The Chronicle of Broadway and me #716(The Old Man And The Old Moon/Bare)

2012年11月@ニューヨーク(その8)

 音楽が特徴的なオフの2本について。

 『The Old Man And The Old Moon』(11月25日15:00@Gym At Judson)は、ピッグペン・シアター・カンパニー(PigPen Theatre Co.)というグループによるユニークな“音楽劇”。
 これを観る直前に彼らのファースト・アルバム『Bremen』がリリースされていて、アコースティックなフォーク/アメリカーナといった感触の素敵な内容なのだが、それも彼らの創案した舞台劇(上演されてはいないようだが)のために書かれた音楽らしく、そんな彼らの舞台がニューヨークで上演されるというので観たのが、この“音楽劇” 。

 舞台上で繰り広げられるのは、バンド・メンバー7人による、演奏と演技とパペット/影絵の操作で表現される物語。ユニークな“音楽劇”、と言いたくなる由縁だ。
 月から毎夜こぼれ落ちる光を補充するのがオールド・マンの仕事。不意に家出した妻を探して旅に出るオールド・マン。月が輝かなくなり闇に包まれた世界でオールド・マンの冒険の旅が始まる。

 作曲・作詞・脚本・出演ピッグペン・シアター・カンパニー。
 魅力的な装置・衣装デザインはリディア・ファイン。照明&プロジェクションデザインはバート・コートライト。リディア・ファインはピッグペン・シアター・カンパニーと共にパペット/影絵の創作も行なっている。

 公式サイトに上がっている『Bremen』のPVで彼らの作風の一端がわかる。ここに出てくる主人公もオールド・マンなのだろうか?
 

 『Bare』(11月25日19:30@Stage 4/New World Stages)は、先行作『Bare: A Pop Opera』の改訂版で、両者の違いがわかるように『Bare: The Musical』と呼ばれているようだ。『A Pop Opera』は2000年にロスアンジェルスで初演され、オフでの上演は2004年。『The Musical』は、この2012年のオフ版が初演。
 改訂の理由は、『A Pop Opera』オフ版の上演後数年の間にLGBTQの人たちの自殺が相次いだから、と英語版ウィキペディアには書いてある。ではあるが、『The Musical』はこの後、2015年ウェールズと2016年アイルランドでの上演があるだけで、むしろ『A Pop Opera』の方が、オフ版の後、2008年以降ほぼ途切れることなく最近まで世界各地で上演され続けている。日本で「オフ・ブロードウェイ・ミュージカル」として複数回翻訳上演されたのも『A Pop Opera』の方らしい。事情はよくわからないが、ちょっと混乱する。

 内容をざっくり言うと、現代のカソリック寄宿学校を舞台に描かれる、性的に抑圧された青春群像。
 似た設定に加えて楽曲がロック調なこともあり、ミュージカル版『Spring Awakening』の現代的変奏、という印象が強い(実際、出演者には同作経験者が何人かいる)。

 作曲デイモン・イントラバルトーロ(翌年に39歳で亡くなっている)。作詞・脚本ジョン・ハートメア。
 演出スタッフォード・アリマ(『Alter Boyz』『The Tin Pan Alley Rag』『Carrie』)。振付トラヴィス・ウォール。

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