The Chronicle of Broadway and me #804(Finding Neverland)

2015年3月@ニューヨーク(その4)

 『Finding Neverland』(3月18日19:30@Lunt-Fontanne Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<「ネバーランドを探して」とでも訳したいところだが……。2004年の同名映画(邦題:ネバーランド)の舞台ミュージカル化で、ジェイムズ・バリーが戯曲『Peter Pan; Or, The Boy Who Wouldn’t Grow Up』を書くに到る物語。映画脚本デイヴィッド・マギー。ミュージカル脚本ジェイムズ・グレアム。
 劇団メンバーも絡んでくるので、ある種のバックステージものでもあるが、一方で家庭劇の要素も強く、どちらかと言うと地味なドラマ。それを、ミュージカ版『Peter Pan』のイメージを援用しつつ、舞台でしか表現し得ない人力的手法を駆使して、ダイアン・パウルス(演出)が、時に繊細に時に大胆に、時に楽しげに時にしみじみと展開。観客の心を魅了していく。

 ピーター・パン像のヒントとなるピーターを含む4人の少年の母親、デイヴィーズ未亡人との出会いが、バリーに『Peter Pan』を書かせるのだが、その上演を前に彼女は病床に伏す。そんな彼女のために、バリーは初演を終えた役者を率いて彼女の家を訪れ、子供たちの寝室で舞台を再現してみせる。
 この作品のクライマックスは、その流れで訪れる、デイヴィーズ未亡人の死を暗示するシーン。劇が続く中、いつしか病床を離れた彼女は、ピーター・パンに導かれて開かれた窓からネバーランドへ去っていく。
 その時の美しい演出を目にするためだけにでも、この舞台は観る価値がある(7月に再見して、その思いを強くした)。

 楽曲作者のゲイリー・バーロウとエリオット・ケネディは、共にイギリス出身で、ヒット曲世界で成功している人。バーロウはポップ・グループ、テイク・ザット(Take That)のメンバーとしても知られる。ここでも、適度にポップでメロディアスな楽曲を創出して温かい舞台作りに貢献している。

 役者で特筆すべきは、舞台プロデューサー役のケルシー・グラマーと、デイヴィーズ未亡人役のローラ・ミシェル・ケリーの2人。グラマーは幻想(妄想?)世界のクック船長も演じる大車輪の活躍で舞台を支え、ケリーは当たり役『Mary Poppins』に通じる毅然とした雰囲気に、開放的な柔らかさを加えた独特の存在感でドラマを動かす。
 主演(バリー役)のマシュー・モリソンも繊細な役どころを熱演。デイヴィーズ未亡人の母親役で今や名脇役となったキャロリー・カーメロも登場する。>

 トニー賞には全く無視されたが(ノミネーションすらなかった)、翌2016年8月まで続いた。

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