The Chronicle of Broadway and me #357(The Thing About Men)

2004年1月@ニューヨーク(その6)

 『The Thing About Men』(1月10日15:00@Promenade Theatre)については、この回の渡米概観に、「『I Love You, You Are Perfect, Now Change』のスタッフ・チームによる新作。だが、前作のようなスケッチ集ではなく、一貫したストーリーのあるミュージカル・コメディ。ブロードウェイ、オフ・ブロードウェイの主演級役者5人を集めて、手堅く仕上げてある。」と書いている。
 今回、改めてオリジナル・キャスト・レコーディングを聴き直して思ったのは、なんだか『Company』(スティーヴン・ソンドハイム)の1部分を抜き出したようなミュージカルだな、ということ。表面上うまくいっている夫婦の倦怠感、とか、そこに若い男が絡んで内実が見えてくる、といった印象が。

 仕事熱心な勤め人の夫が、結婚15年目に愛する妻の浮気に気づき、家を出る。知り合って意気投合した若い男とアパートメントをシェアして住み始める。その若い男が妻の浮気相手であることがわかり、自分の正体を隠して反撃に転じる。無職の自由人である若い男を、定職に就くマトモ(で退屈)な人間に仕立てて、妻の興味を失わせようとするのだ。

 というのが大筋。原作は1985年の西ドイツ映画Men…(原題:Männer…)で、ほぼ同じ内容のようだ。
 先に『Company』との類似について書いたが、こうして改めて筋を追ってみると、まるで似てないな(笑)。事実は小説より奇なりというからには、こうしたことが起こらないとも限らないが、ま、あまりリアルな話ではない。
 前作『I Love You, You Are Perfect, Now Change』もそうだったが、ジミー・ロバーツ(作曲)×ジョー・ディピエトロ(作詞・脚本)コンビの作品は、ウェルメイドなミュージカルを目指して、小ぢんまりした世界観に終始してしまうところがあるようだ。登場人物たちの(ことにマニッシュな男性の)心の機微の描かれ方は面白かったりするのだが。

 前作でピアノとヴァイオリンだけだったバンドが、今作ではピアノ(キーボード)+ヴァイオリン+チェロ/パーカッション+木管へとスケールアップしたのは、前作がヒットしたおかげか。
 楽曲はヴァラエティに富んでいて楽しめる。

 役者は5人。
 夫役が半年前にシティ・センターの『No Strings』に出ていたマーク・クディッシュ。
 妻役がリア・ホッキング(マイケル・ジョン・ラキウザ版『The Wild Party』)の代役でカーター・カルヴァート(『It Ain’t Nothin’ But The BLues』)。
 若い男がロン・ボーマー(『FIddler On The Roof』)。
 複数の役をこなす男女が1人ずついて、その男性が、後に『Jersey Boys』のボブ・ゴーディオをオリジナル・キャストで演じることになるダニエル・ライカード、女性が『I Love You, You Are Perfect, Now Change』のオリジナル・キャストで、後にブロードウェイで多くの役を演じるジェニファー・シマード。

 演出マーク・クレメンツ、振付ロブ・アシュフォード(『Thoroughly Modern Millie』)。

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