The Chronicle of Broadway and me #753(Beautiful: The Carole King Musical)

2013年11月@ニューヨーク(その4)

 『Beautiful: The Carole King Musical』(11月23日14:00@Stephen Sondheim Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<キャロル・キングの伝記ミュージカルで、まだ10代のキャロルが音楽出版社アルドン・ミュージックに楽曲を持ち込むところから、アルバム『Tapestry』(邦題:つづれおり)ヒット後のカーネギー・ホール・コンサートまでが描かれる。幕開きとフィナーレが、そのコンサートで、間に回想を挟む構成。
 ドラマとしては楽曲作家コンビで夫でもあったジェリー・ゴフィンとの関係がメイン。それと並行して、やはり楽曲作者であるバリー・マンとシンシア・ワイルのカップルも描かれる。
 ゴフィンの、ティーンエイジ・ポップスばかりを書くことに対するコンプレックスと薬物依存とが原因で、2人が離婚することになるのがドラマのクライマックスだが、ゴフィンとキングが知り合って成功していく前半がとても楽しく、脇のマン&ワイルの関係がコミカルに描かれていることもあって、全体の印象は重苦しくはない。音楽業界内部の描き方もさらりとしたもの。

 主演のジェシー・ミューラーは、ハリー・コニック・ジュニア主演の『On A Clear Day You Can See Forever』で1940年代のジャズ歌手を演じて「歌い手としての魅力を充分に発揮」した人。ここでも、必ずしも“そっくりショウ”ではないにもかかわらずキャロル・キングを彷彿させ、かつ、歌を魅力的に聴かせている。
 楽曲アレンジも、あえてオリジナルに忠実にはせず、しかしながらオリジナルを想起させる、という手法が功を奏している。

 キャロル・キングやマン&ワイルの楽曲に興味のない人にどう映るのかわからないが、1950年代後半から1960年代初頭にかけての、ニューヨークが舞台のほろ苦い青春ドラマとして、充分に楽しめるのではないだろうか。>

 観たのがプレヴュー3日目。感想の最後に作品の行く末についての心配がにじんでいるが、そんな必要は全くなく、翌年1月12日に正式オープンした後、2019年10月27日までのロングランを記録している。ミュージシャンの実録“ジュークボックス・ミュージカル”としては『Jersey Boys』に次ぐ成功作となった。

 脚本ダグラス・マッグラス(後に舞台ミュージカルになる映画『Bullets Over Broadway』の脚本家)。
 演出マーク・ブルーニ(『Ordinary Days』『Pipe Dream』)。振付ジョシュ・プリンス(『Shrek The Musical』)。

 出演は他に、ジェリー・ゴフィン役ジェイク・エプスタイン、シンシア・ワイル役はブロードウェイでプレヴューの始まったばかりの『Almost Famous』で主人公の母を演じているアニカ・ラーセン(『Zanna, Don’t!』『All Shook Up』『Miracle Brothers』『Xanadu』『Myths And Hymns』)、バリー・マン役ジャロッド・スペクター、楽曲出版社の経営者ドン・カーシュナー役ジェブ・ブラウン(『Ring Of Fire』『High Fidelity』『Grease』『Romantic Poetry』『Spider-Man: Turn Off The Dark』)、キャロル・キングの母親役リズ・ラーセン(『The Most Happy Fella』)。

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