[Tony2019] Head Over Heels@Hudson Theatre(141 W. 44th St.) 2018/07/31 19:00

IMG_0717予備知識としては、ゴー・ゴーズの楽曲を使った中世のイギリスが舞台のジュークボックス・ミュージカル。でもって、脚本が『Avenue Q』のジェフ・ウィッティ、演出が『Spring Awakening』初演版のマイケル・メイヤー。さて、どんな仕上がりか。

ひと言で言うと、『夏の夜の夢』(Midsummer Night’s Dream)をモンティ・パイソン風味にしたようなLGBTQミュージカル。実は、話の大元は16世紀のイングランドの詩人フィリップ・シドニーの『Arcadia』だとプレイビルには書いてあるのだが、みなさんご存知ないだろうし、こちらもよく知らないので、シェイクスピア作品のイメージでお茶を濁させていただく。
とある王国を舞台に、身分や性別を超えたラヴ・ストーリーが複数展開し、紆余曲折を経てハッピー・エンドで終わる。それだけの話だが、“身分や性別を超え”る辺りに“今”の価値観が盛り込まれているのがキモで、登場人物の魅力的な個性と相まって、退屈せずに観ていられる。『Avenue Q』や『Spring Awakening』の衝撃を期待すると肩透かしかもしれないが、悪くはない。
最も盛り上がるのが、第二幕中盤の「Heaven Is A Place On Earth」をバックにノリノリに展開する王と王妃の愛欲影絵シーン、ってことからもわかるように、けっこう俗っぽくセクシャルでもあり、その辺は好みが分かれるかも。
ちなみに、同曲はゴー・ゴーズではなくリード・ヴォーカルのベリンダ・カーライルのソロ・ナンバー。楽曲はいずれも場面とうまく合ってはいるが、全体的にはゴー・ゴーズの楽曲である必然性が薄い気がするのが弱点か。フェミニズムの線を狙ったのだろうが、やはりオリジナル楽曲が欲しかった気がする。

役者では、王の副官の娘役テイラー・イマン・ジョーンズがいきいきした演技で光る。
これがブロードウェイ・デビューとなる、王の豊満な娘役ボニー・ミリガンも、これを機に注目されるだろう。
事実上の主役である、とぼけた羊飼い役アンドリュー・デュランドは実に達者。
そして王妃役は、いつまでも若々しいレイチェル・ヨーク。
ドラック・クイーンとして知られるペパーミントも、これでブロードウェイ・デビュー。

入りが芳しくないらしいので、気になる方はお早めに。

 

 

[Tony2019] Pretty Woman: The Musical@Nederlander Theatre(208 W. 41st St.) 2018/07/30 20:00

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ヒットした同名映画の舞台ミュージカル化だが、舞台ならではの面白さがあって、ありがちな移植作に留まらない、いい作品になっている。一見の価値あり。

ということで、これからご覧になる予定の方は、ここから先は観劇後に読まれることをオススメします。

映画版の脚本家J・F・ロートンと、監督だった(日本ではゲイリーで通っている)ギャリー・マーシャル(2016年7月逝去)が共同で舞台用に脚本を手直ししている。
話は基本的に映画と同じ。一点違っているのは、ハッピー・マンという狂言回しが出てくること。ホームレスのような扮装で町中に登場し、主要な舞台となる高級ホテルでは衣装を替えて支配人となるこの男、ここぞというタイミングで現れて、主人公カップルの出会いから結末までを差配する神のごとき存在。彼がいるおかげで、出来すぎのストーリーも笑いながらすんなり飲み込める。
あ、話はごぞんじですよね? 遣り手実業家と娼婦とのバブル風味恋物語@ロスアンジェルス。

その狂言回しも舞台ならではの面白さの一つだが、この舞台版のキモは第2幕のオペラの場面にある。
主人公カップルが『La Traviata』(椿姫)を観にいき、オペラの主人公ヴィオレッタの悲劇に激しく感情移入するヒロインを見て、クールな遣り手実業家の心が動く。主人公たちの境遇とオペラのストーリーとが似ていることもあり、映画では、どちらかと言えば論理的にアタマで「なるほど」と理解する場面。
ここに舞台版は力点を置いた。歌える男女の役者を据え、前面に立ててオペラの歌を聴かせる場面に仕立てたのだ。観客は、ヒロインと同視線で、あるいはヒロインの感情移入がどうこうの前に単純に観客として、彼らの歌唱にグッとくる。この場面の充実ぶりで舞台作品として格が一段上がった。
ヴィオレッタ役がアリソン・ブラックウェル、相手のアルフレッド役がブライアン・カリ。ことにブラックウェルは素晴らしい。このクラスの歌い手がアンサンブル兼任で出演している辺りがブロードウェイの凄さ。

