The Chronicle of Broadway and me #670(On A Clear Day You Can See Forever)

2011年11月@ニューヨーク(その4)

 『On A Clear Day You Can See Forever』(11月27日13:00@St. James Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<ハリー・コニック・ジュニア主演の『On A Clear Day You Can See Forever』には大胆なリニューアルが施されている(初演は1965年秋オープンで上演回数280回。作曲バートン・レイン、作詞・脚本アラン・ジェイ・ラーナー)。
 最大の変化は、初演ではヒロインの女子学生が実は18世紀イギリスの公爵夫人の生まれ変わり、という設定だったのに対し、今回は、そのヒロインに当たる役がゲイの青年になり、彼は1940年代の女性ジャズ歌手の生まれ変わりになっていること(新脚本ピーター・パーネル)。
 もちろん初演は観ていないし、観たのは1993年のオフの小さな劇場での期間限定リヴァイヴァルだけなので、比較してどうこうは言えないが、おそらく今回のヴァージョンの方が話がわかりやすくなっているのではないだろうか。

 前述のヒロイン(に当たる役)が精神科医を訪れ、催眠療法で前世の人格が現れる。その前世の人格に精神科医が惹かれる。というのがストーリーの根幹だが、初演ではヒロインと前世の人格を同じ女優が演じ、そこに精神科医とのねじれた三角関係が生じる。
 その複雑さが面白い、とも言えるが、わかりにくくもある。
 ところが今回は、ゲイの青年とジャズ歌手は男優と女優が別々に演じることもあり、精神科医との三角関係は、見た目にはすっきりしている。そして、実のところ、新ヴァージョンは、ゲイの青年にゲイの恋人がいることで誤解が誤解を生んでストーリー上はより複雑になっているのだが、その結果、わかりにくくなるのではなく、コメディの要素が強くなっている。それも功を奏していると言っていい。
 しかし、今回の改変で最も効果があったのは、前世の設定をジャズ歌手にしたところ。その役を与えられたジェシー・ミューラーが歌い手としての魅力を充分に発揮して、見せ場を作っている。

 ブロードウェイでは初演以来初のリヴァイヴァルだが、SFファンタジー的な内容を、1965年というフラワー・ムーヴメント直前の空気感の中にノスタルジックな感覚で落とし込んで、ようやく、すんなり飲み込めるミュージカル・コメディになった。そんな気がする。
 ご承知の通り楽曲には素晴らしいものが多い。傑作ではないが、カラフルな装置も含め、気軽に楽しめばいいと思う。>

 演出マイケル・メイヤー(『Triumph of Love』『Side Man』『You’re a Good Man, Charlie Brown』『Thoroughly Modern Millie』『Spring Awakening』『10 Million Miles』『American Idiot』『Everyday Rapture』)。振付ジョアン・M・ハンター。
 装置クリスティン・ジョーンズ。

 ゲイの青年役はデイヴィッド・ターナー。

 ジェシー・ミューラーのブロードウェイ・デビュー作。でもってトニー賞助演女優賞の候補になった。
 このリヴァイヴァルは短命に終わったせいか、キャスト・アルバムは作られなかった。なのでジェシー・ミューラーの歌声を盤で聴くことはできないのだが、幸いなことにYouTubeに舞台映像がいくつか上がっている(「Jessie Mueller On A Clear Day」で検索)。

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