The Chronicle of Broadway and me #853(Waitress)

2016年3月~4月@ニューヨーク(その9)

 『Waitress』(4月3日15:00@Brooks Atkinson Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<原作はエイドリアン・シェリー監督の2007年の同名映画(邦題『ウェイトレス おいしい人生のつくりかた』)。
 主演を務めるのはミュージカル『Beautiful: The Carole King Musical』でキャロル・キングを演じてトニー賞主演女優賞を得たジェシー・ミューラー(『On A Clear Day You Can See Forever』『The Mystery Of Edwin Drood』)。結婚に失敗した女性の話つながり、という流れでもないだろうが、作品全体にフェミニズム的な感触はある(あらすじは省略)。

 楽曲作者のシンガー・ソングライター、サラ・バレリスも、そのあたりに共感したのではないだろうか。いずれにしても、いい楽曲を書いている。
 バレリス本人がこのミュージカルの楽曲を歌ったアルバム(『What’s Inside: Songs From Waitress』)がすでに出ていて、ポップな魅力を感じる仕上がりだが、舞台版では、よりバック・コーラスに重きを置いた編曲になっている印象。音楽だけでなく、舞台全体にアンサンブルも含めたチーム・プレイで見せていこうという方針が強く感じられて、それが作品の色合いと相まって、いい雰囲気を醸し出す。
 ちなみに、プレイビルを見ると、編曲の名義がサラ・バレリス&ザ・ウェイトレス・バンドとなっていて、バレリス以外は実際に舞台上で演奏しているバンドのメンバー(編成は、ピアノ、キーボード、ギター、チェロ/ギター、ベース、ドラムス)。
 このバンド、主人公の勤めるダイナーのハウス・バンド的な印象で舞台上に出ていて、ちょうど『Bright Star』のバンドと似た立ち位置で舞台に溶け込んでいる。でもって、いつも役者たちの動きを見ながら演奏している感じ。そうしたことも、音楽がより親密に感じられる理由の1つなのかもしれない。
 舞台がダイナーなだけに、当たり前のポップ・ミュージックが流れていて、それが人々の心の機微に触れる。そんな普通の人々のミュージカル。新機軸はないが、温かい。

 役者では、熱演のミューラーの他に、ウェイトレス仲間のキミコ・グレンとキアラ・セトル(『Priscilla Queen Of The Desert』『Hands On A Hardbody』『Les Miserable』)も大活躍。トニー賞で助演男優賞候補になったクリストファー・フィッツジェラルド(『Wicked』『Young Frankenstein』『Finian’s Rainbow』『Chicago』)のコメディ演技は文字通り献身的だ。>

 役者は他に、ドリュー・ゲーリング(『On A Clear Day You Can See Forever』)、ニック・コーデロ(『Bullets Over Broadway)、エリック・アンダーソン(『Kinky Boots』『Soul Doctor』『Rocky』『The Last Ship』)、デイキン・マシューズ(『Rocky』)。

 脚本ジェシー・ネルソン。映画脚本は監督のエイドリアン・シェリー自身。
 演出ダイアン・ポーラス(『The Donkey Show』『Hair』『The Gershwins’ Porgy And Bess』『Pippin』『Finding Neverland』)。振付ローリン・ラターロ(『Scandalous: The Life And Trials Of Aimee Semple McPherson』)。

 この作品の楽曲は、今聴いても新鮮。

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