The Chronicle of Broadway and me #1025(The Imbible: Sprited History Of Drinking/Mack And Mable)

2020年2月@ニューヨーク(その7)

 『The Imbible: Sprited History Of Drinking』(2月20日20:00@The Green Room/New World Stages)はニュー・ワールド・ステージズに入って左に下りて行ったところにあるバーで上演されている、観客が飲みながら楽しむ酒についてのミュージカル(ドリンク代は無料)。
 そもそもは、アルコール飲料の専門家であるアンソニー・カポレイリが、マンハッタンで開かれたカクテルについての催し物で、自身の講義の後に余興として作ったショウであるらしい。酒の起源に始まって、アルコール飲料が人類に与えた影響を歴史的に語り、一方でカクテルの作り方を伝授する。そんな内容。

 出演者は4人で、それぞれバーテンダーやウェイトレスを演じながら歌を歌う。それがア・カペラであるあたりが、聴きどころではある。
 楽曲は古今の既成曲にアンソニー・カポレイリが新たな詞を付けたもの。脚本もカポレイリ。
 演出ニコロ・ディマッテイ。
 


 『Mack And Mable』(2月22日14:00@City Center)はシティ・センター「アンコールズ!」の1作。
 作曲・作詞ジェリー・ハーマン。脚本マイケル・ステュワート。ジェリー・ハーマン作品としては、5年前の前作『Dear World』と連続しての興行的失敗作。ブロードウェイ初演は1974年10月で、プレヴュー5回、本公演66回で終わっている。

 マックはマック・セネット。映画監督/プロデューサーとしてサイレント映画のスラップスティック・コメディでヒットを連発した。チャールズ・チャップリンを映画に初めて起用した人物としても知られている。
 メイベルはメイベル・ノーマンド。サイレント映画のスター女優だった人。
 一時期恋愛関係にあったと言われる、そんな2人を、結ばれそうで結ばれない“行き違い”の恋人と設定。その恋のゆくえを興味の軸にしながら、サイレント全盛時代のアメリカ映画界の波瀾万丈を描いていく。全体は、トーキーの時代を迎え現役でなくなった頃(1938年)のマックの回想になっていて、その時点でメイベルはすでに亡くなっている(1930年)。つまりは、ノスタルジックでセンチメンタルな構造。
 おそらく、同じように古い時代を扱った『Hello, Dolly!』で当てたジェリー・ハーマンの二匹目のドジョウを狙ったのだと思うが、楽曲の出来も含め、惹かれるところが少ないと感じた。

 ブロードウェイ版の見どころのひとつは、有名な「キーストン・コップス」の追いかけシーンをダンス仕立てにしたあたりにあったのではないかと想像する。と言うのも、演出・振付がガワー・チャンピオンだったからで、その再現は本来リーディング上演であるこのアンコールズ!版でも試みられている。振付は演出も兼ねたジョシュ・ローズ(『Rodgers + Hammerstein’s Cinderella』『First Date』It Shoulda Been You『Bright Star』)。ただし、成果はほどほど。

 出演は、マック・セネット役ダグラス・シルズ(『The Scarlet Pimpernel』『Little Shop Of Horrors』Peter Pan『Living On Love』『War Paint』)、メイベル・ノーマンド役アレグザンドラ・ソチャ(『Spring Awakening』『Death Takes A Holiday』『Fun Home』『Paint Your Wagon』)。
 他に、マイケル・ベレッセ(『Fiddler On The Roof』『Damn Yankees』『Chicago』『The Gershwins’ Fascinating Rhythm』『Kiss Me, Kate』『The Light In The Piazza』『The Cher Show』『Can-Can』)、リリ・クーパー(『Spring Awakening』『The 3 Penny Opera』『Sundown, Yellow Moon』)、ベン・ファンクハウザー(『Newsies The Musical『The Mad Ones』)、ジョーダン・ゲルバー(『Avenue Q』『I See London I See France』)、レイモンド・J・リー、といった面々。

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