世界は一人@東京芸術劇場プレイハウス 2019/03/13 14:00

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「音楽劇」と称しているが、日本のオリジナル・ミュージカルの、ひとつの在り方だと思う。作り手がミュージカルと思ってるかどうかは別として。

音楽と芝居の関係としては丸本歌舞伎(義太夫狂言)に近い。
舞台上に4人組のバンドがいて、演奏はもちろん、歌や語りを担当している。舞台の進行役でもある。役者は、バンドによる歌が流れている時には、それに応じて演技をするが、時折、自ら歌いもする。バンドと歌を分け合うようにして歌うこともある。
ほぼ、バンド=義太夫(竹本連中)と考えていい役割。その音楽と芝居の一体感も含め、そうした表現自体が、まず面白い。

物語は、日本のとある地方都市で育った3人の男女をめぐって展開する。小学生の頃から中年になるまで。それぞれの私的な話だが、印象は、高度経済成長から今日に到る日本社会の縮図を思わせる。
冒頭、バンドの語りによるその都市の説明がある。大きな工場ができて発展するが、廃液が川に流され、海に沈殿して「汚泥(おでい)」になる。その「汚泥」は浚渫によって取り除かれるが、取り除かれた「汚泥」がどこに行ったかは誰も知らない。学校の先生に尋ねても曖昧な答えしか返ってこない。曖昧な「汚泥」のイメージが後々まで舞台全体を覆う。まるで日本全体が「汚泥」で覆われているかのように。
平均的で幸せそうに見える家庭の子供、松尾スズキ。金持ちだが親の愛情を受けられない、松たか子。貧乏であることに過敏で攻撃的な態度に出る、瑛太。この3人が、小学校の林間学校(臨海学校?)で担任から夜中にそっと起こされてトイレに行かされる。にもかかわらず、松尾スズキが漏らしてしまい……という不思議なエピソードから始まるのだが、この場面に仕掛けがあって、物語をミステリー仕立てにする伏線になると同時に、この何気ない出来事が3人の人生にも影響を及ぼす。小さな落とし穴。
それとは別に、抗えない日本社会の大きな流れがあり、それぞれの家庭/家族は崩壊し、友情らしきものも歪み、一瞬幸福になりそうに思える3人の人生は、「汚泥」に足をとられるように闇に沈んでいく。
そうした、ひりひりするような「破滅」への流れもまた近松の狂言のようで……。現実の映し鏡感が強烈な印象を残す舞台だった。
ミュージカル好きとしては、役者の歌に不満を覚えないでもなかったが、それはまた別の話なのだろう。

脚本・演出/岩井秀人。音楽/前野健太。演奏/前野健太(ヴォーカル/ギター)、種石幸也(ベース)、佐山こうた(キーボード)、小宮山純平(ドラムス)。出演は上記3人の他に、平田敦子、菅原永二、平原テツ、古川琴音。

 

The Chronicle of Broadway and me #079(The Rise And Fall Of Little Voice)

19945月@ニューヨーク(その10)

『The Rise And Fall Of Little Voice』(5月2日20:00@Neil Simon Theatre 250 W. 52nd St.)は、ちょっと変わったロンドン産のプレイ。1998年の映画化作品『Little Voice』について日本版ウィキペディアには、「サム・メンデスの演出により初演されたミュージカル」と書かれているが、どう観てもプレイだろう。日本で翻訳上演された際もミュージカルとは謳っていなかったはず(未見だが)。ちなみに、ブロードウェイ版の演出はサイモン・カーティス。以下、当時書いた感想。

