[Tony2019] Kiss Me, Kate@Studio 54(254 W. 54th St.) 2019/03/03 15:00

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『The King And I』(王様と私)でこの夏来日するケリ・オハラが主演のリヴァイヴァル『Kiss Me, Kate』が2月14日にブロードウェイに登場。楽しい仕上がりです。

感想はこちらで。間もなく追記されると思いますが、記事中「6月2日まで」となっている上演期間が、6月30日まで延長されました。

[Tony2019] Be More Chill@Lyceum Theatre(149 W. 45th St.) 2019/02/28 20:00

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『Be More Chill』については、昨年83日のオフ版観劇後に書いた紹介記事が、MEN’S Precious WEBに上がっているので、とりあえずは、その転載から始めさせていただく(8月23日公開/前半省略/小見出し込み)。

Be More Chill』体験はニューヨーカーにとって事件

ブロードウェイの新作以上にニューヨークのミュージカル・ファンの間で話題になっているのが、オフ・ブロードウェイの『Be More Chill』。42丁目にあるパーシング・スクエア・シグニチャー・センター内アイリーン・ダイヤモンド・ステージでプレヴューを開始したのは7月26日だが、それ以前から気運は高まっていたようで、6月8日には同劇場で、ファン・ミーティングのような集会がスタッフやキャストも参加して開かれている。
観劇にあたっては、まだプレヴュー中の8月3日のチケットを6月16日に予約したのだが、脇の席がかろうじて取れる状況だった。なので、これは人気なのだなと思いはしたが、いざ劇場に行ってみると開演前から予想以上の熱気。もちろん満席で、デザイン違いで数種類売られているTシャツやパーカーをあらかじめ着込んだ観客がけっこういるのがコンサート会場のよう。
客電が落ちると歓声が湧くのは、どの劇場でもそうだが、主要キャストが登場した時の騒ぎは驚くほどすごい。例えて言うと、『Hello, Dolly!』のベット・ミドラー登場時のよう。そんな表現が大げさでないくらいに盛り上がる。しかも、どの役者がどのタイミングで出てくるかを観客の半分ぐらいはわかっている様子。リピーターもいるのか? 熱気を冷ます気分で幕間にロビーに出てみると、早くも物販のレジには長蛇の列ができている。そうした諸々を見て、この舞台を体験することは、もはや“事件”になっているのだなと思わずにはいられなかった。

めざすのは『Dear Evan Hansen』超え?

ニュージャージーの“普通”の学校に通う目立たない高校生ジェレミーが、非合法ぽく売られている日本製の近未来的ネット系(?)ドラッグのおかげでモテモテになるが、有頂天になって唯一の親友を失い、やがて自己崩壊の危険にさらされ始め……というのが大筋。驚くような斬新な話ではないが、個性的な脇役たちの言動や風俗的ディテールが“今”を感じさせる。
物語を支えるジョー・イコニス(作曲・作詞)の楽曲は、ひと言で言えば、エレクトロニクス風味のパワー・ポップ。新鮮な仕上がりで、ミュージカル的魅力の核心になっている。
実は、この作品、2015年6月にニュージャージーのトゥー・リヴァー劇場という小劇場で初演されている。それが好評だったようで、ニューヨーク・タイムズには「オタクがSci-Fiピルで人気者になる『Be More Chill』」という見出しで長い劇評が載り、10月にはキャスト・アルバムもリリースされている。元になった2004年の同名小説もカルトな人気を得ているようだが、著者のネッド・ヴィジーニが2013年に自殺していることも、潜在的にミュージカルの人気を押し上げている要因の一つなのかもしれない。
そうした下地があった上で、ニューヨーク進出に当たっては、主役に、昨年のトニー賞作品『Dear Evan Hansen』のオリジナル・キャストで主人公の親友を演じたウィル・ローランドを起用。『Dear Evan Hansen』はシリアス、『Be More Chill』はコミカル、と風合いは真逆だが、引っ込み思案の高校生、ネット世代の世界観、エレクトロニクス風味の音楽、といった要素は共通しているわけで、このキャスティングが先行作のファン層を取り込もうという戦略なことは明らか。そして、それは成功しているように見える。
とりあえず9月23日までの限定公演としてスタートしたのだが、すでに1週間の延長が発表されている。この後さらなる延長があるのか。それとも『Dear Evan Hansen』のようにブロードウェイに舞台を移すのか。いずれにしても目が離せない注目作だ。>

