに獲ってほしい。

[主演男優賞]に回った(って間違いなく主演なんだけど経歴的に助演の印象が強い)ブルックス・アシュマンスカスは逆にチャンス。助演の方が競争が熾烈そうだから。この役で獲らせてあげたい。が、スターになりつつある感じのフォンタナに行く気も。
助演女優賞も含め、『Oklahoma!』を役者単位で評価するのはむずかしい。獲るんなら演出賞と一緒にまとめてか。

[助演女優賞]……と書いておいて『Oklahoma!』のメアリー・テスタを対抗にしているのは、豊富な経歴、かつ、いつも印象的なのに、トニー賞はノミネーションそのものがまだ3度目で受賞はナシ、ってのが不思議だから。本命は『Hadestown』で。

[助演男優賞]『Hadestown』のヴェテランどちらかが獲る気配濃厚。で、どちらかと言えば、という話で、より強烈な印象のパトリック・ペイジに代表してもらった。個人的には、歌にダンスに大活躍のデイヴィッド・ラフィン役エフライム・サイクスにあげたい。

[楽曲賞]は、ブロードウェイ初挑戦のアネイス・ミッチェルにまっすぐ行くか、ブロードウェイ歴10年を超える(コンビを組んで25年だそう)マシュー・スクラー&チャド・ベゲリンに行くのか。ミュージカル楽曲の技としては後者に一日の長がある。『To Kill A Mocking Bird』については授賞式前に確認してくる予定。

[編曲賞]はむずかしい。『Oklahoma!』の大胆なアメリカーナ・アレンジが評価されると面白いのだが。で、一応、本命は『Hadestown』にしておくが、実は『Ain’t Too Proud』の、ほとんど途切れることのない、物語を乗せて流れていく巧みな編曲に感心している。

[脚本賞]は、全くのオリジナル2作、『Hadestown』『The Prom』の争いと見るべきなのだろうが、『Hadestown』の脚本についてはこちらに「若干弱い」と書いたので、ここは潔くハズして、映画版とはひと味違ったミュージカルならではの仕様に仕立てて現代性も加味した『Tootsie』を推しておく。

[演出賞]は、『Natasha, Pierre & The Great Comet Of 1812』で獲り損ねたレイチェル・チャヴキンの『Hadestown』に対する多大な貢献か、『Oklahoma!』を大問題作に仕上げたダニエル・フィッシュか。ここが今シーズンのトニー賞の分かれ目。これ以外って選択肢はあるのか?

[振付賞]は、『Choir Boy』が未見だが、すんなり、普通に素晴らしかった『Kiss Me, Kate』でいいのでは? 対抗がカッコいい『Ain’t Too Proud』で。

以下、[各デザイン賞]は、もっぱら『Hadestown』を本命に、ご覧の通りに予想したが、ポイントは音響デザイン賞。編曲賞同様『Oklahoma!』の大胆な音響に対する評価がどっちに振れるのか興味津々。なお、『King Kong』に関しては特別賞がコングを作って操ったソニー・ティルダー・アンド・クリーチャー・テクノロジー・カンパニーに贈られているので、その他の賞は獲らないのではないかと考えた。

2018/2019シーズンのトニー賞授賞式は現地時間6月9日の20時からです。

上演中の作品の観どころをまとめた記事がこちらにアップされています。

The Chronicle of Broadway and me #118(season summary)

19965月@ニューヨーク(その8)

例によって、トニー賞を目安にシーズンを振り返る。1995/1996年シーズンのトニー賞受賞者は次の通り。

●作品賞 『Rent』
●リヴァイヴァル作品賞 『The King And I』
●主演男優賞 ネイサン・レイン『A Funny Thing Happened On The Way To The Forum』
●主演女優賞 ドナ・マーフィ『The King And I』
●助演男優賞 ウィルソン・ジャーメイン・ヘレディア『Rent』
●助演女優賞 アン・デュケスネイ『Bring In ‘Da Noise, Bring In ‘Da Funk
●演出賞 ジョージ・C・ウルフ『Bring In ‘Da Noise, Bring In ‘Da Funk
●脚本賞 ジョナサン・ラーソン『Rent』
●楽曲賞 ジョナサン・ラーソン『Rent』
●振付賞 セイヴィアン・グローヴァー『Bring In ‘Da Noise, Bring In ‘Da Funk
●装置デザイン賞 ブライアン・トンプソン『The King And I』
●衣装デザイン賞 ロジャー・カーク『The King And I』
●照明デザイン賞 ジュールズ・フィッシャー&ペギー・アイゼンハウアー『Bring In ‘Da Noise, Bring In ‘Da Funk

『The King And I』の評価の高さが今でも不思議なのだが、いずれにしても、主演女優賞はダフネ・ルービン=ヴェガ(『Rent』)には行かずに『The King And I』のドナ・マーフィが獲ったわけで、そう考えると、ジュリー・アンドリューズがノミネーション辞退騒ぎを起こさなければ彼女が受賞する可能性もないではなかった、と思ったりもする(もう1人の候補は『Big』のクリスタ・ムーア)。主演男優賞も、アダム・パスカル(『Rent』)でもセイヴィアン・グローヴァーでもなくネイサン・レインだったわけだし(もう1人の候補は『The King And I』のルー・ダイアモンド・フィリップス)。
が、まあ、全体で言えば、1995/1996年が『Rent』『Noise/Funk』のシーズンだったというのは動かない。明らかな歴史の転換点だった。ちなみに、『Rent』からはイディナ・メンゼルも助演女優賞の候補になっていた。

このシーズン、個人的には、上演されたブロードウェイ・ミュージカルを初めて全て観ることができた記念すべき年だった。