The Chronicle of Broadway and me #775(Hedwig And The Angry Inch)

2014年6月@ニューヨーク(その2)

 『Hedwig And The Angry Inch』(6月12日20:00@Belasco Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<派手だなあ、というのが第一印象(演出/マイケル・メイヤー)。
 16年前のオフでの初演が、ハドソン川に近い場末な雰囲気さえする古いホテル(名前を変えて今も営業中の様子)の中にあった、ボールルームを改装した劇場での上演だったせいもあり、全体にモノクロームな色調の舞台として記憶に残っている。それが今回はブロードウェイの劇場に移り、さらに、装置も煌びやかで、オフ初演の薄暗い面影からは遠い。

 しかしながら、始まってしまえば、やはりヘドウィグ。毒を撒き散らしながら暴走していく(それに応じて、舞台上の色彩も次第にモノクローム度が増していく)。
 辛辣な客いじりも多い。設定は“今”にアップデイトされていて、時事ネタもけっこうある(アドリブか)。それらの要素が観客を巻き込んで、ある種の熱を生み出すのだから、特殊な設定ながら(各自ウィキペディア等で調べてください)、作品が抱える本質的なドラマが16年の時を超えて生きているのは間違いない。
 ではあるのだが、TVドラマで全米的な人気を得、トニー賞授賞式の司会も重ねて務めたニール・パトリック・ハリスを主役に据えたことと、開幕直後の装置の派手な印象とで、どこか“観光客向け”な感じがしたのも事実。
 もっとも、すでに映画化もされて、それなりの成功を収めている作品を改めてブロードウェイでやろうというのだから、商売っ気がない方がおかしい訳で、むしろ、この“毒”を観光客にも食わせよう、というぐらいの腹なのかもしれない。

 ハリスのスケジュールもあって、当初は8月10日までの限定公演の予定だったが、当たったのだろう、その後、主演者を替えながら続演中。
 ちなみに、トニーで助演女優賞を獲ったレナ・ホールには、特に強い印象は抱かなかった。>

 作曲・作詞スティーヴン・トラスク。彼と、脚本のジョン・キャメロン・ミッチェル(『The Secret Garden』)の出会いから生まれた作品。
 上掲感想中に「各自ウィキペディア等で調べてください」と不親切な調子で(苦笑)書いている作品の内容については、オフ版の感想に付け加える形でやや詳しく書いてあるので、そちらをご覧ください。

 演出マイケル・メイヤーの、これ以前の主な仕事は次の通り。『Triumph of Love』『Side Man』『You’re a Good Man, Charlie Brown』『Thoroughly Modern Millie』『Spring Awakening』『10 Million Miles』『American Idiot』『Everyday Rapture』『On a Clear Day You Can See Forever』
 振付スペンサー・リフ。