The Chronicle of Broadway and me #863(Holiday inn, The New Irving Berlin Musical)

2016年9月@ニューヨーク(その2)

 『Holiday inn, The New Irving Berlin Musical』(9月25日14:00@Studio 54)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<今回唯一のブロードウェイの新作。
 タイトルに“The New Irving Berlin Musical”と付いているが、もちろん真っさらの新作なわけもなく、多少改変されているものの、本国1942年公開の同名ミュージカル映画(と言っても『Irving Berlin’s Holiday Inn』と若干異なりますが)の舞台化だ。
 マーク・サンドリッチ監督、ビング・クロスビー、フレッド・アステア主演による、“あの”名曲「White Christmas」を生んだ映画。
 日本でも、戦後の1947年に『スイング・ホテル』の邦題で公開されているが、「White Christmas」は南の島で日本軍と戦っていたアメリカ軍兵士の士気を鼓舞するために使われた、という話を、ものの本で読んだ。さっさとやっつけて国でクリスマスを過ごそう、ってことか。公開当時、そんなことを知る日本人は少なかったことだろう。

 この映画の、ある種のリメイクが、やはりビング・クロスビー主演で1955年に作られた『Irving Berlin’s White Christmas』(邦題:ホワイト・クリスマス)で、こちらの舞台ミュージカル版は、すでにブロードウェイに登場。2008年11月23日から翌年1月4日までと、見事にホリデイ・シーズンに合わせて公演を行なっている。で、念を押すように1年後の2009年の11月22日から翌年1月3日にも上演。また、同年以降、毎年同時期に国内ツアーもやっている。
 そう考えると、今回の『Holiday inn, The New Irving Berlin Musical』も、タイトル通りホリデイ・シーズンを狙っての上演という可能性は高い。
 実際、やや高めの年齢の観光客を想定した無難な仕上がり。ダンス・シーンが多く、華やかで楽しいが、振付に新味が欠ける気がした。>

 中身について、ほとんど書いてない(笑)。
 ヴォードヴィルのコンビが主人公の、ある種のバックステージもの。仲間割れ状態になったコンビの片割れが、田舎に引っ込んで、カレンダーに書かれているような特別な休暇の時にショウを上演する宿(ホリデイ・イン)を開き成功する、という話。
 映画と違っているのは、時代設定を1946年にしてあること。なので、戦争後の空気が描かれてはいる。

 楽曲は、本家の映画版以外のアーヴィング・バーリン作品からも数多く持って来られているが、オリジナル・キャスト盤(こちらのタイトルは『Irving Berlin’s Holiday Inn』になっている)を改めて聴くと、映画『Easter Parade』色が濃いことに気づく。楽曲「Easter Parade」そのものは映画版『Irving Berlin’s Holiday Inn』にも収められているが(なにしろ特別な休暇ですから)、映画版『Easter Parade』におけるアステア最大の見せ場となる「Steppin’ Out With My Baby」が幕開きのナンバーで、終盤にもチラッと使われるし、アン・ミラー最大の見せ場で流れた「Shaking The Blues Away」も華やかなダンス場面に仕立てられている。
 そうした要素も含めて、オールド・ファンにはうれしい作品に仕上げてあるということだろう。

 映画版でのビング・クロスビーに当たるのがブライス・ピンカム(『Bloody Bloody Andrew Jackson』『Ghost: The Musical』『A Gentleman’s Guide To Love & Murder』)。フレッド・アステアに当たるのがコービン・ブルー(『In The Heights』『Godspell』に途中出演した後ここでスターに)。ブルーがアステアと全く違った個性のダンサーだったのは正解。
 他に、ローラ・リー・ゲイヤー(『Follies』『Doctor Zhivago』『Into The Sun』)、ミーガン・ローレンス(『The Pajama Game』『Hair』)、ミーガン・シコラ(『42nd Street』『Thoroughly Modern Millie』『Wonderful Town』Dracula, The Musical』『Curtains』『Promises, Promises』『How To Succeed In Business Without Really Trying』『Can-Can』)、リー・ウィルコフ(『She Loves Me』『Kiss Me, Kate』『The Boys From Syracuse』)ら。

 脚本ゴードン・グリーンバーグ&チャド・ホッジ。
 演出ゴードン・グリーンバーグ(『The Baker’s Wife』『Slut』『Jacques Brel Is Alive And Well And Living In Paris』)。振付デニス・ジョーンズ(『High School Musical On Stage!』『Coraline』『Smokey Joe’s Cafe』@N.J.『Damn Yankees』@N.J.『Honeymoon In Vegas』@N.J.『Piece Of My Heart: The Bert Berns Story』『Paint Your Wagon』)。