The Chronicle of Broadway and me #457(Spring Awakening)

2006年11月@ニューヨーク(その2)

 『Spring Awakening』(11月24日20:00@Eugene O’Neill Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想、及び、それについての追記は、2015年のリヴァイヴァル版の感想の中に丸ごと書いてある。その部分を抜き出して、ここに転記しておく。<>内が観劇当時の感想、それ以降がリヴァイヴァル版の感想を書いた際の追記です。
 ちなみに、リヴァイヴァル版の方が評価が高くなっています。

<ドイツの劇作家フランク・ヴェデキントが19世紀末に発表した戯曲のミュージカル化で、ストレート・プレイとしては日本でも上演されているようだ。
 内容は、キリスト教原理主義的世界観が支配する抑圧的な社会(舞台は戯曲が書かれた当時のドイツ)で性に目覚める少年少女たちの悲劇、といったものだが、このミュージカル作品の特徴は、そんな大昔の話なのに、少年少女が突然、内ポケットからハンドマイクを取り出してロック的な激しい歌で心情吐露を始めるところにある。そんなわけで、印象は19世紀版『Rent』(楽曲の印象から言えば、19世紀版『The Who’s Tommy』と言えなくもない)。
 プレヴュー中ながら、やたらに歓声を上げる“その手”の若い客も付いているようで、その辺がプロデューサー側の作戦に思えて個人的にはちょっと引いたのだが、それとは別に、この古い戯曲を持ち出してきた理由がイマイチ判然とせず、中途半端な気分が残った。ただし、楽曲には魅力がある。>

 トニー賞では作品賞、楽曲賞他8部門で受賞するわけだが、個人的にはあまり高く評価していないことがわかる。
 ちなみに、文中で書いている、“その手”の若い客、とは、1996年にオフ・オフからブロードウェイに移ってセンセーショナルな話題作となった『Rent』が生んだ“レント・ヘッド”と呼ばれる熱心なファンに感化されたような行動をとる観客のことで(明らかにグレイトフル・デッドのファンを“デッド・ヘッド”と呼んだことの流用)、半ば仕込みのような感じで劇場で盛り上がる。2004年に幕を開け短命に終わった『Brooklyn: The Musical』や、その2年後に登場したこの『Spring Awakening』といった、若者をターゲットにした尖がった印象の作品で目立った。今では、それほど若者向きの作品でなくても、特にプレヴューの期間には“その手”の客がいることがある。仮に仕込みだとしても製作側としては当然の施策だとは思うが、時としてシラケる。
 まあ、古い戯曲を持ち出してきた理由については、再選ブッシュ(息子)政権下での抑圧感をこうした形で表現したかったのかも、と今にして思ったりもする。が、劇場の空気も含めて、あのパンキッシュな表現は、“つかみ”としては効果的だったかもしれないが、どこかアンバランスで(それが狙いなのかもしれないが)、イマイチ感情移入できなかった。
 

[さらなる追記]

 作曲ダンカン・シーク、作詞・脚本スティーヴン・セイター。
 演出マイケル・メイヤー、振付ビル・T・ジョーンズ。
 リリ・クーパー(『SpongeBob SquarePants: The Musical』『Tootsie』)のブロードウェイ・デビュー作。他に、ジョナサン・グロフ(『Hamilton』)、ジョン・ギャラガー・ジュニア(『American Idiot』)が出演。

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