The Chronicle of Broadway and me #027★

★1992年5月~6月(その1)

6度目のブロードウェイは1992年5月の終わりから6月にかけて(36歳)。

1992年は、4月にロスアンジェルス暴動が起きている。てことは、ダウンタウン(マンハッタン)を歩いていて「コリアン、ゴー・ホーム!」とアフリカン・アメリカンから言われたのは、この年の渡米時か。
同じ4月にボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が始まっている。その流れで言うと、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の解体も4月。
のんきな方面では、やはり4月に、ユーロ・ディズニーランド(現ディズニーランド・パーク、通称ディズニーランド・パリ)が開園している。
10月にルイジアナ州バトンルージュで日本人留学生射殺事件。「Freeze!」ってやつ。撃ったアメリカ人は刑事裁判では無罪になったが、実は銃マニアで、民事裁判では殺意が認められて賠償命令が下されている。
11月、ビル・クリントンがアメリカ大統領選挙に勝利。12月、金泳三が韓国大統領選挙に勝利。

国内では、1月に共和汚職事件絡みの受託収賄罪でで阿部文男衆議院議員が逮捕、10月には東京佐川急便事件が暴かれていく中でヤミ献金を受け取ったとされる金丸信が衆議院議員辞職、と、現安倍政権下なら逃げきったであろう政治家の背信行為に、世論を背景にした審判が下されている。
さくら銀行、あさひ銀行という、すぐに消えることになる新社名が登場したのも、この年。バブル崩壊に関わりなくCI(コーポレートアイデンティティ)ブームは続いていたわけだ。ちなみに、大蔵省発表によれば、9月末段階での都市銀行の不良債権総額は12.3兆円とか。
ミュージカル好きとしては、いずみたく(5月)、中村八大(6月)の逝去も挙げておきたい。世間的には、尾崎豊(4月)と長谷川町子(5月)だろうが。
ハウステンボス開業はバブルの余韻か。風船おじさん消息不明、なんてニュースもあった。

ブロードウェイはこの年、アメリカ勢の復調で盛り上がる。

観劇リストは次の通り。

5月25日 20:00 Five Guys Named Moe@Eugene O’Neal Theatre 230 W. 49th St. ★
5月26日 20:00 Miss Saigon@Broadway Theatre 1681 B’way
5月27日 14:00 Catskills On Broadway@Lunt-Fontanne Theatre 205 W. 46th St. [V]
5月27日 20:00 Jelly’s Last Jam@Virginia Theatre 245 W. 52nd St. ★
5月28日 20:00 The Most Happy Fella@Booth Theatre 222 W. 45th St. ★
5月29日 20:00 Crazy For You@Shubert Theatre 225 W. 44th St. ★
5月30日 14:00 Death And The Maiden@Brooks Atkinson Theatre 256 W. 47th St. [P]
5月30日 20:00 Falsettos@Golden Theatre 252 W. 45th St. ★
5月31日 15:00 Man Of La Mancha@Marquis Theatre 1535 Broadway ★
5月31日 19:30 Forever Plaid@Steve McGraw’s 158 W. 72nd St. [off]
6月 1日 20:00 Guys And Dolls@Martin Beck Theatre 302 W. 45th St. ★
6月 2日 20:00 Lost In Yonkers@Richard Rodgers Theatre 226 W. 46th St. [P]
6月 3日 14:00 A Streetcar Named Desire@Barrymore Theatre 243 W. 47th St. [P]
6月 3日 20:00 The Will Rogers Follies@Palace Theatre 1546 B’way

勤めていた会社の“リフレッシュ休暇”制度の適用で、なんと11泊。この“輝かしい”年に長期滞在できたのはツイていた。

末尾のマークの意味は次の通り。★が1991/1992シーズンの新登場ブロードウェイ・ミュージカル。無印はそれ以前からのロングラン・ミュージカル。[off]はオフ・ブロードウェイ・ミュージカル。[P]はプレイ。[V]はヴァラエティ・ショウ。

