The Chronicle of Broadway and me #793(Here Lies Love[2]/The Fortress Of Solitude/Rock Bottom)

2014年10月@ニューヨーク(その6)

 2014年10月の観劇旅行、最終日は夕方から深夜までパブリック・シアターの演目三連荘。

 『Here Lies Love』(10月11日17:00@LuEsther Hall/Public Theater)は、前年(2013年)4月に観た公演の少し間を置いての再演(ツアーに出ていたのか?)。二度観ても熱さは変わらない。
 原案・作曲・作詞デイヴィッド・バーン、作曲ファットボーイ・スリム。
 振付は、スパイク・リーによる映像化も話題になった『David Byrne’s American Utopia』を5年後に手がけることになるアニー=B・パーソン。それを予感させる躍動的な動きが、ここにもあった。
 

 『The Fortress Of Solitude』(10月11日20:00@Newman Theater/Public Theater)は、ジョナサン・レセムの同名小説(2003年)の舞台ミュージカル化。成人した主人公が、1970年代半ばから1980年代初頭にかけてのブルックリンで孤独だった少年時代の自分を救ってくれた親友のことを思い出す、という設定で語られる。主人公は白人、親友は黒人。その内容は、レセムの実体験に基づいているらしい。

 タイトル「孤独の要塞」は“あの”スーパーマンの秘密基地のことで、表現にはファンタジーの要素も含まれるが、全体の色合いはほろ苦い。そこを、ストーリーにも絡んでくる表情豊かな音楽で面白く見せていくのが素晴らしい。
 作曲・作詞は、3年後に亡くなるマイケル・フリードマン(『Gone Missing』『Saved』『This Beautiful City』『Bloody Bloody Andrew Jackson』)。時代の変遷を反映した楽曲はそれぞれ魅力的で、その配置も見事。親友の父親が、かつて売れたソウル・グループのリード・ヴォーカルだったという設定を巧みに生かして、作品全体の音楽構成を豊かにしている。本当に惜しい才能を失った。

 主人公ディラン役アダム・チャンラー=ベラット(『Next To Normal』『Peter And The Starcatcher』『Fly By Night』)。親友ミンガス役カイル・ベルトランは『In The Heights』にウスナビ役で途中出演してブロードウェイ・デビューしている。
 『Hadestown』でトニー賞を獲るアンドレ・デ・シールズ(『The Full Monty』)が物語の鍵を握るミンガスの祖父役で出演していた。

 脚本は『The Band’s Visit』を手がけることになるイタマール・モーゼズ。
 創案・演出ダニエル・オーキン。振付カミーユ・A・ブラウン(後に『Once On This Island』『for colored girls who have considered suicide/when the rainbow is enuf』)。
 スタッフ、キャスト共に充実した作品だったわけだ。


 『Rock Bottom』(10月11日23:30@Joe’s Pub/Public Theater)は、リンカーン・センター付属のキャバレー・シアターで9月から10月にかけて1か月、深夜に行われていたブリジット・エヴェレットのライヴ。

 ブリジット・エヴェレットは歌手/女優/スタンダップ・コミック。自身を「alt-cabaret provocateur」(オルタナティヴ・キャバレーの挑発者)と称しているらしい。“えげつない”ぐらいの迫力でパフォーマンスを繰り広げる。客席にグイグイ入ってくるし(笑)。

 楽曲は、エヴェレットが、マーク・シャイマン&スコット・ウィットマン(『Hairspray』『Catch Me If You Can』)、アダム・ホロヴィッツ、マット・レイらと共作。
 演出スコット・ウィットマン。

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