The Chronicle of Broadway and me #968(Lolita, My Love/Regoletto)

2019年2月~3月@ニューヨーク(その10)

 レアなミュージカルのオフでのリヴァイヴァルとMETのオペラについて。
 

 『Lolita, My Love』(2月28日20:00@Theater at St.Peter’s)は、『Brigadoon』『Paint Your Wagon』『My Fair Lady』『Camelot』『On A Clear Day You Can See Forever』『Gigi』(※リンク先は観たことのあるリヴァイヴァル版の感想)等で知られる作詞家/脚本家アラン・ジェイ・ラーナーが、007シリーズで知られるイギリスの作曲家ジョン・バリーと組んで作った、”成功しなかった”ミュージカル。
 原作は、日本語では「ロリコン」として定着しているロリータ・コンプレックス(Lolita Complex)の語源であるところのウラジミール・ナボコフの小説「Lolita」。1971年、ブロードウェイ(マーク・ヘリンジャー劇場/現タイムズ・スクエア教会が予定されていた)を目指す地方都市でのトライアウトを行なっている途中で打ち切りになったらしい。

 この約半世紀ぶりのオフ版は、ラーナーの脚本にエリック・ハーガンセンが手を入れ、楽曲は音楽監督のデニズ・コーデルが再構築した、とプログラムにある。
 演出エミリー・モルトビー。
 ヨーク・シアター・カンパニーによる簡易リヴァイヴァル・シリーズ「ミュージカルズ・イン・マフティ」の1作(ほぼリーディング上演)。なので、伴奏はデニズ・コーデルの弾くピアノのみ。

 そんなこともあり、大学教授ハンバート・ハンバートと少女ドロレス・ヘイズ(ロリータ)と巡る心理的に入り組んだドラマは、なかなかにわかりにくい。まあ、歴史的問題作をとりあえず目撃した、といったところ。
 最も印象的な楽曲「Going, Going, Gone」は、ジョン・バリー作曲だからだろう、後にシャーリー・バッシーが歌っている。007映画に出てきてもおかしくない曲調。

 出演は、ハンバート・ハンバート役ロバート・セラ(『My Fair Lady』『Side Man』『Chitty Chitty Bang Bang』『Flying Over Sunset』)、ロリータ役ケイトリン・コーン、ロリータの母シャーロット役ジェシカ・タイラー・ライト(『Company』『LoveMusik』『Allegro』)、劇作家クレア・クィルティ役ジョージ・アバド(『The Visit』『The Band’s Visit』)他。
 


 『Regoletto』(3月1日20:00@Metropolitan Opera House/Lincoln Center)は、「La donna è mobile」(女心の歌)で知られるジュゼッペ・ヴェルディ作曲のオペラ。台本はフランチェスコ・マリア・ピアーヴェで、初演は1851年のヴェネツィア。

 この時のMET版は演出マイケル・メイヤー(『Triumph of Love』『Side Man』『You’re a Good Man, Charlie Brown』『Thoroughly Modern Millie』『Spring Awakening』『10 Million Miles』『American Idiot』『Everyday Rapture』『On a Clear Day You Can See Forever』『Hedwig And The Angry Inch』『Head Over Heels』)。
 例によって、あざとく(笑)、設定を1960年のラス・ヴェガスにしてある。なので、色彩感の豊かさは見どころのひとつ。
 ともあれ、現代の話にすると悲劇性が増す、と感じた。

 主な出演者は、リゴレット役ロベルト・フロンターリ、その娘ジルダ役ネイディーン・シエラ(2021/2022シーズンの『Lucia di Lammermoor』が印象的だった)、彼女を誘惑する公爵役ヴィットリオ・グリゴーロ。
 指揮ニコラ・ルイゾッティ。

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