City Hunter~盗まれたXYZ~/Fire Fever!@東京宝塚劇場 2021/10/23 15:30

 雪組の新トップ・コンビ、彩風咲奈と朝月希和の大劇場お披露目公演。

 驚いたのは、第2部のショウ『Fire Fever!』の半ば過ぎ、ロケット(ラインダンス)の場面。
 若手だけでなく雪組のほぼ全員が登場(朝月希和も、男役二番手朝美絢もいる)。それだけでも驚きなのだが、ロケットなので、みんながみんな娘役の姿。さらに彩風咲奈までがセンターに登場して(一人だけ男役のまま)横一線に並ぶに及んで、ああ、これは新生雪組の団結のデモンストレーションなんだ、と理解。その大胆な趣向に心の内で快哉を叫んだ。
 そう言えば、第1部でも、舞台上に大人数がワサワサいるシーンがけっこうあった。なるほど、そういうことか。

 なにしろ前任の望海風斗が天才的に芝居のうまい人だっただけに、彼女が抜けた後を危惧する声も少なからず聞いた。自分はと言えば、“先生”方のダメダメな脚本でもなんとか形にしてしまう“生徒”たちの力を信じているので心配してはいなかったが、前任者在籍時とのイメージの落差による、あらぬ低評価というのはあり得るかも、とは思っていた。
 が、杞憂に終わった。
 第1部、第2部を通して、新生雪組色を鮮やかに打ち出し、楽しい公演になった。

 第1部の『City Hunter~盗まれたXYZ~』(脚本・演出/齋藤吉正)は北条司の同名コミックが原作だが、演技の傾向はアニメーション版の影響が強い。そのあたりの感触は、やはり雪組2015年のコミック及びアニメーションの舞台化『ルパン三世~王妃の首飾りを追え!~』(作・演出/小柳奈穂子)に近い。ちなみに、同作は当時の新トップ・コンビ、早霧せいな・咲妃みゆの大劇場お披露目公演だった。偶然だろうか。
 説明しすぎないテンポの早い展開は、原作に馴染みがなくても理解できるスレスレの線かと思うが、結果的には、それでOK。多彩なキャラクターが謎を孕みながら、とっ散らかった末に収まるところに収まって、めでたしめでたし。
 いい加減に見えながらも実は陰影のある主人公を演じて、ストーリー上は肝心なところ以外ではたいして活躍していないにも関わらず求心力を発揮した彩風咲奈は、やはり魅力がある。そして、コミカルかつボーイッシュでありながら憂いも秘めるヒロイン役で、狂言回し的役回りに見えつつ実はドラマの底流を支えた朝月希和の存在感。そこに、チャラいけど不気味さを漂わせた敵味方不明の朝美絢が加わって、トライアングルのバランスもいい感じ。
 ただし、コメディであっても主人公のセクハラは許容されない時代が間近に迫っていることを、劇団は肝に銘じておくべき。

 第2部のショウ『Fire Fever!』(作・演出/稲葉太地)のハイライトは前述のロケット。この東京公演から新たに加わったらしい研一生も含めての80人近い人数によるラインダンスは圧巻。
 その他にも大人数による躍動的な場面が多いと感じたが、どうだろう。
 ほぼノンストップのダンス主体のショウ。そんな中、朝美絢がドン・ジョバンニに扮してオペラっぽく歌うコミカルな場面が異彩を放って面白かった。

 雪組、これからが楽しみ。
 

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