The Chronicle of Broadway and me #393(The 25th Annual Putnam County Spelling Bee)

2005年2月@ニューヨーク(その6)

 『The 25th Annual Putnam County Spelling Bee』(2月5日20:00@Second Stage)は、直訳すると「第25回パットナム郡スペリング競技会」。略称「Spelling Bee」は、そのまま日本語翻訳版の上演タイトルにもなっていたようだ。
 こちらにも書いたように、2か月後にはオンに移る。

 観劇当時の感想は次の通り(<>内)。

『Falsettos』で知られるウィリアム・フィン(作曲・作詞)の新作。
 それぞれ心に問題を抱えた少年少女たちが、バカバカしくも真剣にスペリング能力を競い、なにがしかの成長を遂げていく。笑わせつつ、融通無碍の構成で観客に鋭く迫る。>

 スペリング競技会のことは、その昔、ピーナッツ・シリーズの劇場版長編映画『A Boy Named Charlie Brown』(邦題:スヌーピーとチャーリー)で知った。問われた英単語の正しいスペルを答える競技。
 原作はレベッカ・フェルドマンの『C-R-E-P-U-S-C-U-L-E』と言うストレート・プレイ。人種や生活環境の違う数人の主要キャラクターの描かれ方が素晴らしい。様々な意味でのマイノリティに寄り添いつつ世界を描こうとするウィリアム・フィンがミュージカル化に乗り気になったのが、よくわかる。

 特に印象に残るキャラクターは、足で床にスペルを書いて正解を出す「魔法の足」方式(上記感想で「バカバカしくも」と言っているのは、こうした誇張された表現のこと)の前回準優勝者ウィリアム・バーフェイと、辞書だけが友達の孤独な少女オリーヴ・オストロヴスキー。ウィリアムはオリーヴに密かな恋心を抱くようになるのだが……。
 前者を演じたダン・フォグラーはブロードウェイ版でトニー賞助演男優賞を受賞するが、ブロードウェイ出演は2021年8月現在これ1本きり。主に映画/TVで活躍する人のようだ。
 後者がセリア・キーナン=ボルジャー。このままオンでの公演にも出演してブロードウェイ・デビューを飾り、トニー賞助演女優賞にノミネートされてスターになる。2年前に同じセカンド・ステージで上演された『Little Fish』でもやはり少女を演じていたが、その時すでに25歳。『To Kill A Mockingbird』の少女を演じた時は40歳。かと言って少女役専門というわけでもない。どんな役を演じても必ず強い印象を残す、個性的な名優(と言っていいと思う)。
 ロゲイン・シュワルツァンドグルベニアという、ひと際強烈な名前のキャラクターを演じたサラ・サルツバーグも記憶に残るが、この人は本来スタンダップ・コミックや即興劇が専門らしく、ロゲインというキャラクター自体が彼女の持ち芸の1つだったとか。
 出演者は他に、後に『Ain’t Too Proud』でトニー賞候補になるデリック・バスキン、『It Shoulda Been You』『Escape To Margaritaville』等に出ることになるリサ・ハワード、『Street Corner Symphony』『Flower Drum Song』に出ていたホセ・ラナ、等。

 ちなみに、「融通無碍の構成」というのは、当日の観客(2人だった気がするが1人かも)を競技者として舞台に上げて答えさせることを指している。で、彼らに出される問題は聴いたこともないような単語で、それが大受け。結果、早々に落とされるのだが、中には正解する猛者もいて、それもまた大受け、という仕掛け。
 こういうのって翻訳上演ではどうやったんだろう。てか、そもそも日本語上演でスペリング競技の面白さが伝わるのか?

 脚本レイチェル・シェインキン。演出は『Falsettos』でもウィリアム・フィンと組んだジェイムズ・ラパイン。

 1月11日プレヴュー開始、2月7日正式オープン、3月20日にクローズした後、4月15日ブロードウェイでプレヴュー開始。5月2日に正式オープンして2008年の1月20日までのロングランになる。

 [追記]
 プレイビルには曲目表が載っていなかった。理由は、曲目表によって誰が勝ち残るかがわかってしまうから。

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