★2014年7月@ニューヨーク(その5)
NYMF(ニューヨーク・ミュージカル・シアター・フェスティヴァル)参加作品13本を3分割して、その1。
『Academia Nuts』(7月9日20:00@Alice Griffin Jewel Box Theatre/Pershing Square Signature Center)は、後に『Quiz Bowl The Musical』と改題されて発展上演されていることからもわかるように、「Quiz Bowl」と名づけられた、学生によるチーム対抗のクイズ・ゲーム(日本で言うところの「高校生クイズ」的な、と言うか、「高校生クイズ」のネタ元)を舞台とするミュージカル。
発想としては『The 25th Annual Putnam County Spelling Bee』と同じ。ゲームの中で参加者たちの個性と悩みがユーモラスに描かれていく。
作曲ジュリアン・ブラックモア、作詞・脚本ベッカ・アンダーソン&ダン・マーシャル。
演出トーマス・カルーソ(『Bingo』『Wood』『Emojiland』)。振付ライアン・キャスプルザック(『Volleygirls』)。
ステファニー・ダブルーツォ(『Avenue Q』『I Love You Because』)、ジェニファー・シマード(『The Thing About Men』『Forbidden Broadway: Special Victims Unit』『Dr. Sex』『The 25th Annual Putnam County Spelling Bee』『Sister Act』)、後に『Soft Power』でヒラリー・クリントンを演じる役者を演じる(笑)アリス・アラン・ルイスらが出演していた。
『The Mapmaker’s Opera』(7月10日13:00@PTC Performance Space)は、ベイア・ゴンザレスの同名小説を原作にしている。
1909年、苦難を強いられる民衆の間で政府に対する反発が高まっているメキシコ。絶滅の危機に瀕している珍鳥のゆくえを追うスペインの青年が、同地を訪れ、現地の娘と恋に落ちる。やがて革命に発展する暴動が起こる中、民衆の標的となる資本家の大邸宅に、探している鳥が囚われていることがわかって、青年は救出を図る。計画は成功するのか。そして、若い2人の運命は?
鳥への情熱に共感できるだどうかは別にして、メキシコ革命の背景が描かれているのが面白かった。
作曲ケヴィン・パーセル、作詞・脚本ヴィクター・カザン。マリアッチを基調とする音楽が、ロマンティックな雰囲気を醸成する。
演出ドナルド・ブレナー(『The Most Ridiculous Thing You Ever Hold』)。振付スタス・クミエク。
『Searching For Romeo』(7月10日17:00@@PTC Performance Space)は、現実世界で失恋した高校生女子ロズが、なぜか時空虚実を超えてシェイクスピアの『Romeo And Juliet』の世界に転移してしまう話。
その世界で、ジュリエットと出会う前のロメオが憧れていたロザライン(ロザライン)に憑依(?)したロズは、ジュリエットに求婚していてロメオの出現で望みを絶たれるパリスと巡り合うことになる。この主役カップルに捨てられた者同士の行く末は、はたしてどうなるのか? というのが話の眼目。なんだけど、実のところ、どうなったかは覚えていない(笑)。
作曲・作詞・脚本ブライアン・サットン。ブライアンの綴りはBrianで、ブルーグラス系のギタリストとして知られるBryan Suttonとは別人。この作品での楽曲の基調は、1960年代後半から1970年代初頭にかけてのポップ風味のロック。
演出ローラ・ジョセファー。
『Manuel Versus The Statue Of Liberty』(7月10日20:00@Studio Theatre/Theatre Row)はリーディング上演。
内容は、不法移民の大学生が奨学金を得るために自由の女神とボクシングの試合をすることになる、というファース。コミカルに描いているが、『In The Heights』あたりともダブるシリアスな題材。リーディングなだけに、理解が及ばないところが多かったと思うが、面白かった記憶がある。
主人公がドミニカ出身という設定になっていることもあり、楽曲は地中海系ラテン風味。
作曲ハワード・ポスト、作詞・脚本ノエミ・デ・ラ・プエンテ。
演出ホセ・ザヤス.
『Cloned!』(7月11日13:00@Alice Griffin Jewel Box Theatre/Pershing Square Signature Center)はSFコメディ・ミュージカル。
1993年春のニューヨーク・シティ。とある科学者が瞬間移動装置を開発していてクローン人間を生み出してしまう。そのために巻き起こる大混乱。前年のNYMFにリーディング上演で参加して好評だった作品の発展形らしい。
よく似た役者2人(元の人間とクローン人間)のシンクロした動きや、パペットの鳥のユーモラスな使い方など、アイディアも豊富で楽しい。
作曲アダム・スピーゲル、作詞ダン・ウォルポウによる楽曲は、ヴォードヴィル風味を残した往年のミュージカル楽曲の伝統に則った、時にオマージュ(パロディ?)を感じさせるもの。
脚本ジェイシー・パワーズ&ダン・ウォルポウ。追加挿話アダム・スピーゲル。
演出トム・ヴォイトゥニック。振付は上記『Academia Nuts』と同じくライアン・キャスプルザック。
“The Chronicle of Broadway and me #785(Academia Nuts/The Mapmaker’s Opera/Searching For Romeo/Manuel Versus The Statue Of Liberty/Cloned!)” への1件のフィードバック