<北イングランドのとある町。アル中で経済力がなく男にだらしのない母親と暮らす少女(無口で、話す時も極端に小さな声なのでリトル・ヴォイスと呼ばれる)の心の支えは、亡き父の残した女性ヴォーカルのレコードを聴きながら一緒に歌うこと。母親はそれを嫌っていたが、同棲を始めた母親のやくざな恋人がリトル・ヴォイスの歌声がレコードそっくりなことに気づき、商売になると踏んで無理矢理舞台に出す。が、母親がレコードを窓から投げ捨て、錯乱状態になったリトル・ヴォイスが1人で2階にいる時に、漏電から火事になる。リトル・ヴォイスは、彼女に心を寄せていた電話工事の青年に危機一髪の所で助け出され、その劣悪な家庭からも救出されるだろうことを暗示して物語は終わる。
どこが変わっているか。
実は、リトル・ヴォイスの歌声がレコードそっくり、というのが、芝居の中での虚構ではなく、現実にそうなのだ。そして、歌声が似ていることは、このイギリスの労働者階級の陰惨な(演出は時にユーモラスだが)生活を描いたドラマを成立させるための一要素に過ぎないはずなのだが、ここではドラマとは関係なく、そのそっくりさ加減自体がこの舞台最大の “売り” になっている。と言うより、観た印象で言えば、そこだけが観客にとっての関心事になってしまっている。
これが、このプレイの変わっている点で、そのバランスの悪さが、結局この舞台を短命に終わらせてしまったと思う(4月15日プレヴュー開始、5月1日正式オープン、8日クローズ)。

リトル・ヴォイスを演じるヒンデン・ウォルチの歌真似で最も似ているのはジュディ・ガーランド。彼女の歌声のそっくりさがわかる最初の瞬間に歌っていたのがガーランドの歌で、その時の演出は優れている。
リトル・ヴォイスが聴いているポータブル電蓄のガーランドの歌声に対抗して、母親はダンス音楽をステレオで大音量で鳴らしながら恋人と踊っている。ところが、接触不良か容量オーヴァーが原因で電気の回路がショートして全ての電源が切れ、突然、暗闇と静寂が訪れる。後に残るのは、それまでレコードに合わせて歌っていたリトル・ヴォイスの歌声だけ。それも、ガーランドそっくりな。そして第1幕の幕が降りる。
もう1人似ているのがエディット・ピアフ。他に、ビリー・ホリデイ、マリリン・モンロー、バーブラ・ストライサンド、シャーリー・バッシーなどを真似るが、ガーランド、ピアフほどには似ていない。それでも、これほど声質の違う人たちを1人で真似るというのは、なかなかのものだ。もっとも、なかなか、という程度ではブロードウェイでは成功は得られなかったわけだが。
その他に、だらしのない母親ロンディ・リードや変わった隣人カレン・ヴァッカロ、やくざな男ジョージ・イネスなど、アクの強い役柄を個性豊かに演じる役者たちがそろっていて、陰惨さの中の笑いという難しい演出によく応えているのだが、それを生かし切れなかったというのは、ドラマの面白さとリトル・ヴォイスの歌真似の面白さとの間で脚本(ジム・カートライト)が宙ぶらりんになった、ということだろう。
ヒンデン・ウォルチの歌真似芸をさらに磨き、ドラマと歌真似とをより緊密に結びつける脚本に練り直して、ぜひもう一度姿を見せてほしい。このアイディアをこのまま埋もれさせるのは惜しい。
それから、このプレイには、もっと小さい劇場の方が似合っていると思う。>

The Chronicle of Broadway and me #069(Laughter on the 23rd Floor/Kiss Of The Spider Woman[2]/Crazy For You[5]/She Loves Me[2])

19941月@ニューヨーク(その8

ストレート・プレイと再見のミュージカル3本をまとめて。<>カッコ内は当時の感想。

『Laughter on the 23rd Floor』(1月5日14:00@Richard Rodgers Theatre)はニール・サイモンの新作プレイ。

<主演はネイサン・レイン。すなわち、1991/1992年シーズンの大ヒット『Guys And Dolls』の初代ネイサン・デトロイト役者。あのシーズンのトニー賞主演男優賞は彼が獲ってもよかったのではないかと、最近つくづく思う。
快活でエキセントリックで愛すべきレインを筆頭に、個性的で達者な役者をズラリと揃えた贅沢なコメディ。マンハッタン57丁目にあるビルの23階の一室。TVのショウ番組を持つレインのオフィスには、専属ライターたちが、とびきりのギャグを生み出すべく集まってくる。時は1953年。恐怖のアカ狩り=マッカーシズムが吹き荒れていた年(この年、マッカーシーは上院国内治安小委員会の審問の様子をTVで放送させた)。ライターたちは、それぞれの人生を抱え、個を主張し、ぶつかりあいながらも、レインと共に番組作りに全心全霊を捧げる、といった内容。
英語力の乏しさゆえ、その面白さをほとんど理解できていないのだが、それぞれのキャラクターが強烈なだけに、そこは楽しめた。ちなみに客席は爆笑に次ぐ爆笑。>

