The Chronicle of Broadway and me #934(Cosi Fan Tutte)

2018年3月~4月@ニューヨーク(その6)

 『Cosi Fan Tutte』(3月31日13:00@Metropolitan Opera House/Lincoln Center)はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲のオペラ。台本ロレンツォ・ダ・ポンテ。初演は1790年。

 このフェリム・マクダーモットによる新演出版は、2017/2018シーズンのMETの目玉演目の1つ。後に松竹METライブビューイングでも上映されたが、収録されたのはこの日の舞台。
 上掲写真でわかるように、ケリ・オハラが出演。隣に写っているのはクリストファー・モルトマン。メイン・ヴィジュアルに使われている2人だが、彼らが演じている役は、どちらかと言えば脇。それも、ある意味、悪役。ケリの表情がパブリック・イメージと違っているのは、そのせい。

 とある姉妹と、それぞれの恋人である士官2人。姉妹の”貞節”を試す、というのがドラマの肝で、その話(賭け)を士官たちに持ちかけるのが哲学者ドン・アルフォンソ(モルトマン)。姉妹の恋心を奔放な方向に誘導するためにアルフォンソが手を組んだのが、姉妹付きの小間使いデスピーナ(オハラ)。
 作品のフルサイズのタイトルは「Così fan tutte, ossia La scuola degli amanti」というらしく、訳すと「女はみんなこうしたもの、または恋人たちの学校」。「本作品は19世紀を通じて、内容が不道徳であるとして評価が低く」というウィキペディアにある解説を裏付けるようなタイトルで、ことに前半部分の言い回しは今日的にも物議を醸しそう。
 しかし、実際の舞台には、むしろ、”貞節”を強調(強制)する抑圧的モラルに対する揶揄と感じられる皮肉でユーモラスな空気が横溢している。同じコンビ(モーツァルト/ポンテ)による『Le Nozze Di Figaro』(フィガロの結婚)や『Don Giovanni』(ドン・ジョバンニ)に通底するような。
 この新演出版は舞台設定が1950年代のアメリカのリゾート地になっていて、セット(トム・パイ)も衣装(ローラ・ホプキンズ)も照明(ポール・コンスタブル)もカラフル。そうした要素も”軽薄”な雰囲気を補強している。

 そんな中で、”ちょっと悪いヤツ”デスピーナを嬉々として演じていたケリ・オハラが、やはり印象に残る。
 出演は他に、アマンダ・マジェスキー、セレーナ・マルフィ、ベン・ブリス、アダム・プラヘトカ。

 指揮デイヴィッド・ロバートソン。

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