The Chronicle of Broadway and me #754(Fun Home) & The Chronicle of Broadway and me #811(Fun Home[2])

2013年11月@ニューヨーク(その5)/★2015年4月@ニューヨーク(その2)

 『Fun Home』(11月24日19:00@Newman Theatre/Public Theater)については、1年半後に観たブロードウェイ版(4月1日20:00@Circle In The Square)とまとめて旧サイトに感想を書いている(<>内)。

『Fun Home』は2013年秋にオフで上演された小規模な舞台。それが、そのままブロードウェイへ。
 劇場はブロードウェイでは最小のサークル・イン・ザ・スクエアで、セットや演出(サム・ゴールド)もオフの時と同じ。原作はアリソン・ベクダルの自伝的な同名コミック(“グラフィック・ノヴェル”と表現されている)で、珍しく日本語版も出ている。

 カミングアウトしないゲイであった父親を中心にした自分の家族と友人の物語を、今では自らゲイであることを告白している著者アリソンが娘の視点で描いていく、という内容で、ユーモアと緊張感が同居して不思議に魅力的。ナレーターでもある大人のアリソンの他に、小学生ぐらいのアリソンと高校生ぐらいの年のアリソンも(時には同時に)登場して、話は重層的に描かれる。
 楽曲は、ドラマに自然に溶け込みつつヴァラエティにも富む。子供たちがジャクソン・ファイヴ風に歌う「Come To The Fun Home」等の楽しい楽曲もある。
 作曲のジーニーン・テゾーリは2002年の『Thoroughly Modern Millie』以降コンスタントにブロードウェイに登場している注目の作曲家の1人。『Caroline, Or Change』『Violet』とオフからの移行作が多いのも特徴。
 作詞のリサ・クロンは今作の脚本家でもある。彼女の場合、過去の脚本も自伝的なものが多いらしく、そういう意図での起用だろうが(あるいは彼女の発案か)、成功している。

 役者は計9人という少人数にもかかわらず、5人がトニー賞の候補になった。3世代のアリソン役(若い方から)の、シドニー・ルーカス、エミリー・スケッグズ、ベス・マローン、父親役マイケル・サーヴェリス、母親役ジュディ・キューン。
 確かに、いずれも好演。小さなカンパニーだけに、誰が欠けても成り立たない一体感があった。>

 結局、ブロードウェイ版は、小規模な作品ながらトニー賞でミュージカル作品賞を獲ることになる(他に、楽曲賞、脚本賞、演出賞も)。役者ではマイケル・サーヴェリス(『The Who’s Tommy』『Titanic』『Assassins』『Sweeney Todd』『LoveMusik』『Road Show』『Evita』)が2度目の受賞。
 事実上の主演者ベス・マローンは、『Bingo』という地味な作品でオフに登場した後、『Ring Of Fire』でブロードウェイ・デビュー。オフの『The Marvelous Wonderettes』を経て、この作品でスターになった。2020年にオフで上演された『The Unsinkable Molly Brown』での好演も印象に残る。
 なお、上記5人の主要キャストの内、真ん中のアリソン役をオフで演じたのはアレグザンドラ・ソチャ(『Spring Awakening』『Death Takes A Holiday』)。ブロードウェイ版のエミリー・スケッグズはそのアンダースタディだった。

 振付ダニー・メフォード(『Bloody Bloody Andrew Jackson』)。

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