演出はジェリー・ザックス。『City Of Angels』で出会えなかったランディ・グラフを、ここで初めて観ている。

『Kiss Of The Spider Woman』(1月3日20:00@Broadhurst Theatre)は2度目(1度目についてはこちら)。以下、改めて気づいたことを挙げている。

<細かいことだが、チラ・リヴェラは、手首のキメ方や首の振り等でダンスをシャープで華やいだものに見せる術を体得している、と思った。
主演男優は、トニー賞を受賞したブレント・カーヴァーが降り、替わって複雑な性格のモリーナを演じていたのがジェフ・ヒスロップ。基本的にはカーヴァーの役作りを引き継いでいるが、ヒスロップには、一歩客席に近づいた感じの人懐っこさがあって、この特殊な題材を扱った舞台を、観客にとって受け入れやすいものにしている印象を受けた。>

ヒスロップは、カーヴァー同様カナダ出身で、カナダ版『The Phantom Of The Opera』の怪人役で知られる人らしい。カナダの役者が続いたのは、製作のライヴェント社がカナダの会社だったからだろう。

『Crazy For You』(1月7日20:00@Shubert Theatre)は5度目(1度目についてはこちら)。以下、気づいたこと。

<昨年10月末に観たロンドン版で、ブロードウェイ版と違った演出の部分があることに気づいたのだが、今回、ブロードウェイ版にも演出の改訂が加えられていて、ヒロイン、ポリーの登場の仕方がロンドン版と同じになっていた。
具体的に言うと次の通り。ニューヨークからネヴァダ州デッドロックに舞台が変わり、古トラックに乗った3人の男が「Bidin’ My Time」を歌いながら出てくる。そこにさらに男たちが加わった後、歌が終わる。と、元劇場/今郵便局からポリーが郵便配達バッグを袈裟がけにして出てくる。……というのがこれまで。新しい演出では、ポリーは3人の男と一緒に古トラックに乗って現れる。
続いて彼女は周りに集まった男たちに郵便を配るのだが、以前は、「ビル、ビル、ビル、ビル」(Bill=請求書)と仕分けしてから1通を除いた手紙全てをビリーに渡す、というギャグになっていた。新演出では、1通以外の手紙を単にさっさと周りの男たちに配るだけ。
この改訂の意図は時間短縮か。ギャグが余り受けないと判断しての削除かもしれないが、この部分だけでなく全体にややテンポアップしている印象はあった。
その他にも手直しされている部分があるように思えたのだが、ロンドン版を観た後12月に2回日本の四季版を観たので、記憶がごちゃごちゃになっていて断言できない。
ちなみに、3月からはヒロインが、ナショナル・ツアーで演じていたカレン・ジエンバに替わるので楽しみ。
細かい蛇足を2つ。
まずは、昨年12月25日に観た四季版でのこと。吹き抜けになった宿の2階の廊下で、主人公ボビーが手に持ったカツラ(変装用)を落としそうになってはギリギリでつかむ、という場面がある。ここで、つかみ損なってカツラが落ちてしまった。どうする!? と心配する間もなく、真下にいた役者が受け止めて即座に(トランポリンで跳ね上がるように)投げ上げ、何事もなかったようにボビーがつかみ直した。下の役者はそのために控えていたのか。ちゃんと考えられてる。
もうひとつは、先に書いた登場時のポリーの服装のこと。音楽之友社の大作曲家シリーズの第5巻「ガーシュイン」に、この作品の下敷きになった『Girl Crazy』のヒロインを演じた時のジンジャー・ロジャーズの写真が載っていて、ポリーの服装とそっくりなことがわかった。>

