The Chronicle of Broadway and me #803(On The Twentieth Century)

2015年3月@ニューヨーク(その3)

 『On The Twentieth Century』(3月17日20:00@American Airline Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<1978年初演作品のリヴァイヴァル。
 元は1932年初演のプレイ『Twentieth Century』(脚本/ベン・ヘクト、チャールズ・マッカーサーr、ブルース・ミルホランド)で、1934年にはハワード・ホークス監督で映画化もされている(邦題:特急二十世紀号)。なので、設定は1930年代。落ち目の舞台プロデューサーと大映画女優となった元教え子との、次作出演を巡る駆け引きの話。

 映画女優役クリスティン・チェノウェスが大活躍。野暮ったい姿で出てきて、一瞬にして華やかに生まれ変わるシーンから、彼女の独擅場。
 プロデューサー役にピーター・ギャラガー(ブロードウェイ・ミュージカル出演は1992年の『Guys And Dolls』スカイ・マスターソン役以来)、コメディ・リリーフにマーク・リン・ベイカとマイケル・マッグラスの2人を据えて、これだけでも万全の布陣だが、脇のおかしな老女役にメアリー・ルイーズ・ウィルソンとなると贅沢とすら言える。大コケした『Rocky』のアンディ・カールも、一転して体を張ったコメディ演技で気を吐いて……役者の顔ぶれだけでも楽しい舞台だ。

 サイ・コールマン(作曲)とベティ・コムデン&アドルフ・グリーン(作詞、脚本も)という、今は亡き手練れたちによる楽曲は、初演時がノスタルジー・ブームの渦中であったこともあるのだろう、懐古趣味満点で本領発揮の感が強く、今聴いても生き生きしている。
 今回の演出はスコット・エリス。新味はないが(一番鮮やかなのが前述のチェノウェス変身シーン)、手堅く軽妙な舞台を作った。振付はウォーレン・カーライル。>

 クリスティン・チェノウェス。1997年『Steel Pier』でブロードウェイ・デビューした時すでに印象が強かったが、2年後の『You’re A Good Man, Charlie Brown』で早くもスターになる(トニー賞助演女優賞受賞)。次いで『Wicked』のグリンダ/ガリンダ役で見事な存在感を示してヒットに貢献(トニーを獲ってもおかしくなかった)。その後、『The Apple Tree』『Promises, Promises』と来て、この『On The Twentieth Century』に到るわけだが、これで3作続けてリヴァイヴァル作品。近年は映像出演が多く、舞台に登場するのはワン・パーソン・ショウばかりになっている(それがブロードウェイの劇場で成り立つのがすごいが)。
 そろそろ舞台ミュージカル、それもリヴァイヴァルではない新作ミュージカルに登場してほしいと思う今日この頃ではある。

 ちなみに、この作品、2019年に宝塚歌劇雪組が『20世紀号に乗って』のタイトルで翻訳上演している。