The Chronicle of Broadway and me #326(Little Fish)

2003年3月@ニューヨーク(その3)

 『Little Fish』(3月8日14:00@Tony Kiser Theatre/Second Stage Theatre)については、旧サイトの概観にこう書いている。

<マイケル・ジョン・ラキウザ(作曲・作詞・脚本)の新作で、演出・振付がグラシエラ・ダニエル。(中略)期待したが、楽曲・脚本共に中途半端。グラシエラ・ダニエルも、題材がニューヨークに出てきた若い女性のストレスの話では、手腕の奮いようがなかったか。>

 が、少なくとも楽曲は悪くない、と今回、このブログを書くにあたり、キャスト・アルバムを聴き直してみて思った。
 もっとも、このキャスト・アルバム、観たオフ・ブロードウェイ版ではなく、2007年10月にロスアンジェルスで上演されたキールステン・サンダーソン演出版で、主演はアリス・リプリー。オフ版のプレイビルに載っていない楽曲がキャスト・アルバムの方に4曲あり、逆にキャスト・アルバムにない楽曲がプレイビルに1曲ある。いずれも作品後半の楽曲。なんらかの手が加えられたのだろう。
 いずれにしても、観劇当時は、短編小説作家である若い女性を主人公とする現代ニューヨークの繊細なドラマがよく理解できずに、物足りなく感じたのだと思われる。

 元になっているのは、デボラ・アイゼンバーグという作家の2つの短編小説だとか(アメリカでは高い評価を得ている作家だが、日本での翻訳本はほとんどないようだ)。
 喫煙を止めたせいで研ぎ澄まされる神経を鎮めるために水泳を始める主人公(だから、リトル・フィッシュか)。そこから過去と現在を行き来し始める彼女の意識。
 当時のニューヨーク・タイムズ(ベン・ブラントリー)の評を読むと、ラキウザに対するソンドハイムの影響を語りながら、ソンドハイム作品『Company』との類似点を挙げている。つまりは、この作品も、はっきりした筋のない“コンセプト・ミュージカル”だということ。わかりにくいはずだ、と言い訳にしてみる(笑)。
 もっとも、その評の中でブラントリーも、しだいに単調になる旨を指摘しているから、必ずしもうまくいかなかった部分はあったのだろう。それが、改訂版らしい4年後のロスアンジェルス公演で解消されたのかどうか。確かめてみたいが、とりあえずは、その術がないは残念。

 オフ・ブロードウェイ版の主演は、ジェニファー・ローラ・トンプソン。『Footloose』『Urinetown』のオリジナル・キャストで、翌年秋にクリスティン・チェノウェスの後を受けて『Wicked』にグリンダとして出た後、『Lend Me A Tenor』(リヴァイヴァル)『Nice Work If You Can Get It』『Dear Evan Hansen』にオリジナル・キャストとして出演している。

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