The Chronicle of Broadway and me #805(An American In Paris)

2015年3月@ニューヨーク(その5)

 『An American In Paris』(3月20日20:00@Palace Theatre)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<ジーン・ケリーとレズリー・キャロン主演の同名ミュージカル映画(1951年)の舞台化(映画邦題:巴里のアメリカ人)。
 内容はほぼ映画と同様で、パリで画家になろうとするアメリカ青年とフランス娘の恋物語。ただし、今回のクレイグ・ルーカスによる脚本では、時代設定が映画より少し前の第二次大戦終了直後で、主人公の青年は兵隊としてパリにやって来ていたことになっている等、戦争の傷跡を感じさせる改変があり、気分もやや苦い(映画脚本は奇しくも今季ブロードウェイ登場の『Gigi』と同じアラン・ジェイ・ラーナー)。

 演出・振付のクリストファー・ウィールドンがロイヤル・バレエやニューヨーク・シティ・バレエで踊った人なので、表現としては映画版以上に“モダン・バレエ・ミュージカル”の感が強い。そもそも映画版のモダン・バレエ的シーンからしてジーン・ケリーの芸術志向が出過ぎた感があるのだが、こちらは、それを全面展開。
 もちろん、そういう舞台があってもいいし、その方向の作品としては充実しているが、やはりイギリスからやって来たマシュー・ボーンの『Swan Lake』がそうであったように、どこか“気取り”を感じて心から楽しめないところがある。

 その流れでか、楽曲はガーシュウィン兄弟(作曲ジョージ・ガーシュウィン、作詞アイラ・ガーシュウィン)の名曲揃いだが、編曲が全体にクラシック寄りで、いささか品が良すぎ。楽曲の内包するアメリカ音楽の豊かさを生かしきれていない気がした。

 ちなみに、ヒロイン役のリアン・コープはロイヤル・バレエの人で、レズリー・キャロンのイメージを見事に再現している。それがいいのか悪いのかはわからないが。>

 主演のロバート・フェアチャイルドもバレエ畑の人。ニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパル・ダンサーだった。
 他に、ヴィアン・コックス(『Company』『Caroline, Or Change』『La Cage Aux Folles』)、ジル・ペイス(『The Woman In White』『Curtains』『Tokio Confidential』)、ブランドン・ウラノウィッツ(『Baby It’s You!』)、マックス・フォン・エッセン(『Jesus Christ Superstar』『Dance Of The Vampires』『The Baker’s Wife』『The History Of War』『Death Takes A Holiday』『Evita』)。

 編曲のクリストファー・オースティンはイギリスのクラシック畑の人。「楽曲の内包するアメリカ音楽の豊かさを生かしきれていない」理由は、そのあたりか。