『She Loves Me』(1月9日15:00@Blooks Atkinson Theatre)は移った劇場での再見。これについては、#51で触れた。
ところで、そこでジュディ・キューンからダイアン・フラタントニへの主演女優の交替について「不思議」と書いたが、それは、『Sunset Boulevard』について調べる中で一応の解決をみている(#56

 

The Chronicle of Broadway and me #055☆(1993/10)(The Mousetrap)

199310月@ロンドン(その1

初めてのロンドン。KLMで飛んだ。アムステルダム経由。たぶんノースウェストのマイレージで。
ヒースロー・エクスプレスはまだなく(開業は1998年)、地下鉄で市内に向かった。
宿泊はチャリング・クロス駅併設の現アンバ・ホテル・チャリング・クロス。当時は単にホテル・チャリング・クロスだった気がするが確信はない。土地鑑がなく、交通手段の塩梅もわからなかったので、とりあえず目当ての劇場の近くで選んだ。古風な作りで、広めのバスルームに猫足の細長いバスタブが置いてあり、シャワーがなかった。今では改装されていることだろう。

観劇の目玉はパティ・ルポン主演の『Sunset Boulevard』。が、ネット予約の時代は訪れておらず、到着後チケット入手に苦労することになる。まだロイド・ウェバーの名前でチケットが売れていた、と言うか、ロイド・ウェバー最後の(売れ行き上での)人気作と言ってもいいだろう。
観劇リストは次の通り。

10月26日 14:45 The Mousetrap@St.Martins Theatre West ST, Cambridge Circus, WC2H 9NH
10月26日 19:30 Carousel@Shaftesbury Theatre Shaftesbury Ave, WC2H 8DP
10月27日 15:00 Lust@Haymarket Theatre Haymarket, SW1Y 4HT
10月27日 20:00 Sunset Boulevard@Adelphi Theatre Strand, WC2E 7NA
10月28日 15:00 Crazy For You@Prince Edward Theatre Old Compton St, WC2N 5DE
10月28日 20:00 A Slice Of Saturday Night@Strand Theatre Aldwych, WC2B 5LD
10月29日 17:30 Buddy@Victoria Palace Theatre Victoria St, SW1E 5EA
10月29日 20:30 Hot Stuff@Cambridge Theatre Earlham St, WC2 9HU
10月30日 14:30 Joseph And The Amazing Technicolor Dreamcoat@London Palladium Theatre Argyll St, W1V 1AD
10月30日 19:30 Pickwick@Sadler’s Wells Theatre Rosebery Ave, EC1R 4TN

観られなかったのが、この年に幕を開けた『Grease』。<ロンドンで最も手に入りにくかったチケットは、ロイド・ウェバーの『Sunset Boulevard』を抑えて、なんとリヴァイヴァルの『Grease』。初演にはなかった映画版の曲も加えられ、主演に、TVのアイドル的スター、クレイグ・マクラクラン、歌手のデビー・ギブソンを据えての公演。チケット売れ行き好調の一因は、このキャストにもあるらしい。>と当時書いている。
1999年まで続いているが、結局観なかった。オーケストラ・ボックスが舞台上で浮かび上がったり(?)、レーザー光線が飛び交ったり、という派手な演出だったようだ。

<曇天続き、肌寒い日々>だった初のロンドンでの観劇記は、次回『Sunset Boulevard』からスタートだが、ミュージカルじゃないThe Mousetrap(邦題:ねずみとり)について、当時の感想から、ひと言。

<41年目という大ロングランのアガサ・クリスティのミステリー・プレイ。ここまで長くやってると話の種の観光名所化は必然。
内容は、ある冬のこと、山荘に人々が集まり……。おっといけない。カーテン・コールで出演者から、劇場を出たら口を閉ざしてくれと頼まれたのだった。>

66周年を超えて続演中なので、約束は守る(笑)。

The Chronicle of Broadway and me #027★(1992/May/Jun.)(Catskills On Broadway/Death And The Maiden/Lost In Yonkers/A Streetcar Named Desire)

★1992年5月~6月(その1)

