★2019年2月~3月@ニューヨーク(その5)
『Chick Flick: The Musical』(2月26日19:30@West Side Theatre(Upstairs))について書いた観劇当時の感想(<>内)。
<タイトルの「Chick Flick」とは、「女子向け映画」(日本版ウィキペディア)、「女性受けを狙ったラブコメ映画」(weblio)を指す。若干の揶揄を感じるが、それを逆手にとってのタイトルか。
設定は、「ラブコメ映画」好きの女性4人がアパートメントに集っての飲み会、という体(てい)。
結論を先に言えば、平均点の仕上がり。楽し気に集まった、職業も年齢もまちまちな女性たち。実はそれぞれ悩みを抱えていて、それがしだいに露わになり……という展開は常道。
4人のキャラクターは巧みに描き分けられていて、エピソードも豊富で楽しめる。が、破格なところはない。そこに意外性が加われば弾けるのだが、予想を超えないので大きな驚きはない。こちらが観客としてスレているのかもしれないが(苦笑)。
ともあれ、その会話に、よく知られた映画のネタを絡ませるのが、このタイトルを付けた作品ならではの妙味。それに相応しく、ステージを半円状に囲んだ白い壁には、様々な「ラブコメ映画」のポスターもどきが額入りで飾られている。
どう「もどき」かと言うと、デザインは全く同じだけれども少しずつ簡略化されていて、かつ、人物の顔の部分に目鼻口がなく、タイトルは元の書体を似せてあるが全て「Chick Flick」になっている。で、開演前に次々に流される各「ラブコメ映画」のテーマ曲に合わせて、該当する映画のポスターが明るく光る、という趣向がある。
客席に入った女性客たちは、ここですでに鼻歌交じりで盛り上がる。
プロデューサーであるブロードウェイ・ヴェンチャー・キャピタル・ファンド(Broadway Venture Capital Fund)という組織は、プレイビルには、女性によって語られる女性の話にフォーカスしたオリジナル舞台ミュージカル作りを援助するために設立された、とある。なるほど、と、うなづく客層と内容だ。そういう意味では狙い通りの仕上がりとも言える。
作曲・作詞・脚本のスージー・コンは、プレイビルによれば、20代で(本来なら中年に多い)不安障害に陥り、企業のマーケティングの職を離れて、’90年代にはナッシュヴィルでカントリー・ソングを書いていたという。だからと言って、この作品の楽曲がカントリーぽいというわけでもなく、曲調は幅広い。その辺はナッシュヴィルの懐の深さか。ただ、この1曲! という決め手には欠けているが。
4人の役者はそれぞれに経験豊富だが、今回ハマっていたのは、リンゼイ・ニコール・チャンバーズ。シーラという、人が好くて惚れっぽい……つまり、スウィート・チャリティのようなキャラクターを実に魅力的に演じている。ギャグの要にもなっている。一見の価値あり。
前述した壁+ポスターのみならず、小道具の出し入れのアイディアも含め、ジェイソン・シャーウッドの装置が素晴らしい。>
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