9月に入って、これに、<予想通りブロードウェイに移ることが発表された。来年の2月13日にプレヴュー開始予定。>と追記している。

お気づきかと思うが、実はあまり誉めてはいない。すんなり胸に入ってくる作品ではない。オンに移った舞台を観返しても同じ印象。
その原因の一つは、全体を覆うダウナーな雰囲気にある。ドラッグを扱っているからということもあるが、それ以上に、「日本製のSci-Fiピル」というイメージの向こうに浮かぶ画一的で無個性な終末的世界観が思いのほか強く伝わってきているから。……と考えるのは、こちらが酷い状況下で暮らしている日本人なせいか。
最終的には、全世界に及んでいるかに見えたピルの影響から全員が逃れ、主人公ジェレミーも対立していた父親や元親友マイケルと和解して一応のハッピーエンドを迎える。が、そこに“取って付けた”感がないわけではなく、あまりすっきりはしない。
この作品の救い、あるいは魅力の核心は、ジェレミーが思いを寄せるクリスティーンのキャラクターにある。彼女の、他者と競わないし争わない、かといって迎合もしない、そして自分の人生の楽しみ方を確信しているような存在のしかたが、右往左往しがちで不安定な登場人物たちの中で際立って独立して見える。変身後の主人公ジェレミーのアンチな存在となる親友マイケルですら、クリスティーンの存在感には及ばない。彼女がいなければ、この作品そのものが、けっこう薄っぺらいものになっていた可能性すらあると思う。だからこそ、彼女までもがドラッグに侵されているのがわかった時の衝撃が大きい。
クリスティーンですら抗えなかった「日本製のSci-Fiピル」の威力は本当に衰えたのか。それとも第二波がやって来るのか。その辺りを掘り下げずに中途半端に終わる薄気味悪さが、この作品にはつきまとう。狙った薄気味悪さではなく。それが弱点ではないか、というのが個人的見解。。
ちなみに、クリスティーン役のステファニー・シューが素晴らしい。トニー賞を獲ってもおかしくないだろう。

[Tony2019] Ain’t Too Proud@Imperial Theatre(249 W. 45th St.) 2019/03/02 20:00

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ザ・テンプテーションズの伝記的ミュージカル『Ain’t Too Proud』が2月28日からプレヴュー開始。楽しく観ました。こちらに記事がアップされたので読んでください。

そこに書かなかったことを、ひとつ。周辺が小声のシングアウト状態になりがちです。そこは寛容の心で一緒に楽しみましょう。けっこう見事なバック・コーラスを付ける人たちもいました(笑)。

[Tony2019] Head Over Heels@Hudson Theatre(141 W. 44th St.) 2018/07/31 19:00

IMG_0717予備知識としては、ゴー・ゴーズの楽曲を使った中世のイギリスが舞台のジュークボックス・ミュージカル。でもって、脚本が『Avenue Q』のジェフ・ウィッティ、演出が『Spring Awakening』初演版のマイケル・メイヤー。さて、どんな仕上がりか。

ひと言で言うと、『夏の夜の夢』(Midsummer Night’s Dream)をモンティ・パイソン風味にしたようなLGBTQミュージカル。実は、話の大元は16世紀のイングランドの詩人フィリップ・シドニーの『Arcadia』だとプレイビルには書いてあるのだが、みなさんご存知ないだろうし、こちらもよく知らないので、シェイクスピア作品のイメージでお茶を濁させていただく。
とある王国を舞台に、身分や性別を超えたラヴ・ストーリーが複数展開し、紆余曲折を経てハッピー・エンドで終わる。それだけの話だが、“身分や性別を超え”る辺りに“今”の価値観が盛り込まれているのがキモで、登場人物の魅力的な個性と相まって、退屈せずに観ていられる。『Avenue Q』や『Spring Awakening』の衝撃を期待すると肩透かしかもしれないが、悪くはない。
最も盛り上がるのが、第二幕中盤の「Heaven Is A Place On Earth」をバックにノリノリに展開する王と王妃の愛欲影絵シーン、ってことからもわかるように、けっこう俗っぽくセクシャルでもあり、その辺は好みが分かれるかも。
ちなみに、同曲はゴー・ゴーズではなくリード・ヴォーカルのベリンダ・カーライルのソロ・ナンバー。楽曲はいずれも場面とうまく合ってはいるが、全体的にはゴー・ゴーズの楽曲である必然性が薄い気がするのが弱点か。フェミニズムの線を狙ったのだろうが、やはりオリジナル楽曲が欲しかった気がする。

役者では、王の副官の娘役テイラー・イマン・ジョーンズがいきいきした演技で光る。
これがブロードウェイ・デビューとなる、王の豊満な娘役ボニー・ミリガンも、これを機に注目されるだろう。
事実上の主役である、とぼけた羊飼い役アンドリュー・デュランドは実に達者。
そして王妃役は、いつまでも若々しいレイチェル・ヨーク。
ドラック・クイーンとして知られるペパーミントも、これでブロードウェイ・デビュー。

入りが芳しくないらしいので、気になる方はお早めに。