The Chronicle of Broadway and me #771(Violet)

2014年3月@ニューヨーク(その5)

 『Violet』(3月30日19:30@American Airlines Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<ドリス・ベッツの短編小説『The Ugliest Pilgrim』を原作に、作曲ジーニーン・テゾーリ(『Caroline, Or Change』)、作詞・脚本ブライアン・クロウリィで舞台ミュージカル化。1997年春にオフのプレイライツ・ホライズンズで1か月弱上演されている(演出/スーザン・H・シュルマン、振付/キャスリーン・マーシャル)。今回の舞台(演出/リー・シルヴァーマン、振付/ジェフリー・ペイジ)は、シティ・センターの短期間上演“アンコールズ!”のオフ・センター・シリーズからブロードウェイへと移ってきた(初演も“アンコールズ!”版も未見)。
 という経緯からもわかる通り、セットもブロードウェイ作品としては簡易で、1幕ものの(ある意味)小品だが、生命力に溢れたドラマで、楽曲も素晴らしい。製作はラウンダバウト劇場。

 アメリカで1964年と言えば、7月に公民権法が成立した年。そんな変動の年に、若い女性ヴァイオレット(サットン・フォスター)が、バスでノース・キャロライナからオクラホマのタルサに向かう。で、ざっくり言うと、子供の頃に父によって傷を負い、頑なな心を持つに到ったヴァイオレットが、そのバスの旅で2人の若い兵士(白人と黒人)に出会い、人生観を変えていく、という話。TV宣教師も登場して、キリスト教の問題も物語に深く関わってくるあたり、アメリカ南部ならではなところもあるのだろう。
 もちろん楽曲にも“アメリカ南部”が強く反映していて、カントリー、ゴスペル色が濃く、カントリーのギター・バンドに弦を絡めた編成によるサウンドは滋味豊か(音楽監督/マイケル・ラフター)。ダンスも、さりげないが的確で、独特の磁場を生み出す。

 サットン・フォスターは、2度目のトニー賞を得た前作『Anything Goes』とは打って変わって、ややエキセントリックな、陰のある、と同時に肯定的な力も秘めた’60年代の若い女性を見事に演じて素晴らしい。
 8月10日までの限定公演(予定)。>

 2人の兵士役が、ジョジュア・ヘンリー(『In The Heights』『The WIz』『American Idiot』『The Scottsboro Boys』『The Gershwins’ Porgy And Bess』『Bring It On The Musical』)と、フォスターとは『Anything Goes』で一緒だったコリン・ドンネル。父親役アレクサンダー・ジェミニャーニ(『Assassins』『Sweeney Todd』『Les Miserables』『Sunday In The Park With George』『The People In The Picture』)。旅で出会う老女/売春婦役アニー・ゴールデン(『Hair』『Leader Of The Pack』『On The Town』『The Full Monty』『Xanadu』『The Shaggs: Philosophy Of The World』)。

 原作小説が出たのは1969年。1981年に『Volet』のタイトルで短編映画が撮られ(監督シェリー・レヴィンソン)、翌年アカデミー賞を受賞している。

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