The Chronicle of Broadway and me #948(This Ain’t No Disco/Carmen Jones/R.R.R.E.D.[2])

2018年7月~8月@ニューヨーク(その7)

 オフの3作品について。
 

 『This Ain’t No Disco』(8月1日20:00@Linda Gross Theater)は、楽曲作者(作曲・作詞)スティーヴン・トラスク(『Hedwig And The Angry Inch』)&ピーター・ヤノウィッツ(ドラマー/シンガー・ソングライター)による新作ミュージカル。脚本はトラスク&ヤノウィッツ+リック・エリス。

 舞台設定は1979年~1980年のニューヨーク・シティ。中心になるのはスタジオ54。今はランダバウト・シアター・カンパニーが運営する同名の劇場となっている建物。1977年から1980年初頭までの間、世界の有名人が夜毎集うセンセーショナルなナイトクラブだった。
 その短命に終わったナイトクラブ時代のスタジオ54の光と影を、当時を思わせるディスコ・ミュージックに乗せて再現しようとした作品。
 ただ、クラブを創った2人の若者の1人であるスティーヴ・ルベル(故人)やマッド・クラブという別のクラブを創ったスティーヴ・マスが実名で出てくるが、中心になるのは作品のために作られた登場人物。見るからにアンディ・ウォーホルな人物などは”The Artist”という名前になっていたりして、具体性のある再現には到っていない部分が多いと感じた。例えば、似た趣向の『Taboo』と比べた場合に。
 一方で、作品のための架空のキャラクターは、喧騒に包まれてめくるめくように展開していく幕間なしの1幕のドラマの中で、掘り下げが足りず類型的に見えてしまいがち。
 というわけで、この劇場で上演される作品としては珍しく、全体としては物足りない仕上がりだった。

 演出ダルコ・トレジニャック(『A Gentleman’s Guide To Love & Murder』『Anastasia The Musical』)。振付はカミーユ・A・ブラウン(『The Fortress Of Solitude』『Once On This Island』)。
 

 『Carmen Jones』(8月4日15:00@Classic Stage Company)は、オスカー・ハマースタイン二世がビゼー作曲のオペラ『Carmen』の詞と脚本を書き換えて、第二次世界大戦中のアメリカ南部とシカゴでのアフリカン・アメリカンたちの物語に仕立てたブロードウェイ・ミュージカル。
 ブロードウェイでの初演は1943年暮れに開幕。まさに”現代”の話になっていたわけだ。その初演版が1945年2月まで続いた後、同じ45年と翌46年にシティ・センターで同じプロダクションによる短期の上演が行なわれているが、以降ブロードウェイでのリヴァイヴァルはない。

 このオフ版は、クラシック・ステージ・カンパニーの芸術監督ジョン・ドイル(『Sweeney Todd』『Company』『A Catered Affair』Road Show『Passion』『Allegro』『A Man Of No Importance』『The Visit』『The Color Purple』『Pacific Overtures』『As You Like It』)の演出。振付は昨年(2022年)『Paradise Square』を手がけたビル・T・ジョーンズ(『Spring Awakening』『Fela!』)。
 リハーサル用と思われる木箱を多用した簡素な舞台の寒々とした空気は戦時下のアフリカン・アメリカンの立ち位置を象徴しているようで、その閉塞感が、そこで展開する情愛のドラマの行き場のなさをいっそう際立たせる。そんな仕上がりだった。

 出演者の目玉は『Caroline, Or Change』でトニー賞を受賞したアニカ・ノニ・ローズ。この時は、2006年の映画版『Dreamgirls』出演ですでに全米的スターになっていた。
 


 『R.R.R.E.D.』(8月4日20:00@DR2 Theatre)は、9年前に観たNYMF参加作品『R.R.R.E.D.: A Secret Musical』と同じ。……だということに観ていて気づいた(笑)。
 なので内容については、そちらの感想ご覧ください。

 作曲・作詞・脚本ケイティー・トンプソン、脚本アダム・ジャックマン&パトリック・リヴィングストンはもちろん、演出アンディ・サンドバーグ、振付シェア・サリヴァンも、「作者であるケイティー・トンプソンとパトリック・リヴィングストンがメインのキャストとして出演している」のも同じ。 

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