The Chronicle of Broadway and me #782(Piece Of My Heart: The Bert Berns Story)

2014年7月@ニューヨーク(その2)

 『Piece Of My Heart: The Bert Berns Story』(7月13日14:00@Irene Diamond Stage/Pershing Square Signature Center)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<1960年代にR&B系のプロデューサー/ソングライターとして活躍したバート・バーンズの、短い半生(1929年生まれ、1967年没)を描いたミュージカル。
 子供の時に患ったリウマチ熱のために命が短いことを意識して奔放に生きたバーンズ。そんな父のことをよく知らないまま育ち、今は売れないシンガー・ソングライターであるバーンズの娘が、バーンズの元マネージャーから話を聞く、という形で話は進むが、そこに、音楽のために自分がなおざりにされたと感じてバーンズの楽曲を売り払おうとする母も絡んで、亡きバーンズを巡る三者間の葛藤が、夭折した音楽家の光と影を映し出す。

 ドラマとして深みを生むところまでは行っていないが、バーンズのがむしゃらなキャラクターが魅力的に描かれていて、ザック・レズニックも好演。
 そこに、娘役のレズリー・クリッツァー(『Legally Blonde: The Musical』『A Catered Affair』『A Letter To Harvey Milk』『Nobody Loves You』)、母役のリンダ・ハート(『Anything Goes』『Hairspray』『Gemini』『Catch Me If You Can』)という、2005年の好舞台『The Great American Trailer Park』で共演もしていた芸達者な2人が加わり、舞台全体はかっちりとまとまって見えた。
 なにより、バーンズの書いた楽曲群(「Twist And Shout」「Cry Baby」「Cry To Me」「Hang On Sloopy」「Here Comes The Night」「Piece Of My Heart」他)が素晴らしい。

 この“ミュージカル”、『Jersey Boys』『Beautiful: The Carole King Musical』の系譜に属する、本来はプレイ・ウィズ・ミュージックと呼ぶべき作品だが、このレヴェルの仕上がりなら、これからもいろいろと“ミュージシャン/ソングライターの伝記的ミュージカル”を観てみたい気はする。>

 脚本ダニエル・ゴールドファーブ(『Martin Short: Fame Becomes Me』)。振付デニス・ジョーンズ(『High School Musical On Stage!』『Coraline』『Smokey Joe’s Cafe』@N.J.『Damn Yankees』@N.J.『Honeymoon In Vegas』@N.J.)。

 役者は他に、ジョゼフ・シラヴォ(『The Boys From Syracuse』『The Light In The Piazza』)、デアドレ・アジザ(『Doris To Darlene, a cautionary valentine』)、デリック・バスキン(『The 25th Annual Putnum County Spelling Bee』『Memphis』)といった面々。