The Chronicle of Broadway and me #730(Here Lies Love/Kinky Boots[2])

2013年4月@ニューヨーク(その3)

 『Here Lies Love』(4月26日20:00@LuEsther Hall/Public Theater)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

<トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンが原案・作曲(ファットボーイ・スリムと共同)・作詞を手がけたミュージカルで、フィリピン大統領夫人だったイメルダ・マルコスの半生を題材にしている。
 ちなみに、楽曲はブックレット付きCDとして2010年に発表されていて、日本盤も出ている。音楽性をひと言で言えば、ダンサブルな“クラブ・ミュージック”。その楽曲群を作った時点で、こうした演劇化が考えられていたようで、その時の構想通り、クラブ形式の劇場での上演となった。

 すなわち、座席のない長方形のフロアに客を入れ、両端に一段高く設営された舞台と、それをつなぐ複数の可動式の台の上で演技を行なう。そんなわけで、動く舞台に合わせて客は流動的にフロアを移動していく。これを、歴史に翻弄される民衆の暗喩、と考えるのは穿ちすぎか。
 その民衆を翻弄することになるイメルダもまた、激しく歴史に翻弄される。その翻弄の大元がアメリカだった、ということが観ている内に浮かび上がる。そうした認識がバーンの創作動機かも。

 楽曲の素晴らしさとアジア系俳優たちの熱演で、あっという間の90分。クライマックスは亡命していたアキノが帰国した瞬間の飛行場での暗殺。そう言えばそうだった、と戦慄。
 歴史は放っておくと記憶から消えていく。その意味でも、意義深い公演だった。>

 演出アレックス・ティンバーズ(『Bloody Bloody Andrew Jackson』『The Pee-wee Herman Show』)。振付のアニー=B・パーソンはミュージシャンとの仕事も多く、2015年にニューヨーク・シアター・ワークショップで短期上演された(速攻ソールドアウト)デイヴィッド・ボウイのミュージカル『Lazarus』や、ブロードウェイで話題を呼んだパフォーマンス『David Byrne’s American Utopia』も手がけることになる。

 イメルダ役ルーシー・アン・マイルズは後に『The King And I』に出演。マルコス役ホセ・ラナ(『The King And I』『Street Corner Symphony』『Flower Drum Song』『The 25th Annual Putnam County Spelling Bee』『Wonderland』)。アキノ役コンラッド・リカモラ(『Soft Power』)。
 

 『Kinky Boots』(4月25日19:00@Al Hirschfeld Theatre 302 W. 45th St.)について旧サイトに書いた観劇当時の感想(<>内)。

前月の感動を再度味わうために再見。さすがに2か月連続で来ると、こういう余裕もある。
 で、もちろん、よかった。その後トニーでミュージカル作品賞を獲ったのは、ご承知の通り。>