6度目のブロードウェイは1992年5月の終わりから6月にかけて(36歳)。

1992年は、4月にロスアンジェルス暴動が起きている。てことは、ダウンタウン(マンハッタン)を歩いていて「コリアン、ゴー・ホーム!」とアフリカン・アメリカンから言われたのは、この年の渡米時か。
同じ4月にボスニア・ヘルツェゴビナ紛争が始まっている。その流れで言うと、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の解体も4月。
のんきな方面では、やはり4月に、ユーロ・ディズニーランド(現ディズニーランド・パーク、通称ディズニーランド・パリ)が開園している。
10月にルイジアナ州バトンルージュで日本人留学生射殺事件。「Freeze!」ってやつ。撃ったアメリカ人は刑事裁判では無罪になったが、実は銃マニアで、民事裁判では殺意が認められて賠償命令が下されている。
11月、ビル・クリントンがアメリカ大統領選挙に勝利。12月、金泳三が韓国大統領選挙に勝利。

国内では、1月に共和汚職事件絡みの受託収賄罪でで阿部文男衆議院議員が逮捕、10月には東京佐川急便事件が暴かれていく中でヤミ献金を受け取ったとされる金丸信が衆議院議員辞職、と、現安倍政権下なら逃げきったであろう政治家の背信行為に、世論を背景にした審判が下されている。
さくら銀行、あさひ銀行という、すぐに消えることになる新社名が登場したのも、この年。バブル崩壊に関わりなくCI(コーポレートアイデンティティ)ブームは続いていたわけだ。ちなみに、大蔵省発表によれば、9月末段階での都市銀行の不良債権総額は12.3兆円とか。
ミュージカル好きとしては、いずみたく(5月)、中村八大(6月)の逝去も挙げておきたい。世間的には、尾崎豊(4月)と長谷川町子(5月)だろうが。
ハウステンボス開業はバブルの余韻か。風船おじさん消息不明、なんてニュースもあった。

ブロードウェイはこの年、アメリカ勢の復調で盛り上がる。

観劇リストは次の通り。

5月25日 20:00 Five Guys Named Moe@Eugene O’Neal Theatre 230 W. 49th St. ★
5月26日 20:00 Miss Saigon@Broadway Theatre 1681 B’way
5月27日 14:00 Catskills On Broadway@Lunt-Fontanne Theatre 205 W. 46th St. [V]
5月27日 20:00 Jelly’s Last Jam@Virginia Theatre 245 W. 52nd St. ★
5月28日 20:00 The Most Happy Fella@Booth Theatre 222 W. 45th St. ★
5月29日 20:00 Crazy For You@Shubert Theatre 225 W. 44th St. ★
5月30日 14:00 Death And The Maiden@Brooks Atkinson Theatre 256 W. 47th St. [P]
5月30日 20:00 Falsettos@Golden Theatre 252 W. 45th St. ★
5月31日 15:00 Man Of La Mancha@Marquis Theatre 1535 Broadway ★
5月31日 19:30 Forever Plaid@Steve McGraw’s 158 W. 72nd St. [off]
6月 1日 20:00 Guys And Dolls@Martin Beck Theatre 302 W. 45th St. ★
6月 2日 20:00 Lost In Yonkers@Richard Rodgers Theatre 226 W. 46th St. [P]
6月 3日 14:00 A Streetcar Named Desire@Barrymore Theatre 243 W. 47th St. [P]
6月 3日 20:00 The Will Rogers Follies@Palace Theatre 1546 B’way

勤めていた会社の“リフレッシュ休暇”制度の適用で、なんと11泊。この“輝かしい”年に長期滞在できたのはツイていた。

末尾のマークの意味は次の通り。★が1991/1992シーズンの新登場ブロードウェイ・ミュージカル。無印はそれ以前からのロングラン・ミュージカル。[off]はオフ・ブロードウェイ・ミュージカル。[P]はプレイ。[V]はヴァラエティ・ショウ。