とりあえず、ミュージカル以外をざっと。

『Catskills On Broadway』。キャッツキルはニューヨーク市から内陸部を北上していったところにある保養地で、その地のホテルに出演する名のある芸人がブロードウェイにやって来た、という趣向。なので、いろんな芸が観られるのを楽しみにしていたが、基本は話芸。マリリン・マイケルズ(Marilyn Michaels)という人の歌マネの一部以外はまるでわからず、爆笑の渦の中で孤独を味わう。唯一わかったのが、出演者の一人が、親戚が失業して東京に行ったという話をした後で「日本人のお客様、あなたの国へようこそ」と言った皮肉。そういう時代だった。
ちなみに、マイケルズのバーブラ・ストライサンドの歌マネはちょっと見もの。ネットに多数上がっている。

『Death And The Maiden』はアリエル・ドーフマンの新作戯曲。邦題『死と乙女』。長い独裁政権が終わって民主化された直後の、とある国。夫婦と行きずりの医師の3人による、過去の疑惑をめぐるミステリアスなサスペンス劇で、内容は言わぬが花。タイトルはシューベルトの同名歌曲から採られている。出演者は、グレン・クロース、リチャード・ドレイファス、ジーン・ハックマン。映画で知る有名俳優を観たかったわけだ。演出マイク・ニコルズ。

『Lost In Yonkers』は、#26にも書いたが、ニール・サイモンの新作で前シーズンのトニー賞作品賞受賞作。その他に、主演女優賞、助演女優賞、助演男優賞も受賞したが、観た時には3人とも去っていた。その内の1人がケヴィン・スペイシー。ノスタルジックな人情劇だということはわかるが、機微がわからないので、相変わらず豚に真珠。演出ジーン・サックス。
なお、このシーズンにもサイモン×サックスの新作『Jake’s Women』が幕を開けたが、そちらは半年ちょっとで幕を下ろしている。

『A Streetcar Named Desire』は、ごぞんじテネシー・ウィリアムズの有名作。邦題『欲望という名の電車』。アレック・ボールドウィンとジェシカ・ラングという、これまた有名俳優目当て。筋は知っていたんで、おおよそは理解できた。当時の感想に「ジェシカ・ラングは、役柄のせいもあるが、鬼気迫っていた。」と書いてある。演出はグレゴリー・モッシャー。プロデュースにサントリーが参画。

楽しいミュージカル群は次回以降に。

ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ@東京芸術劇場シアターイースト 2018/07/10 18:00

IMG_0688国会記者クラブの腐敗を描いた作品。作・演出/永井愛。良作、力作であり、役者は皆好演であることを前提に、以下、感じたことだけを書く。

国会記者会館。国会議事堂前駅を出たところにある、あそこ。東日本大震災に伴う原発事故以降、その前に並んで何度も声を上げた、あそこ。会館を出入りする記者たちは並んでいる人間に対して一様に無関心に見えた。その屋上が、この芝居の舞台。
客席の空気が緩い。半分ぐらいは、そこで笑うか? というところで緩く笑う。歌舞伎座とあまり変わらない。自分はと言うと、ほとんど笑わなかった。おかしくないわけではない。が、笑う気にならない。明らかにギャグとして用意されている場面もあるが、息抜きであって笑って欲しいわけではないのではないか、と思ったりする。
記者たちの世間ずれしたエリート意識やずる賢さや優柔不断さは巧みに描かれていて見事だが、それに対する安田成美演じるネットメディアの記者のまっすぐな人の良さが気になる。そこが現実より半歩遅れている気がする。彼女の側にも深い戦略があり、それが記者クラブとの戦いでどういう事態を引き起こすのか、というところまで観たかった。ないものねだりかもしれないが。
次作にさらなる期待。

[Tony2018] Harry Potter And Cursed Child(part one & two)@Lyric Theatre(214 W. 42nd St.) 2018/06/03 14:00 & 19:30

IMG_0651ミュージカルじゃないんで当初は観るつもりはなかったのだが、期間限定の『The Beast In The Jungle』を観るための渡紐を決めて時間に余裕ができたので、それならと、トニー賞の振付賞ノミネーションが気になったこの作品を観ることにした。が、そこからが一苦労。おいそれと取れるチケットじゃなかった……って話は追って。

