The Chronicle of Broadway and me #486(The Boy In The Bathroom/The Angle Of The Sun/Love Kills/I See London I See France/Look What A Wonder Jesus Has Done/Virtuosa/The Blain From Planet X/Gemini)

2007年9月@ニューヨーク(その4)

 ニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル(NYMF)参加作品の感想を2回に分けて。その1。各タイトルの後の<>内が、旧サイトに書いた観劇当時の感想。
 

 『The Boy In The Bathroom』(9月17日20:00@45th Street Theater)

<文字通りバスルームに引きこもる少年(と言っても25歳の誕生日を迎える年齢)が主人公。
 彼が、ハウスキーパーに来る少女の助けで、母(メアリー・スタウト、うまい!)の抑圧から脱して外界に出るまでを、中央にバスルームのセットを置いただけの舞台で、哀しみとユーモアを交えて描く。
 少年と少女のドア越しの愛情表現がせつなく、胸に沁みた。>

 作曲ジョー・マロニー、作詞マイケル・ルベリス&ジョー・マロニー。脚本マイケル・ルベリス。演出マイケル・ルベリス。
 メアリー・スタウトは『My Favorite Year』『Jane Eyre』に出ていた人。
 

 『The Angle Of The Sun』(9月18日16:30@Saga Theatre)

<画家になる女性の半生を、その時々に交際している男性(1人の男優が4役を演じ分ける)との関係から描いていく。
 丁寧に演出されているが、構成が時間軸に沿ったオーソドックスなもので、楽曲も変化に乏しく、“ちょっと変な女の子”という主人公の魅力を除いては、やや退屈な出来。>

 作曲ラリー・プレスグローヴ、作詞・脚本・演出レイチェル・ランパート。
 主演はアマンダ・ワトキンズ。
 

 『Love Kills』(9月18日20:00@45th Street Theater)

<主人公は、オリヴァー・ストーン監督映画『Natural Born Killers』(ナチュラル・ボーン・キラーズ)で描かれた、実在した10代の殺人犯の少年少女で、彼らを捕らえた保安官とその妻が、留置所に収監した2人から動機を訊き出す、という設定。
 主人公たちが突然スタンドマイクで歌いだすあたり、『Spring Awakening』を思わせるが、場面のつながりが滑らかさに欠け、ドラマに感情移入しきれないうらみがある。
 少女役マリサ・ローズはTV番組『American Idle』出身者。>

 作曲・作詞・脚本カイル・ジャロウ。演出ジェイソン・サザーランド。
 

 『I See London I See France』(9月19日16:00@TBG Theater)

<タイトルは、日本で言えば「パンツゥまる見え」にあたる子供の囃子言葉らしい。内容は、広告代理店に勤める 35歳の奥手の独身女性を中心にしたセックス・コメディ(なんて言葉あるのか?)。
 ベッド⇔ソファ⇔デスクと早替わりするセットを効果的に使ってテンポよく見せる演出が快調。かなり小さい劇場ながら、8人もの個性的な役者がにぎやかに登場して、楽しかった。>

 作曲・作詞ジェレミー・デズモン、作詞・脚本ヴィド・ゲーレリオ。演出ジェレミー・ドブリッシュ。
 ジョーダン・ゲルバー(『Avenue Q』)、ジュリアナ・ハンセン(『Thoroughly Modern Millie』)、デイヴィッド・ロスマー(『Fiddler On The Roof』)といった人たちが出演。
 

Look What A Wonder Jesus Has Done』(9月19日20:00@Theatre At St. Clement’s)

<ゴスペル・ミュージカル。1882年のサウス・キャロライナ州チャールストンを舞台に、アフリカから連れてこられた奴隷たちの悲劇が、反逆の意思を込めて描かれる。
 とにかく、ウォルター・ロビンソンの書いた楽曲を歌い上げるアフリカン・アメリカンたちのコーラスが素晴らしい。1曲だけだが、リヴィングストン・テイラーとキャロル・ベイヤー・セイガーの書いた楽曲「Answer My Prayer」が歌われる。>

 作曲・作詞・脚本ウォルター・ロビンソン。演出ヒラリー・アダムズ。
 

Virtuosa』(9月20日16:00@45th Street Theater)

<そのタイトルのごとく(クラシック畑の名手の意)、ピアノの名手クララ・シューマンの物語で、若き日とその30年後とが幕間を隔てて描かれる。
 厳密にはミュージカルと言うよりプレイ・ウィズ・ミュージック。女優1人、ピアニスト1人が舞台にいて、演技(歌わない)と演奏とを分担する。つまりは実質ひとり芝居なわけだが、ピアノ演奏を挟むことでうまく緩急をつけていたので、案外眠くならなかった(笑)。>

 脚本ダイアン・セイモア。演出ブルース・ローチ。
 役者がカトリーナ・ファーガソン、ピアニスト兼音楽監修がアリソン・ブリュースター・フランゼッティ。
 

The Blain From Planet X』(9月20日20:00@The Acorn)

<B級SF“50年代の異星人による地球侵略もの”映画のパロディ・ミュージカル。
 安っぽい特殊メイクやセットも含め、いかにも西海岸産らしい緩いユーモア・センスで貫かれていて、ま、こういうのもありか、という気分で気楽に観ている分には悪くない。>

 作曲・作詞ブルース・キンメル。脚本デイヴィッド・ウェチター&ブルース・キンメル。演出ブルース・キンメル。
 エイミー・ボドナー(『Oklahoma!』)、ロブ・エヴァン(『Jekyll & Hyde』)らが出演。
 

Gemini』(9月21日13:00@The Acorn)

<劇場でプログラムを見るまで知らなかったので驚いたのだが、出演者として、リンダ・ハート(『Anything Goes』『Hairspray』)とジョエル・ブラム(『And The World Goes ‘Round』『Steel Pier』)という、ヴォードヴィルの香りを残すソング&ダンス・パーソン2人の名があったのだ。
 作品は同名戯曲のミュージカル化で、ストレート・プレイ版がオフで上演された時にもハートは出演していたらしい。
 舞台は1973年のフィラデルフィア。夏休みで帰郷している引きこもり気味のハーバードの学生フランシスの周辺で起こるドタバタ。……と、超簡単に言うとそういう話(笑)。中心になるのは父親との確執だが、シリアスなネタを笑い歌と踊りとで軽快に見せていく呼吸が素敵。もちろん、前記の2人は充分すぎるぐらいに歌って踊ります。>

 作曲・作詞チャールズ・ギルバート。脚本(原作戯曲)アルバート・インナウラート。演出マーク・ロビンソン。
 この年の春に観た『Anne Of Green Gables』に出ていたベス・B・オースティンも出演。