The Chronicle of Broadway and me #1047(Chicago[24]/Funny Girl[2])

2022年11月@ニューヨーク(その5)

 『Chicago』(11月23日19:00@Ambassador Theatre 215 W. 49th St.)を観ることにしたのは、オフも含め他の演目が休演だった感謝祭当日の選択肢が『The Phantom Of The Opera』との二択だったから。閉幕をアナウンスしてから再び盛り上がりを見せているらしいファントムだが、半年前に観ていたこともあり、こちらを選んだ。……というのが理由の半分。もう半分は、渡米が(いろんな意味で)できなくなりそうなので、ブロードウェイ版を観るのもこれが最後(かも)、と思ってのこと。
 んなこたぁどうでもいいか(笑)。

 2017年10月以来だから、5年ぶり。
 いやあ、よかった。25周年を迎えて(ってか、ブロードウェイ正式オープンで言っても11月14日に26周年も迎えちゃってますが)再点検が行なわれたかのように、全体が締まって見えた。ロキシー役シャーロット・ダンボワーズとヴェルマ役ラナ・ゴードンを中心に、近年では一番と言いたいぐらいの、いいカンパニー。
 ことにシャーロット・ダンボワーズ。1964年生まれで、1982年18歳の時に『Cats』への途中参加でブロードウェイ・デビュー。以降、観た範囲で言えば、『Jerome Robbins’ Broadway』『Company』『Sweet Charity』『A Chorus Line』『Pippin』と、ほぼダンサー(主体の役者)人生を送ってきているが、中でも、このリヴァイヴァル版『Chicago』には、1999年にロキシー・ハートとして初参加して以来23年以上にわたって繰り返し登場。“中興の祖”と言ってもいいぐらい。オリジナル・キャストだったアン・ラインキングの香りを残しつつも、もはやダンボワーズ型とでもいいたいような魅力的な、愚かしくも可愛いロキシー像を確立している。
 『The Lion King』『Jesus Christ Superstar』と、やはりダンサーとして歩んできたラナ・ゴードンも、2016年以来複数回参加。歌にも迫力があり、溌剌としていて、いい。
 主要キャストは他に、ビリー・フリン役ライアン・シルヴァーマン(『Cry-Baby: The Musical』『Passion』『Side Show』)、ママ・モートン役チャリティ・エンジェル・ドーソン(『Side Show』『Waitress』『Mrs. Doubtfire』)。エイモス役のアイザック・ミズラヒだけが少し物足りないと思ったが、なんと本職はファッション・デザイナーらしい。

 『Funny Girl』(11月24日14:00@August Wilson Theatre 245 W. 52nd St.)は、ジェファーソン・メイズが1人で複数役を演じるというマイケル・アーデン演出の『The Christmas Carol』と最後まで迷った末に観ることにした。迷った理由は、①1度観ているから、②料金がすごく高いから、だが、こちらを選んだ理由は、①「充分に魅力的」と前回の感想に書いたオリジナル・キャストのファニー・ブライス役ビーニー・フェルドスタインの演技が巷で物議を醸したから、②週一で出演しているジュリー・ベンコの回のチケットが入手しやすく比較的安いから。

 いやあ、観てよかった。ジュリー・ベンコ、うまいし、魅力があった。
 声質がバーブラ・ストライサンドに似てるんですね。かと言って、モノマネに聴こえるわけではない。演技も安定しているし、華もある。
 まあ、前日にメイシー感謝祭パレードのオープニングを「Don’t Rain On My Parade」で飾った、週7回ファニーを演じているリア・ミシェル(『Ragtime』『Fiddler On The Roof』『Spring Awakening』)には、それ以上の華があるということなんだろうけど。そのミシェルのTVの全国放送があった翌日に、事情がよくわかっていない観光客の押しかける劇場で事実上の“代役”を演じるベンコの心境やいかに。とか素人は考えてしまいがちだが、そんなことはどこ吹く風とばかりに、この日の(も?)ベンコは生き生きとファニーを演じて観客を大いに湧かせていた。

 いずれにしても、ミシェルもベンコも基本ストライサンド路線。そのことから逆に、ビーニー・フェルドスタインによるファニー・ブライス像がストライサンドのイメージから離れようとする独自路線の追及だったことが改めてわかる。その主演をすげ替えて興行的にうまく行っているということは、このリヴァイヴァルが主演以外はオーソドックスなプロダクションであることも同時にわかる。
 なので、前回感じた作品自体の古さに対する認識は変わらなかった。楽しみましたがね。

 前回の感想に書いていないが、装置がアイディア豊富で面白い(デイヴィッド・ジン)。これも、なぜかトニー賞の候補にはならなかったが(笑)。

 出演者では他に、ファニーの母ミセス・ブライス役ジェイン・リンチからトヴァ・フェルドシュに替わっている。

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