以下、ひと月ほど前にMen’s Preciousのサイト(https://precious.jp/list/mensprecious/)に書かせていただいた原稿を若干改訂して載せます。

ニューヨーク演劇界のトニー賞に当たるのが、ロンドンのオリヴィエ賞。昨年、同賞の11部門でノミネートされ、作品賞を含む9部門で受賞という過去最高の記録を打ち立てたのが『Harry Potter And The Cursed Child』(邦題:ハリー・ポッターと呪いの子)だ。
そのロンドンのオリジナル・キャストから7人が今回のブロードウェイ・プロダクションに参加。主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞を受賞した3人(ハリー・ポッター役ジェイミー・パーカー、ハーマイオニー・グレンジャー役ノーマ・ドゥメズウェニ、スコーピアス・マルフォイ役アンソニー・ボイル)はそろってやって来ていて、トニー賞の同じカテゴリーで3人とも再び候補になった。なかでもアンソニー・ボイルは素晴らしい。結局、トニー賞では計10部門でノミネート、作品賞を含む6部門で受賞。この結果を受けて、チケット争奪戦にはさらに拍車がかかるだろう。

ネットの一部ではミュージカルとして紹介されていたりもするが、ミュージカルではない。誰も歌わないし、純粋なダンスもない。けれども、ミュージカル的に楽しむことのできる舞台ではある。
それを証明するように、ストレート・プレイとしては例外的に、オリヴィエ賞でもトニー賞でも振付賞の候補となっている。場面の変わり目での音楽や効果音に合わせた役者たちの動きが、さながら群舞のように目を惹くのだ。同時に、音楽(イモージェン・ヒープ)も魅力的。
加えて魔法の表現。題材から言って魔法がどんなふうに出てくるのか興味が湧くかと思うが、その手法が多彩。文字通りマジシャンのテクニックを使ったものから、歌舞伎の早替わりを思わせるものまで、様々な形でアッと言わせてくれる。もちろん高度な映像技術も含め機械的手法も使われるが、むしろ人力が主であり、その辺りが逆に驚きを大きくしていて面白い。同じ劇場でやっていた『Spider-Man:Turn Off The Dark』が空しく劇場内を飛び回るだけだったのと対照的だ。
パート1とパート2に分かれているので、両方観ると半日がかりの観劇になるが、それだけの価値は充分にある。
話の内容は、大人になったハリー・ポッターと魔法学校に入った息子との父子の葛藤を軸にした物語。時間を行き来する冒険の中で、過去の様々な人物や事件が伏線として登場するという、シリーズのファン向けの楽しみも多く準備されているが、全く知識がなくても、それなりに楽しめる作りにもなっている。ちなみに、ロンドン版開幕後に、ジャック・ソーンとジョン・ティファニーの書いた脚本を元にした本が正式にシリーズ最新作として出版され、日本語版も出ているので、予習されたい方はそちらを(前述の邦題は、その本のタイトル)。

さて、チケットの入手方法だが、通常のルートで買おうとすると最終的にチケットマスターのハリー・ポッター特別サイト(https://harrypotter.ticketmaster.com/)に行き着く。もちろん、ここですんなり買える場合は問題ない。ところが、これがなかなかうまくいかない。パート1、パート2があって、セットでまとめ買い、別々に選んでまとめ買い、全く別々に買う、という選択肢の設定が複雑なせいではないかと思うが、とにかく先に進めない。オンライン・チケット売り出し初日の申し込み開始直後のような状態になる。ここで挫折するというのが現状。
そこでオススメするのが、BROADWAY.COM(https://www.broadway.com/)で購入するという方法だ。こちらは比較的すんなり買える。結局20%程度の手数料を取られることになるが、普通に買っても手数料は取られるので、そこは目をつぶりたい。お試しあれ。

なお、BROADWAY.COMで予約した場合、チケット受け取りの窓口が異なるので注意が必要。通常はリリック劇場の42丁目側の入口にあるボックス・オフィスで受け取るが、BROADWAY.COMで予約したチケットは、裏側にあたる43丁目側の入口で受け取り、そこから入場することになる。間違えて慌てないよう、ご確認を。