The Chronicle of Broadway and me #935(Old Stock: A Refugee Love Story/Goldstein/Miss You Like Hell)

2018年3月~4月@ニューヨーク(その7)

 オフの3本をまとめて。
 

 『Old Stock: A Refugee Love Story』(3月31日19:00@Theater A/59E59)は、カナダのシンガー・ソングライターであるベン・キャプランと、彼のバンド、カジュアル・スモーカーズによるコンサート形式のショウ。
 1908年にポグロムを逃れてカナダにやって来たユダヤ系ルーマニア難民の実話を元に構成されているらしい。

 創案者として、キャプランの他に、脚本を書いたハンナ・モスコヴィッチと演出のクリスティアン・バリーの名前がある。
 楽曲作者はキャプランとバリー。例外が3曲あり、それぞれ、ジェフ・バーナー、ダニー・ルーベンステイン、シュロモ・カールバックのクレジットが付いている。
 この年(2018年)に『Old Stock』のタイトルで、舞台とほぼ同じの楽曲が並んだアルバムがベン・キャプラン名義でリリースされていて、配信もされているが、クレズマー色の濃いサウンドは聴き応えがある。

 公式サイトによれば、このショウ自体はバンドのツアー形式で今も続けられているようだ。
 

 『Goldstein』(4月1日15:00@Actors Temple Theatre)も、典型的な苗字であるタイトルからわかるように、ユダヤ人一家の話。
 とあるユダヤ人男性が家族にまつわる回想録を書いたところベストセラーになるが、その中身について家族たちがそれぞれ異議を唱え、様々なことを思い出しながら、やがて和解する。その過程で見えてくるユダヤ人の近代史。
 といった内容だったと思うが、あまり覚えていない。というのも、楽曲も脚本も基本穏やかで刺激が少ない。なので、こちらの事情で恐縮ですが、到着2日目の午後は眠気を催しがち。申し訳ない(苦笑)。

 この作品は、ジュリー・ベンコ(『Funny Girl』)が、リヴァイヴァル版『Les Miserables』にアンサンブル兼コゼットのアンダースタディとして途中参加し、2015年版『Fiddler On The Roof』にスウィング兼複数役のアンダースタディとしてオリジナル・キャスト参加した後に、オフ・ブロードウェイながらメインのオリジナル・キャストとしてクレジットされた、という点で記憶しておきたい。

 作曲・作詞マイケル・ロバーツ(『Golf: The Musical』)。脚本チャーリー・シュルマン。
 演出ブラッド・ラウズ。振付サラ・オグリビー。
 

 『Miss You Like Hell』(4月1日20:00@Newman Theater/Public Theater)は強く印象に残った作品。
 作曲・作詞がシンガー・ソングライターのエリン・マキューン、作詞・脚本は『In The Heights』の脚本を書いたキアラ・アレグリア・ヒューディズ。

 メキシコからの不法移民である母親が、長く離れていた16歳の娘の前に突然姿を現し、旅に誘い出す。アメリカ市民である娘の嘆願があれば強制送還から逃れられるかもしれない、という理由で。孤立感を覚えていた娘は不安を抱きながらも話に乗る。そして始まるフィラデルフィアからカリフォルニアへのクルマの旅。
 途中、様々な人に出会い、様々な体験をする中で、埋めがたいかに見えた母娘の溝も少しずつ縮まっていき……という展開自体に驚くほどのことはないが(ちなみに必ずしもハッピー・エンドでもないが)、世界に目を開いて成長していく娘の心情が、新鮮な楽曲/歌唱と共に表現されるのがが魅力的。
 キアラ・アレグリア・ヒューディズの脚本には、『In The Heights』に通じる問題意識と肯定的な人生観がある。一幕で終わる物足りなさはあるが、温かい後味が残った。

 母親役は『Rent』のオリジナル・ミミとして知られるダフネ・ルービン=ヴェガ(『The Rocky Horror Show』『Bernarda Alba』)。娘役は後に映画版『tick, tick…BOOM!』に出ることになるジゼル・ヒメネズ(『Party People』)。不思議なジョナサン・ラーソンつながり。

 演出レア・デベソネ。振付は『Kimberly Akimbo』のダニー・メフォード(『Bloody Bloody Andrew Jackson』『The Bridges Of Madison County』『Fun Home』『Dear Evan Hansen』)。

The Chronicle of Broadway and me #935(Old Stock: A Refugee Love Story/Goldstein/Miss You Like Hell)” への2件のフィードバック

コメントを残す