The Chronicle of Broadway and me #694(Once On This Island[N.J.]/Takarazuka!!!)

2012年5月~6月@ニューヨーク(その7)

 ニュージャージーのリヴァイヴァルとオフ・オフのプレイについて。

 『Once On This Island』(5月31日13:30@Paper Mill Playhouse)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<今回のペイパーミル・プレイハウスのリヴァイヴァルは『Once On This Island』。ブロードウェイ公演を観たのが……1991年夏、もう 21年前か(!)。
 グラシエラ・ダニエル(演出・振付)とラシャンズ(主演女優)の名前が心に刻み込まれた印象的な舞台だった。その時の感想はこちら

 今回の演出は『In The Heights』のトーマス・カイル。
 劇中劇としてスピーディに展開していく印象は初演と変わらない(もっとも、初演の詳細は記憶のはるかかなたで、幕間なしの1幕ものだということも忘れていました)が、ペイパーミルの舞台が横に広く、おまけに客席も全体にゆったりしているので、この作品にとって重要な親密な空気感がやや薄れたかも。とはいえ、よくまとまったプロダクションではあった。

 ラシャンズのやった役はアメリカン・アイドル出身のサイーシャ・メルカード。
 装置は、『Peter And The Starcatcher』でも即興劇的な雰囲気を生み出すのに貢献していたダニエル・ウォーリ。>

 2017年ブロードウェイ・リヴァイヴァル版『Once On This Island』にも出演していて、2021/2022シーズンのプレイ『for colored girls who have considered suicide/when the rainbow is enuf』でトニー賞助演女優賞候補になったケニタ・R・ミラー(『The Color Purple』『Xanadu』)や、ダニエル・デ・ハース(『Rent』『The Gershwins’ Fascinating Rhythm』)も出ていた。

 『Takarazuka!!!』(5月31日20:30@Here)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<演劇組織クラブド・サム(Clubbed Thumb)がオフ・オフの劇場で開催した“サマーワークス2012”というイヴェントの演目の1つ。もちろん、題材に惹かれて観に行った。
 ショウ場面で歌が歌われはするが、基本的にはストレート・プレイだ。

 宝塚歌劇の男役トップの引退前後を描いているのだが、主人公が、尊敬していた先輩の男役トップの霊に取り憑かれるというオカルティックな話の展開が、意外にもハマって全体を面白くした。狂言回しに日系アメリカ人男性の映像ドキュメンタリー作家(BBCに派遣されたと言っているのにアメリカ人だったと思う)を据えたのも、日系アメリカ人の演じる日本人のドラマにひと捻り加えて視点を重層的にする、という意味で功を奏していた。
 書いたのが中国系アメリカ人(スーザン・スーン・ヒー・スタントン)だからか、細部に誤解がある気がするのだが、設定が1975年という直接は知らない時代の宝塚なので、断定はできない。だが、まあ、前述したようにオカルティックな内容を含むので、むしろ、それもひっくるめて、ある種のファンタジーとして観ればいいのかも。

 主演のジェニファー・イケダの冷たい美しさが作品の雰囲気にピッタリだった。>

 演出リア・デベッソネ。
 ジェニファー・イケダは映像系で活躍する他、オーディオ・ブックのナレーターとして知られているらしい。