The Chronicle of Broadway and me #105(Company)

1995年10月@ニューヨーク(その4)

 『Company』(10月14日14:00@Criterion Center Stage Right)は、1970年から1980年にかけてブロードウェイ・ミュージカルに大きな足跡を残した作曲・作詞家スティーヴン・ソンドハイムと演出家のハロルド・プリンスのコンビによる6本のミュージカルの最初の作品。その6本とは、1970年『Company』、1971年『Follies』、1972年『A Little Night Music』、1975年『Pacific Overtures』、1979年『Sweeney Todd』、1981年『Merrily We Roll Along』
 オリジナルはもちろん、リヴァイヴァルでも、これらの作品に生でお目にかかったことは1度もなかった。ただし、ヴィデオで、『Sweeney Todd』は初演の舞台を、『Follies』はリンカーン・センターでのコンサート版を、そして『Company』はオリジナル・キャスト・アルバムの収録ドキュメント を、観たことがあった。
 そして、この『Company』リヴァイヴァル版(12月3日までの限定)は、<そのヴィデオから想像していたものより、はるかに面白く、エネルギッシュなミュージカルだった。>と当時の感想に書いている。以下、その続き。

<主人公は35歳の独身男性ボビー。舞台は、誕生日のサプライズ・パーティを開くために、彼の部屋に友人たちが集まって、彼の帰りを待っているところから始まる。友人たちとは5組のカップル。その他に、ボビーのつきあっているガール・フレンドが3人登場する。
 その5組のカップルと3人のガール・フレンドを観察しながら、ボビーが結婚について考える、というのが、ストーリーらしいストーリーのないこのミュージカルの骨子だ。
 表面は幸せそうな5組のカップルはいずれもトラブルを抱えている。そして、3人のガール・フレンドはタイプは違うが、3人のいずれもにボビーは違和感を抱いている。そうやって結婚に対する失望感を深めていくボビー。が、それでもやはり人生のパートナーは欲しい、と思うところで舞台は終わる。
 なにより楽曲が魅力的。複数のキャストによる重唱の部分など、かなり複雑な構成やメロディを持っていたりするが、それでも全体にポップな香りがあって印象が鮮やか。苦い内容のものも多いが、ユーモラスな味を忘れず、温かい。
 それに、ダンス。「Side by Side by Side/What Would We Do Without You」やフィナーレでの全員によるレヴュー的ダンス、初演ではマイケル・ベネット振付でドナ・マケクニーが踊った という「Tick Tock」(今回はシャーロット・ダンボアーズが熱情に身を焦がすように踊った)など、予想していなかっただけに余計に心に残った。振付は『Victor/Victoria』と同じロブ・マーシャル。今期は1勝1敗というところか。
 やはりこのランダバウト劇場のプロダクションによるリヴァイヴァル『She Loves Me』同様、出演者は粒ぞろい。中でも、「Another Hundred People」を歌ったラシャンズ、「Getting Married Today」で神経症的な早口の歌を悲惨かつチャーミングに歌ったヴィーヌ・コックスが特に光った。『Crazy For You』のオリジナル・キャストとして怪人ランクを4年にわたって演じ続けたジョン・ヒルナーが違った役柄で活躍していたのもうれしかった。
 『She Loves Me』の主役を好演したボイド・ゲインズがここでも主役ボビーを演じることになっているが、喉にポリープができたとかで、観た日を含め多くの舞台でジェイムズ・クロウが代役を務めていた。それはそれで全く問題なかったのだが、やはりゲインズの体調の問題か、いったん限定公演の幕を閉じた後、別の劇場に移ってロングランに入る予定はキャンセルされたらしい。残念。>

 演出はスコット・エリス。
 なぜかここには書いていないが、ジェイン・クラコウスキーがガール・フレンドの1人として登場。セクシャルなダンスを披露したのを覚えている。キラー・テューン「The Ladies Who Lunch」を歌うのはデブラ・モンク。
 ソンドハイム作品との、『Into The Woods』に次ぐ幸せな出会い。

The Chronicle of Broadway and me #105(Company)” への21件のフィードバック

コメントを残す