The Chronicle of Broadway and me #601(Promises, Promises)

2010年4月@ニューヨーク(その3)

 『Promises, Promises』(4月9日20:00@Broadway Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<1960年代にユニークなヒット曲を量産したバート・バカラック(作曲)&ハル・デイヴィッド(作詞)のコンビが唯一書いたブロードウェイ・ミュージカルが『Promises, Promises』(原作はビリー・ワイルダー監督映画『The Apartment』邦題:アパートの鍵貸します)。
 初演は1968年で、3年超のロングランを記録。タイトル曲と「I’ll Never Fall in Love Again」がヒットした。
 というわけでブロードウェイには40年振りの登場。
 舞台の人気女優クリスティン・チェノウェスと映画の人気男優ショーン・ヘイズという2人を主役に据えて、舞台好きから観光客まで幅広く来てもらおうという目配り。と思いきや、意外にもブロードウェイ初登場のヘイズのコメディ演技のうまさが際立つ。
 ご承知かと思うが、この話、この(鍵を貸す)男性役の出来で成否が決まる。おかげで、新鮮味はないが、いい雰囲気の舞台に仕上がった。
 初演にはなかった「A House Is Not A Home」(1964年のヒット曲で、すでにスタンダード化)が導入され、かなり重い使われ方をしているが、脚本(ニール・サイモン)も手直しされたのだろうか。>

 このミュージカルにバカラック&デイヴィッドが関わることになったのは、脚色を担当したニール・サイモンの進言による、と『バート・バカラック自伝 ザ・ルック・オブ・ラヴ』(バート・バカラック著、ロバート・グリーンフィールド共著、奥田祐士訳)に書いてある。
 サイモンが、同作のプロデューサーとなるデイヴィッド・メリックと食事をしている時に、「(ミュージカルの)アイデアがあったとして、その場合、いっしょに仕事をしてみたい作曲家はいるかい?」と訊かれて挙げたのが、バカラック&デイヴィッドの名前だったという。同自伝には「ニールは、ハルとわたしが書いた音楽なら、ブロードウェイに新風を吹きこめるだろうと答えた」とある。そしてメリックはバカラックに会い、「劇場にとっても独自の仕事をしている人々に門戸を開いて、みずからを変化させるときなのだ」と言って説得したらしい。
 名曲「I’ll Never Fall in Love Again」は、ボストンでのトライアウト公演を観たメリックが、2幕の中盤に観客が帰り道に口ずさめるような曲が1曲欲しい、とバカラック&デイヴィッドに注文して生まれたという。名プロデューサーの能力を示す有名なエピソードの1つ。

 このリヴァイヴァル版の演出・振付はロブ・アシュフォード。これまで、『Thoroughly Modern Millie』『The Boys From Syracuse』『The Wedding Singer』『Curtains』『Cry-Baby: The Musical』の振付を手がけてきたが、演出はブロードウェイではこれが初。

 「A House Is Not A Home」の他に、新たに「I Say a Little Prayer For You」も加えられている。

 出演者はチェノウェス、ヘイズの他に、ブルックス・アシュマンスカス(『How to Succeed in Business Without Really Trying』『Little Me』『Martin Short: Fame Becomes Me』)、ピーター・ベンソン(『State Fair』『Little Me』『Wonderful Town』『The Pajama Game』)、ケイティ・フィネラン(『My Favorite Year』『Proposals』)、トニー・ゴールドウィン、ディック・ラテッサ(『The Will Rogers Follies』『Damn Yankees』『Proposals』『Hairspray』)、ショーン・マーティン・ヒングストン(『Contact』)、ケン・ランド(『Victor/Victoria』)といった面々。

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