ちなみに、このミュージカルには映画で使われたロイ・オービソンの「Oh, Pretty Woman」は登場しない。楽曲は、オペラ以外は全て、ブライアン・アダムスと盟友ジム・ヴァランスのカナディアン・コンビが2年かけて書き下ろしている。楽曲に関しては真っさらの新作だ。それも楽しみの一つ。
さらに、演出・振付が、『La Cage aux Folles』『Kinky Boots』でトニー賞振付賞を受賞しているジェリー・ミッチェルだけに、ダンス・ナンバーもふんだん。盛り上がる。

役者で光るのは、懐の深いハッピー・マン役のエリック・アンダーソンと、その部下的な存在(天使?)の、ダンスが達者でユーモラスなホテル従業員ジウリオ役トミー・ブラッコ。
ヒロイン役のサマンサ・バークスは映画版『Les Miserables』でエポニーヌを演じて注目を浴びた人。イギリス出身だけにウェスト・エンドを中心に活躍してきていて、これがブロードウェイ・デビュー。充分に魅力的。
相手役のアンディ・カールは、看板役者となった『Rocky』『Groundhog Day』が内容的にも興行的にもイマイチだっただけに、ようやく当たりをつかんで喜びも一入(ひとしお)だろう(と感情移入してみる)。
ヒロインの親友役で活躍するオーフェは実人生ではアンディ・カールの連れ合い。

正式オープンの8月16日を前に、チケット売れ行き好調のニュースが流れている。興味のある方はお早めに。

[Tony2019] Gettin’ The Band Back Together@Belasco Theatre(111 W. 44th St.) 2018/07/29 19:30

IMG_0725ひと言で言えば、『The Full Monty』『Something Rotten!』の趣き。『School Of Rock』も加えたいところだが、楽器演奏はあちらの子供たちの方が上(判断には出演者の年齢差による不均衡の是正があります)。70年代後半から80年代にかけてのアメリカン・ロックと能天気なギャグが好きなら、けっこう楽しめる。

マンハッタンの会社をクビになった男が、母親の住むニュージャージーの実家に帰って来る。そこは相変わらず時間が止まったように無気力な町。そんな中、ただ一人燃えているのが、今もバンドを続ける、かつてのライヴァル。若い頃バンド合戦で主人公のバンドに獲られた優勝トロフィ奪還のため、手を回して彼の実家を借金のかたに差し押さえ、その解消を条件に再度バンド合戦で雌雄を決しようと迫る。
……という発端からしてフザケている。これに、主人公の恋人だった魅力的な女性が今はライヴァルと付き合っている、という出来すぎのネタが絡んで展開する話には、シリアスな要素はほとんどない。まあ、あるとすれば中年男の悲哀、か。

で、どこが『The Full Monty』かと言うと、昔のバンド仲間を再集結させる辺り。それぞれに悩みを抱えた、もう若くない男たちが、いろいろ乗り越えてバンド合戦に挑む。とはいえ、『The Full Monty』ほどの哀感はない。
どこが『Something Rotten!』かと言うと、ロックやミュージカルの小ネタが随所に挟まれてパロディ色が強くなっているところ。
いずれにしても、脇役たちのおかしなキャラクターと細かいギャグの積み重ねで出来上がっている作品。そこは面白い。
ちなみに、観た回は日曜夜だったこともあり、主人公役がミッチェル・ジャーヴィスではなく、いつもはスウィングのスコット・リチャード・フォスターだった。それもあって脇役の方が目立ったのかもしれないが。ともあれ、ジャーヴィスには悪いがトニー賞で主演男優賞候補にならないことを祈りたい。確認のために彼の出る回を観る、ってのは厳しいので。

作曲・作詞のマーク・アレンは、これがブロードウェイ・デビュー。
脚本を手がけているのは、プロデューサーでもあるケン・ダヴェンポートとグランドルショッツと名乗るライター集団てのが珍しい。