The Chronicle of Broadway and me #433(The Pajama Game)

2006年2月@ニューヨーク(その3)

 『The Pajama Game』(2月19日19:30@American Airline Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<ラウンダバウト恒例の期間限定リヴァイヴァル公演(初演1954年)。
 このところ続いた挑戦的演出は影を潜め、徹底した娯楽作になっている。なにしろ、主演のハリー・コニック・ジュニアが中盤のショウ場面で本業のピアノ弾き語りを披露してしまう大サーヴィス振り。
 ネタである労使問題に対する切り口が今日にあってはいかにも古いが、これだけ楽しければいいか、という気にはなる。>

 「このところ続いた挑戦的演出」というのは、デイヴィッド・ルヴォー演出でウェスト・エンドのドンマー・ウェアハウス版のリメイク『Nine』(2003年)や、デフ・ウェスト・シアターと組んだ『BIg River』(2003年)を指しているのだと思う。
 非営利組織ラウンダバウト・シアターは、(たぶん)1998年の『Cabaret』以降、時折そうした外部団体と組んで(力を借りて?)挑戦的なリヴァイヴァルを上演する。日本の新国立劇場からリンカーン・センター公演を経てブロードウェイに到った宮本亜門演出の『Pacific Overtures』(2004年)もその1つだ。残念ながら日本語上演から英語上演に切り替わってしまったが。

 そうでない時のラウンダバウトのミュージカルは、やや年配のサブスクライバー(年間会員)向けの目玉商品として丁寧に作られたエンタテインメント作品、という印象が強い(2004年のジョー・マンテロ演出『Assassins』は例外か)。
 この『The Pajama Game』も、そんな作品。

 『The Pajama Game』初演版については2002年のシティ・センター「アンコールズ!」版の感想で触れているが、今日では、映画版でも再現されている「Steam Heat」に代表されるボブ・フォッシーの振付作品という認識が一般的……かどうかはわからないが、少なくともミュージカル好きは、そう認識しているのではないだろうか(『The Pajama Game』はフォッシーのブロードウェイでの初振付作品で、起用されたいきさつはこちらに書いた)。
 今回の演出・振付はキャスリーン・マーシャルで、トニー賞振付賞を受賞しているのだが、くだんの「Steam Heat」がどんな振付だったについては記憶も記録もない。『Fosse』での再現を観て満足して以降、そうしたピンポイントでの興味が薄くなっていたのだろう。前回(シティ・センター版)については一応「改変率50%」と書き残しているのだが。
 ちなみに、上記の感想にある、ハリー・コニック・ジュニアがピアノ弾き語りを披露した中盤のショウ場面とは、この年のトニー賞授賞式でも披露された「Hernando’s Hideaway」のこと。ここは、かなりの見どころになっている。

 出演者は、新任の工場長シド役がハリー・コニック・ジュニア、恋と労使問題で彼とぶつかるベイブ役がケリ・オハラ、時間にうるさい現場監督的なハインズ役がコメディアンとして知られるマイケル・マッキーン。この3人がトニー賞の主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞にノミネート。オハラは、この作品で完全に看板スターになった。
 「Steam Heat」を演じた3人は、ジョイス・チッティック、デイヴィッド・エッガーズ、ヴィンス・ペッシェ。3人とも、キャスリーン・マーシャル演出・振付の『Wonderful Town』に関わっていて、この後、やはりマーシャル版の『Anything Goes』(2011年)にも関わることになる。今では、それぞれが振付家としても活動しているようだ。
 あと、『Chicago』でママ・モートンをしばしば演じているロズ・ライアン(『One Mo’ TIme』)や、達者な脇役マイケル・マッコーミックらが出ていた。

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