★2007年7月@ニューヨーク(その4)
この渡米時に観たオフの4作をまとめて。
『Gone Missing』(7月12日19:30@Barrow Street Theatre 27 Barrow St.)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。
<現実に根ざした舞台作りを続けているという劇団シヴィリアンズによる、ニューヨーカー相手に行なったインタヴューを基にしたレヴュー。
揃いのスーツとサングラスで出てくる6人の役者が、様々なキャラクターを演じ、様々なエピソードが描かれ、それらが交錯しながらニューヨーカーの抱える問題を浮き彫りにしていく。……たぶん(笑)。
固有名詞も多く、正直ヒアリングが追いつかない。断片的には笑わせてもらいました。もちろん、現地の客は大ウケ。ということで(笑)。>
楽曲作者は、後に『Bloody Bloody Andrew Jackson』を書くことになるマイケル・フリードマン。シヴィリアンズの創設メンバーらしい。この作品では、ヴァース付きのいわゆるグレイト・アメリカン・ソングブック的なオーソドックスなものから、バカラックを思わせる捻った展開のポップなもの、『Bloody Bloody Andrew Jackson』を想起させる性急なロック調のもの、テックスメックス的なもの等、ヴァラエティに富んだ曲調の楽曲を揃え、それがいずれも魅力的。
脚本と演出はスティーヴ・コッソン。
『10 Million Miles』(7月14日14:00@Linda Gross Theater 302 W. 45th St.)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。
<『Spring Awakening』を作ったアトランティック・シアター・カンパニーの新作。
フォーク/カントリー畑のシンガー・ソングライター、パティ・グリフィンの楽曲を使って、若い男女の少しばかり苦い“人生の旅”を描く。楽曲が楽曲として独立しすぎている感がなきにしもあらずだが、全体では、味わい深い舞台に仕上がっていた。
主役の若い2人の他に登場する2人の男女のヴェテラン役者が、多くのキャラクターを演じ分けて見事。>
脚本キース・ブーニン。演出は『Spring Awakening』で前シーズンのトニー賞を獲ったマイケル・メイヤー(『Triumph of Love』『Side Man』『You’re a Good Man, Charlie Brown』『Thoroughly Modern Millie』)。
若いカップルは、マシュー・モリソン(『Hairspray』『The Light In The Piazza』)とアイリーン・モロイ(『The Civil War』)。ヴェテラン2人はメア・ウィニンガムとスキップ・サダス。映画・TVの出演も多い2人で、舞台ではストレート・プレイが主体だが、2人とも近年になってブロードウェイ・ミュージカルに出ている(ウィニンガム『Girl From The North Country』、サダス『South Pacific』)。
この舞台を観てパティ・グリフィンの楽曲の魅力を知り、アルバムをまとめて買った覚えがある。
『Sessions』(7月14日20:00@Peter Jay Sharp Theatre 416 W. 42nd St.)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。
<『Sessions』は、グループ・セラピーを行なっているセラピストのオフィスが舞台。
互いに問題を語り合うことで、それぞれの心を解放していこう、という話だが、各人のエピソードの掘り下げがやや足りず、最後にセラピスト自身に起こる問題も、とって付けた印象。
シリアスとコメディとのさじ加減で失敗しているのだろう。>
楽曲・脚本アルバート・タッパー、演出・振付スティーヴン・ペトリッロ。
『Bajour』(7月15日19:30@Theatre At St. Peter’s)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。
<ヨーク劇場が始めた、シティ・センターの“アンコールズ!”的なコンサート型リヴァイヴァル・シリーズ“ミュージカルズ・イン・マフティ”の1作。『Bajour』のオリジナルはチタ・リヴェラをスターに据えて1964年にオープン、半年強でクローズしている。
ニューヨークを訪れたジプシーをめぐる大騒ぎ。と言っても、『Gypsy』と違って、こちらに登場するのはローズ・リーではなくホンモノのジプシーたちで、若干のエキゾティシズムが当時の“ウリ”だったか。
全体にのんびりしているが、楽曲は楽しいものだった。>
タイトルの「バジュール」はロマの言葉で「詐欺」を意味するらしい。ちなみに今日では、差別的ニュアンスのある「ジプシー」ではなく、彼ら自身が自称する「ロマ」「ロマニ」という名を使うのが普通。
楽曲ウォルター・マークス、脚本アーネスト・キノイ。演出ステュアート・ロス。
チタ・リヴェラの演じていたアニャンカ役はディオーネ・ザノット。ウェスト・エンドの『We Will Rock You』の他、オーストラリアで複数のミュージカルに出ていた人で、これがニューヨーク初見参だったらしい。
なお、“ミュージカルズ・イン・マフティ”(「普段着のミュージカル」という意味か)は、その後も続いている。
“The Chronicle of Broadway and me #481(Gone Missing/10 Million Miles/Sessions/Bajour)” への15件のフィードバック