The Chronicle of Broadway and me #1037(for colored girls who have considered suicide/when the rainbow is enuf)

2022年5月~6月@ニューヨーク(その9)

 『for colored girls who have considered suicide/when the rainbow is enuf』(6月1日14:00@Booth Theatre)についての感想。

 トニー賞で振付賞にノミネートされているプレイ(・ウィズ・ミュージック)。

 作者は詩人でもあるントザケ・シャンゲ。なので、プレイと言うより、ポエトリー・リーディング(・ウィズ・ミュージック・アンド・ダンス)という感じ(プレイビルの表紙にはタイトルの他に、「passion/joy/poetry/dance/music」と書かれている)。
 シャンゲ本人も出演したというブロードウェイ初演は1976年。黒人意識の高揚が1つのピークを迎えつつあった時期か。
 今回の公演は、2019年の秋から暮れにかけてパブリック・シアターで上演されたリヴァイヴァル・プロダクションがブロードウェイに進出したもの(初演の時にもブロードウェイの前にパブリック・シアターでの公演が行なわれている)。演出が、パブリック・シアターでのリア・C・ガーディナーから、振付カミーユ・A・ブラウン(『Once On This Island』)の兼任に変更されている。

 そのカミーユ・A・ブラウンのプリミティヴな感触の振付が、ほぼ全編にわたって躍動する。
 加えて、このリヴァイヴァル版には、初演にはなかったマーサ・レッドボーン&アーロン・ウィットビーによる新たな音楽が加えられていて、それが魅力的。ブラック・ミュージックの様々な要素がちりばめられた楽曲が、シンプルな編成のバンド(キーボード+ベース+ドラムス)によりグルーヴィに演奏されて、詩の世界をふくらませ、ダンスを盛り上げる。
 出演者は7人で、各人に7種の色の名前が付けられている(タイトルに「虹」が入っている理由はそこ)。そして、全員がカラード・ガール(ダブル・ミーニングだと思われる)。彼女たちが、単独から全員までの多様な組み合わせで、歌ったり、踊ったり、笑わせたり、物語ったり、煽ったり、様々なやり方でポエトリー・リーディング(プラス・アルファのパフォーマンス)に及ぶ。
 その内容は、シャンゲが若き日々に体験した(と言っても1948年生まれだから、初演時はまだ充分に若いわけで、当時としては現在進行形で体験している、ということになるか)理不尽な差別や偏見に対する告発と抗議。そして、似た境遇にいるガールズに向けての共闘宣言。おそらく、そういうことだと思う。
 それが今も(幸か不幸か)充分に意味があると考えてのリヴァイヴァルだろう。その意図は正しく伝わってくる。

 トニー賞では、最初に書いた振付賞(ミュージカルと共通)の他は、プレイ部門の、リヴァイヴァル作品賞、演出賞、助演女優賞(ケニタ・R・ミラー)、衣装デザイン賞(サラフィナ・ブッシュ)、照明デザイン賞(ジユン・チャン)、音響デザイン賞(ジャスティン・エリントン)でノミネートされている。

 助演女優賞候補のケニタ・R・ミラー(『The Color Purple』『Xanadu』『Once On This Island』)はすでに降板していて、替わりがレイチェル・クリストファー。他の出演者6人は、アマラ・グランダーソン、テンダイ・クーンバ(『American Utopia』)、オクウィ・オクポクワシリ、ステイシー・サージェント、アレグザンドリア・ウェイルズ(『Big River』『Spring Awakening』)、D・ウッズ。
 ウェイルズは出演作からもわかるように、デフ・ウェスト・シアターで活動する役者で、ここでも手話で演じる。

 作者のントザケ・シャンゲは2018年に亡くなっている。優れた追悼公演になったと思う。

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