The Chronicle of Broadway and me#1049(Kpop)

2022年11月@ニューヨーク(その7)

 『Kpop』(11月26日14:00@Circle In The Square)についての感想。

 『Kpop』は2017年秋のオフ公演を観ようとしてソールドアウトで観られなかった作品。
 ということで少しばかり期待したたせいか、思ったほどではなかったのだが、込められているテーマは小さくなかった。

 韓国の芸能プロダクションがアメリカに向けて売り出そうとしている3組のKポップ・アーティストを巡るドラマ。
 プロダクションは彼らを売り出すために、アメリカのドキュメンタリー作家を雇ってコンサートの映像化を行なおうとしている。そのコンサートのリハーサルを現在進行形で描きつつ、そこに3組の中のソロ歌手の現在に到るまでの道のりが回想で挟み込まれる。
 歌は基本、彼らの持ち歌として歌われるので、ミュージカルと言うよりはプレイ・ウィズ・ミュージック。

 その歌唱&ダンス場面が、この作品の表向きの“売り”ではある。
 女性5人組、男性8人組の2つのグループは、高速で変化していく照明や画像を駆使した舞台上で切れのいい群舞を繰り広げつつ、各人の特徴を生かした歌唱で短いフレーズを次々に歌い継いでいく。時折そこに交える精緻なハーモニーも聴かせどころの1つ。
 ソロの女性はディーヴァ然として登場。ビートの強い曲からバラードまで、時には前述のグループを従えて、華やかに歌い上げる。

 その裏側には若きKポップ・アーティストたちの直面する苦悩があり、その苦悩は、アメリカでの成功を目指すがゆえに顕在化する、彼らを取り囲んできた米韓の複雑な近代史の反映でもある。……ということを描いているのが、この作品がただのヴァーチャル・コンサートで終わらないところ。
 そのあたりを描くにあたって設定したと思われるのが、アメリカのドキュメンタリー映像作家の存在。彼が介在して、アーティストたちの“真実”を探ろうとすることで、観客にも彼らの抱える問題が見えてくる、という仕掛け。同時に、そのドキュメンタリー作家はアメリカの象徴でもあり、韓国の若者たちとの軋轢も生まれる。

 個人的には、この線をさらに丁寧に描いていけば、かなりの作品になったのではないかと思う。が、実際にはソロ歌手の過去の描写に多くが割かれ、それは、どちらかと言えば一般的なスターの、プライヴェートか表舞台か、というありがちなドラマになっていて、あまり面白くない。まあ、好みの問題かもしれないが。

 作曲・作詞ヘレン・パーク&マックス・ヴァーノン。創案ウッドシェド・コレクティヴ&ジェイソン・キム。脚本ジェイソン・キム。
 演出テディ・バーグマン。振付ジェニファー・ウェバー(『& Juliet』)。

 主演のソロ歌手役は、ブロードウェイ進出にあたって、オフ公演のアシュリー・パーク(『Mean Girls』)からホンモノのKポップ・グループf(x)のメンバーであるルナに変更。
 その他の出演者も、女性グループ、男性グループ、それぞれ1人ずつを除いて全てオフと違っていて、かつ、名前も含めキャラクター自体が変更されている。

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