The Chronicle of Broadway and me#1050(Into The Woods)

2022年11月@ニューヨーク(その8)

 『Into The Woods』(11/26 20:00@St. James Theatre)についての感想。

 『Into The Woods』は、スティーヴン・ソンドハイム(作曲・作詞)史上、最もわかりやすい作品。同時に、最もふざけていて、最も意地悪な第二幕を持つ作品でもある。

 過去に初演版2002年のリヴァイヴァル版を観ているが、今回は、今年(2022年)5月に上演されたシティ・センター「アンコールズ!」からの移植版。
 「アンコールズ!」での好評を受けてのブロードウェイ進出だろうし、実際よくできているが、過去のヴァージョンと比べて特筆すべきところがあるわけではない。さらに言えば、舞台上にオーケストラを配しての「アンコールズ!」版の略式セット(デイヴィッド・ロックウェル)は、いろいろとアイディアを盛り込んで工夫されていて面白いが、物足りなさは残る。
 ではあるが、華のある役者を揃えての上演は楽しかった。
 と同時に、初演開幕から35年、不条理な分断と争いの時代にあって、ただ個人の幸福だけを追い求めていると世界は目に見えない巨人に破壊されてしまうぞ、というこの作品の寓話性を、より強く感じる観劇でもあった。

 脚本・オリジナル演出ジェイムズ・ラパイン。
 演出のリア・デベッソネ(『Takarazuka!!!』)は、これがブロードウェイ・デビュー。振付ローリン・ラターロ(『Scandalous: The Life And Trials Of Aimee Semple McPherson』『Waitress』『Mrs. Doubtfire』)。

 そう言えば、2002年のリヴァイヴァル版に加えられていた、その前のロンドン版のために書き下ろされた「Our Little World」は入っていないみたい。

 出演者は、「アンコールズ!」からの移植時のみならずブロードウェイ開幕後も、変遷がかなりあるようで、例えば現状、魔女役はダブル・キャストになっていたりもする。追いかけると興味深いが、とりあえず観た回のキャストを挙げておく。
 ナレーター/謎の男役デイヴィッド・パトリック・ケリー(『The Glorious Ones』Once)。魔女パティーナ・ミラー(『Hair』『Sister Act』『Pippin』)。パン屋ブライアン・ダーシー・ジェイムズ(『Carousel』『Titanic』『The Wild Party』『Sweet Smell Of Success』『Dirty Rotten Scoundrels』The Apple Tree』『Shrek The Musical』『Next To Normal』『Something Rotten!』)。パン屋の妻ステファニー・J・ブロック(『The Boy From Oz』『The Pirate Queen』『9 To 5』『Anything Goes』『The Mystery Of Edwin Drood』『Little Miss Sunshine』『Falsettos』『The Cher Show』)。赤頭巾役ケイティ・ゲラティ(『Groundhog Day』)。ジャック役コール・トンプソン。ジャックの母役アン・ハラダ(『Seussical』『Avenue Q』『9 To 5』『Rodgers + Hammerstein’s Cinderella』)。ミルキー・ホワイト(牛)操作ケネディ・カナガワ。シンデレラ役デネイ・ベントン(『Natasha, Pierre and the Great Comet of 1812』)。シンデレラの王子/狼役ギャヴィン・クリール(『Thoroughly Modern Millie』『La Cage Aux Folles』『Hair』『She Loves Me』『Hello, Dolly!』)。ラプンツェル役アリシア・ヴェレース。ラプンツェルの王子は本役がジョシュア・ヘンリー(『In The Heights』『The WIz』『American Idiot』『The Scottsboro Boys』『The Gershwins’ Porgy And Bess』『Bring It On The Musical』『Violet』『Shuffle Along, Or The Making of the Musical Sensation of 1921 and All That Followed』『Rodgers & Hammerstein’s Carousel』)のところを観た回は(時々代わって出ているらしい)アンディ・カール(『Legally Blonde: The Musical』『9 To 5』『The Mystery Of Edwin Drood』『Rocky』『On The Twentieth Century』『Groundhog Day』『Pretty Woman: The Musical』)。シンデレラの義母役ナンシー・オペル(『Triumph Of Love』『Urinetown』『Fiddler On The Roof』『Gypsy』『The Toxic Avenger』『Honeymoon In Vegas』『Curvy Widow』)。シンデレラの姉フロリンダ役ブルック・イシバシ。シンデレラの姉ルシンダ役タニカ・ギブソン。シンデレラの実母/赤頭巾の祖母/巨人役アニー・ゴールデン(『Hair』『Leader Of The Pack』『On The Town』『The Full Monty』『Xanadu』『The Shaggs: Philosophy Of The World』『Violet』)。
 ある意味、オールスター芝居の様相かな。

 [追記] 2015年3月にラウンダバウト制作のオフ版も観ていた。

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