とりあえず、ミュージカル以外をざっと。

『Catskills On Broadway』。キャッツキルはニューヨーク市から内陸部を北上していったところにある保養地で、その地のホテルに出演する名のある芸人がブロードウェイにやって来た、という趣向。なので、いろんな芸が観られるのを楽しみにしていたが、基本は話芸。マリリン・マイケルズ(Marilyn Michaels)という人の歌マネの一部以外はまるでわからず、爆笑の渦の中で孤独を味わう。唯一わかったのが、出演者の一人が、親戚が失業して東京に行ったという話をした後で「日本人のお客様、あなたの国へようこそ」と言った皮肉。そういう時代だった。
ちなみに、マイケルズのバーブラ・ストライサンドの歌マネはちょっと見もの。ネットに多数上がっている。

『Death And The Maiden』はアリエル・ドーフマンの新作戯曲。邦題『死と乙女』。長い独裁政権が終わって民主化された直後の、とある国。夫婦と行きずりの医師の3人による、過去の疑惑をめぐるミステリアスなサスペンス劇で、内容は言わぬが花。タイトルはシューベルトの同名歌曲から採られている。出演者は、グレン・クロース、リチャード・ドレイファス、ジーン・ハックマン。映画で知る有名俳優を観たかったわけだ。演出マイク・ニコルズ。

『Lost In Yonkers』は、#26にも書いたが、ニール・サイモンの新作で前シーズンのトニー賞作品賞受賞作。その他に、主演女優賞、助演女優賞、助演男優賞も受賞したが、観た時には3人とも去っていた。その内の1人がケヴィン・スペイシー。ノスタルジックな人情劇だということはわかるが、機微がわからないので、相変わらず豚に真珠。演出ジーン・サックス。
なお、このシーズンにもサイモン×サックスの新作『Jake’s Women』が幕を開けたが、そちらは半年ちょっとで幕を下ろしている。

『A Streetcar Named Desireは、ごぞんじテネシー・ウィリアムズの有名作。邦題『欲望という名の電車』。アレック・ボールドウィンとジェシカ・ラングという、これまた有名俳優目当て。筋は知っていたんで、おおよそは理解できた。当時の感想に「ジェシカ・ラングは、役柄のせいもあるが、鬼気迫っていた。」と書いてある。演出はグレゴリー・モッシャー。プロデュースにサントリーが参画。

楽しいミュージカル群は次回以降に。

ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ@東京芸術劇場シアターイースト 2018/07/10 18:00

IMG_0688国会記者クラブの腐敗を描いた作品。作・演出/永井愛。良作、力作であり、役者は皆好演であることを前提に、以下、感じたことだけを書く。

国会記者会館。国会議事堂前駅を出たところにある、あそこ。東日本大震災に伴う原発事故以降、その前に並んで何度も声を上げた、あそこ。会館を出入りする記者たちは並んでいる人間に対して一様に無関心に見えた。その屋上が、この芝居の舞台。
客席の空気が緩い。半分ぐらいは、そこで笑うか? というところで緩く笑う。歌舞伎座とあまり変わらない。自分はと言うと、ほとんど笑わなかった。おかしくないわけではない。が、笑う気にならない。明らかにギャグとして用意されている場面もあるが、息抜きであって笑って欲しいわけではないのではないか、と思ったりする。
記者たちの世間ずれしたエリート意識やずる賢さや優柔不断さは巧みに描かれていて見事だが、それに対する安田成美演じるネットメディアの記者のまっすぐな人の良さが気になる。そこが現実より半歩遅れている気がする。彼女の側にも深い戦略があり、それが記者クラブとの戦いでどういう事態を引き起こすのか、というところまで観たかった。ないものねだりかもしれないが。
次作にさらなる期待。

[Tony2018] Harry Potter And Cursed Child(part one & two)@Lyric Theatre(214 W. 42nd St.) 2018/06/03 14:00 & 19:30

IMG_0651ミュージカルじゃないんで当初は観るつもりはなかったのだが、期間限定の『The Beast In The Jungle』を観るための渡紐を決めて時間に余裕ができたので、それならと、トニー賞の振付賞ノミネーションが気になったこの作品を観ることにした。が、そこからが一苦労。おいそれと取れるチケットじゃなかった……って話は追って。

