The Chronicle of Broadway and me #658(London Road)

2011年7月@ロンドン(その9)

 『London Road』(7月30日14:30@Cottesloe/National Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<イギリスのサフォーク州で2006年に実際にあった、複数の殺人死体遺棄事件の容疑者が“町内”(ロンドン・ロード)に引っ越してきていた人物だったことで起こる住民たちのドラマで、劇場はナショナル・シアター内の小劇場。
 今年(2011年)4月に同じ劇場で初演されていて、これが再演のようだ。

 演技空間をコの字に囲んだ客席や背後の2階建て構造を使って、小さなコミュニティの空気をうまく表現していた。冒頭、観客を“町内”の集会に来た人々に見立てるのが導入として効果的。
 最大の特徴は、ある種のオペラ形式になった楽曲で、セリフと歌が不即不離に展開していく(作曲・作詞アダム・コーク、脚本・作詞アレッキー・ブライズ)。それが実に精緻に作られているのだが、歌唱も丁寧で、複雑でありながら魅力的な“音楽”として聴こえてくる。
 もちろん、そうやって、絡み合った様々な感情を巧みに観客に伝えているわけだが……あまりに音楽として魅力的で、しばしば眠気を誘われたもので、その辺はちょっと確信がない(笑)。が、役者も演奏者も実にうまかったのは事実。

 現実の事件を丹念に取材して、こうした舞台に昇華しようという、発想と技術と根気が素晴らしい。>

 バンドの編成は、キーボード、ギター、パーカッションのリズム隊に木管が3人。

 演出ルーファス・ノリス。

 出演は、ニック・ホールダー、ニコラ・スローン、ケイト・フリートウッド、ロザリー・クレイグ、ダンカン・ウィズビー、クレア・バート、ハル・ファウラー、ポール・ソーンリー、ハワード・ワード、クレア・ムーア、マイケル・シェイファー。
 彼ら11人が主要な役と同時に(プログラムによれば)他の52の役も演じる。

 ルーファス・ノリス演出の映画版が2015年に公開されている(2022年夏現在、アマゾンのプライム・ヴィデオで観ることができる)。
 全編ロケーションで撮られた映画と小さな劇場の舞台表現とでは、全体の印象は当然のことながら違っているが、ひりひりした空気感は似ているかも。ただし、バックの演奏は編成が違っている。

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