以下、ひと月ほど前にMen’s Preciousのサイト(https://precious.jp/list/mensprecious/)に書かせていただいた原稿を若干改訂して載せます。

ニューヨーク演劇界のトニー賞に当たるのが、ロンドンのオリヴィエ賞。昨年、同賞の11部門でノミネートされ、作品賞を含む9部門で受賞という過去最高の記録を打ち立てたのが『Harry Potter And The Cursed Child』(邦題:ハリー・ポッターと呪いの子)だ。
そのロンドンのオリジナル・キャストから7人が今回のブロードウェイ・プロダクションに参加。主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞を受賞した3人(ハリー・ポッター役ジェイミー・パーカー、ハーマイオニー・グレンジャー役ノーマ・ドゥメズウェニ、スコーピアス・マルフォイ役アンソニー・ボイル)はそろってやって来ていて、トニー賞の同じカテゴリーで3人とも再び候補になった。なかでもアンソニー・ボイルは素晴らしい。結局、トニー賞では計10部門でノミネート、作品賞を含む6部門で受賞。この結果を受けて、チケット争奪戦にはさらに拍車がかかるだろう。

ネットの一部ではミュージカルとして紹介されていたりもするが、ミュージカルではない。誰も歌わないし、純粋なダンスもない。けれども、ミュージカル的に楽しむことのできる舞台ではある。
それを証明するように、ストレート・プレイとしては例外的に、オリヴィエ賞でもトニー賞でも振付賞の候補となっている。場面の変わり目での音楽や効果音に合わせた役者たちの動きが、さながら群舞のように目を惹くのだ。同時に、音楽(イモージェン・ヒープ)も魅力的。
加えて魔法の表現。題材から言って魔法がどんなふうに出てくるのか興味が湧くかと思うが、その手法が多彩。文字通りマジシャンのテクニックを使ったものから、歌舞伎の早替わりを思わせるものまで、様々な形でアッと言わせてくれる。もちろん高度な映像技術も含め機械的手法も使われるが、むしろ人力が主であり、その辺りが逆に驚きを大きくしていて面白い。同じ劇場でやっていた『Spider-Man:Turn Off The Dark』が空しく劇場内を飛び回るだけだったのと対照的だ。
パート1とパート2に分かれているので、両方観ると半日がかりの観劇になるが、それだけの価値は充分にある。
話の内容は、大人になったハリー・ポッターと魔法学校に入った息子との父子の葛藤を軸にした物語。時間を行き来する冒険の中で、過去の様々な人物や事件が伏線として登場するという、シリーズのファン向けの楽しみも多く準備されているが、全く知識がなくても、それなりに楽しめる作りにもなっている。ちなみに、ロンドン版開幕後に、ジャック・ソーンとジョン・ティファニーの書いた脚本を元にした本が正式にシリーズ最新作として出版され、日本語版も出ているので、予習されたい方はそちらを(前述の邦題は、その本のタイトル)。

さて、チケットの入手方法だが、通常のルートで買おうとすると最終的にチケットマスターのハリー・ポッター特別サイト(https://harrypotter.ticketmaster.com/)に行き着く。もちろん、ここですんなり買える場合は問題ない。ところが、これがなかなかうまくいかない。パート1、パート2があって、セットでまとめ買い、別々に選んでまとめ買い、全く別々に買う、という選択肢の設定が複雑なせいではないかと思うが、とにかく先に進めない。オンライン・チケット売り出し初日の申し込み開始直後のような状態になる。ここで挫折するというのが現状。
そこでオススメするのが、BROADWAY.COM(https://www.broadway.com/)で購入するという方法だ。こちらは比較的すんなり買える。結局20%程度の手数料を取られることになるが、普通に買っても手数料は取られるので、そこは目をつぶりたい。お試しあれ。

なお、BROADWAY.COMで予約した場合、チケット受け取りの窓口が異なるので注意が必要。通常はリリック劇場の42丁目側の入口にあるボックス・オフィスで受け取るが、BROADWAY.COMで予約したチケットは、裏側にあたる43丁目側の入口で受け取り、そこから入場することになる。間違えて慌てないよう、ご確認を。